私は膝の上で両手を強く握りしめた。 爪が手のひらに食い込む痛みが、私の意識を現実へと繋ぎ止める。 透は再びナイフを手に取り、黙って肉を切り分け始めた。 けれど、彼の指先の関節は白く鬱血しており、肉を切るというよりは、何か見えない敵を必死に押さえつけているような動きだった。 彼は知っているのだ。 この席の主たちが、美津子の言うようにただ「心を病んで」消えたのではないことを。 それから、自分が彼女たちを守れなかったという巨大な傷を、毎日この食卓で見せつけられながら、母の支配下で生かされていることを。 温室で見せたあの痛切な懺悔の顔が、再び私の脳裏に蘇る。 食事は、その後も息苦しい沈黙の中で続いた。 美津子は時折、私に対して「お魚のお味はどうかしら」などと穏やかに問いかけてきたが、私は「とても美味しいです」という定型文を返すことしかできなかった。 味がしないのではない。飲み込むことすら、命を削るような作業だった。 やがて、長い長い晩餐が終わりを告げた。 「ごちそうさま。凛花さん、今夜はゆっくりお休みなさいね」 美津子が優雅に立ち上がり、使用人を引き連れてダイニングを去っていく。 透もまた、私に一言も声をかけることなく、背を向けて扉の方へと歩き出した。 「透さん」 私は彼の背中に向かって小さく声をかけた。 透の足が止まる。だが、彼は振り返らない。 「……何だ」 「ごちそうさまでした」 それだけを告げる。 何かを問い詰めるべきではない。今ここで彼に過去を尋ねても、彼はさらに分厚い氷の壁を築くだけだ。 透は何も言わず、ダイニングルームを出て行った。 最後に残された私に、黒瀬が近づいてくる。 「凛花お嬢様。お部屋までご案内いたします」 「ええ。ありがとう」 私は椅子から立ち上がろうとして、ふと、隣の「空席」へと視線を落とした。 シャンデリアの光を反射する、手つかずの銀食器とクリスタルグラス。 その椅子の足元。 深紅のペルシャ絨毯の上に、何か白い小さなものが落ちているのが見えた。 しゃがみ込み、それに手を伸ばす。 黒瀬が微かに身を乗り出したが、私の方が早かった。 指先で摘み上げたそれを見た瞬間、私の全身の血液が、急激に温度を失って逆流するのを感じた。 一枚の、白
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