柚希の心臓が、どくんと跳ねた。頬が自分の意思とは関係なく熱くなり、ある夜の光景が、勝手に頭の中に押し寄せてきた。あの混乱した、それでいて濃密だった一夜のことを、彼女は確かに……ずっと覚えていた。彼女は大きく深呼吸をし、「くるべき時がきただけ」と自分に言い聞かせた。それに、炎真のテクは悪くなかったし、損をするわけではない。炎真は瞳の奥に深い色を宿し、バスルームへと向かった。少しして、中から声がした。「バスタオルを」柚希はソファーから勢いよく飛び起きると、バスタオルを持ってバスルームへ急いだ。深く息を吸って、絶対に見ないようにと視線を落とし、片手でバスルーム内へとバスタオルを差し出す。バスルームから湯気が流れてきた。彼の湿った熱い掌が指先に触れ、電流のような衝撃が走った。思わず手を引こうとして、バサッとバスタオルを落としてしまった。「ご、ごめんなさい!」彼女は慌てて腰をかがめて拾おうとした。すると、視線がふと上を向いてしまい――そこには鍛え抜かれた彼の体がさらされており、引き締まった腹筋から滴るしずくが伝っていくのが見えた。鼓動が激しくなる。そして、鼻の奥がツンと熱くなった。「大きい……」無意識に呟いた言葉にハッとし、顔が真っ赤になる。終わった!どうして今の本音を声に出してしまったの?柚希は頭から煙が出るような思いで、逃げるように寝室を飛び出した。炎真は彼女の慌てふためく背中を見つめ、バスタオルを撫でながら、微かな笑みを浮かべた。……柚希はキッチンで水を3杯立て続けに飲んだが、なかなか高鳴る心臓は落ち着かない。もう二度と彼に合わせる顔がない。でも、本当に大きかった……スマホが鳴り、彼女の頭の中に広がった妄想を中断させた。父・上野康弘(うえの やすひろ)からの着信だ。こんな夜遅くに、何だろう?電話に出ると、すぐ康弘の声が聞こえた。「柚希、今どこにいるんだ?」柚希はどきっとした。華やかな新居を見て、少し後ろめたくなる。両親を心配させたくなくて、再婚のことはまだ話していなかった。しばらくしてから、家に帰って直接打ち明けるつもりだったのだ。「お父さん、いきなりどうしたの?」康弘が溜息をつく。「お前、何も親に話さないんだから。柊馬さんが腕を怪我したというじゃないか。
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