なぜだか分からないが、紗寧は二人の様子にどこか違和感を覚えた。だが、何がおかしいのかまでは分からない。紗寧は小さく首を振って疑念を打ち消すと、脇に寄って二人を招き入れた。「天川先生、伊礼先生、どうぞお掛けください」ほどなくして、4人は席に着いた。仲居がお茶を注ぎ足すと、音もなく部屋を出て襖を閉める。途端に、個室の中はしんと静まり返った。最初に口を開いたのは紗寧だった。「天川先生、以前お電話でご相談した件なんですが......」天川は慌てて湯呑みを置いた。「貝原さんのスキンシップ恐怖症についてですが、こちらでもひとまず見立てを......」紗寧は慌てて遮った。「天川先生、診ていただきたいのは私ではなくて......友人なんです」天川は言葉を失った。「......」診る相手は八角蒼士の方だったのか?そんなこと、恐れ多くてできるはずがない。紗寧の言う「友人」が蒼士だと最初から知っていたら、何があってもここへ来たりはしなかったのに......天川は反射的に蒼士へ目を向けた。蒼士は椅子の背にもたれたまま、手の中で湯呑みを弄んでいる。表情からは何の感情も読み取れなかった。だが、時折こちらへ向ける視線には、ひやりとするほどの冷気が漂っていた。「......」天川は何かを言いかけ、結局口を閉ざした。頭をフル回転させて状況を整理する。紗寧は、彼と蒼士の関係を知らない。ましてや半年前、蒼士がわざわざ彼を北城へ派遣し、紗寧の耳を治療させたことなど知るはずもない。紗寧からすれば、ただ天川に蒼士を診てもらいたいだけなのだ。話の筋は通っている。だが問題は......蒼士の病状なら、天川は誰よりもよく知っていた。「ひとまず......食事にしませんか?食べながらお話ししましょう」紗寧はすぐにうなずいた。「はい、そうですよね」ほどなくして、仲居が先付を運んできた。それを皮切りに、椀物、造り、焼き物と、旬の食材を使った料理が一品ずつ供されていく。どれもこの料亭自慢の品で、上品な盛りつけも目を楽しませてくれた。だが、食事の席にはどこか微妙な空気が漂っていた。蒼士だけは相変わらず何事もないような顔をしていた。料理が運ばれてくるたびに、紗寧が取りやすい位置へ器をそっと寄せたり
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