相手が祐輔となると、何を言っても響かず、下手に出ようが強硬策に出ようが通じない。それでいて、下手に怒らせることもできない。「有賀さん......」助監督が言い終える前に、紗寧は前へ進み出て、ドアを軽くノックした。「有賀さん、開けてください」練習室の中は一瞬静まり返り、次の瞬間、ギターの弦を軽く弾く音が響いた。どこか気だるく、あからさまな挑発のようだった。紗寧は顔色一つ変えず、再び数回ノックする。「三つ数えます。それでも開けないなら、鍵をこじ開けてもらいます」助監督はぎょっとして、驚きと戸惑いの入り混じった表情で紗寧を見た。若そうな娘なのに、ずいぶん強気な物言いだ。それに、あまりにも目を引く美しさをしている。株式会社スターエンターテインメントの社員には見えない。一体何者なのか判断がつかず、おそるおそる口を開いた。「あの......あなたは?」「初めまして。有賀さんのマネージャーをしております、貝原咲良です」そう言い終えた途端――カチャリ、と音を立ててドアが内側から開いた。祐輔はドア枠にもたれ、フードを目深にかぶったまま、シャープな顎のラインをのぞかせている。手にはあのギターをぶら下げていた。伏せ気味の目で紗寧を見下ろし、笑っているようでも笑っていない表情のまま、氷を噛んだような低い声で言う。「度胸あるじゃねえか。鍵までぶっ壊そうってか?」紗寧はその挑発には乗らず、一歩横へ退いて助監督に中へ入るよう手で促した。「監督、どうぞ」助監督は2秒ほど固まったあと、信じられないという顔で祐輔を見た。祐輔は不満そうな顔をしていたものの、結局追い返すことはしなかった。薄く唇を結び、淡々と助監督を一瞥すると、小さく鼻を鳴らし、そのまま練習室へ戻る。ソファへどかっと腰を下ろし、脚を組んだ。助監督はようやく助かったという表情で、慌ててアシスタントを連れて中へ入る。紗寧は最後に部屋へ入り、静かにドアを閉めて、外から様子をうかがう視線を遮った。練習室の中央では、祐輔が一人掛けソファにふんぞり返り、長い脚を無造作にローテーブルへ投げ出している。ギターは足元に置かれ、その姿は相変わらず気怠く投げやりだった。助監督は愛想笑いを浮かべながら、アシスタントに資料を差し出させる。「有
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