「抑えきれないなら、もう無理に抑えるな」真洋は低い声で言った。「声明を出せ。ワールド・エンターテインメントは性犯罪を一切容認しないという姿勢を明確にして、今回の件は松田銘個人の問題であり、会社としては捜査に全面的に協力すると発表しろ」翔は頷いた。「わかった。すぐ手配する」翔が部屋を出ていくのを見届けると、真洋は椅子にもたれ、目を閉じたまま無意識に眉間を揉んだ。ワールドの問題はまさに八方塞がりだ。株価のストップ安、投資家の資金引き揚げ、取引先からの契約解除――かかってくる電話はどれも悪い知らせばかり。午後に戻ってきてから今まで、水一杯すら口にしていなかった。その時、デスクの内線電話が鳴った。秘書からだった。真洋は受話ボタンを押す。「どうした?」「柏社長、病院からお電話です。貝原さんがお忘れ物をリハビリセンターに残されたそうで......何度お電話してもつながらず、緊急連絡先として登録されていた社長のご連絡先に電話があったそうです」真洋は眉をひそめた。「そんなことのためにわざわざ俺に電話してきたのか」急に冷たくなった口調に、秘書は驚いてしどろもどろになる。「病院の方のお話では......ここ数日ずっと貝原さんと連絡が取れなかったため、それで......」「もういい」真洋は遮るように言った。「君が病院へ行って受け取ってこい」「かしこまりました」秘書が電話を切ろうとしたその時、真洋が再び口を開く。「待て」「はい」「何を忘れたかわかるか?」「病院の方によると......指輪だそうです」真洋の指先がぴたりと止まった。「......指輪?」「詳しいことまでは聞いておりませんが......」スマホを握る手に力が入り、指の関節が白く浮き出る。指輪――あの、彼女が自分にプロポーズするために特注したという指輪なのか。「柏社長?その指輪ですが......私が取りに行きましょうか?」受話器の向こうから、秘書が遠慮がちに尋ねる。真洋は口を開いたものの、喉が何かで塞がれたように言葉が出なかった。「......いや」声はひどくかすれていた。「俺が行く」電話を切ると、彼は目を閉じたまま長いこと椅子にもたれていた。やがて勢いよく立ち上がり、机の
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