その日の夜は、珍しく悠斗の帰りが早かった。 時計を見ると、まだ七時半。 玄関のドアが開く音を聞いた瞬間、私は少しだけ驚いた。 「ただいま」 「お、おかえり」 「なんだよ、その反応」 悠斗が笑う。 「いや、今日は遅いと思ってたから」 「あー。予定してた打ち合わせ飛んだ」 そう言いながらジャケットを脱ぐ。 私はそれを受け取ってハンガーに掛けた。 いつもの動作。 何年も繰り返してきた動作。 当たり前すぎて、考えたこともなかった。 けれど最近は、その“当たり前”が少し苦しい。 「ご飯できてるよ」 「マジ? 助かる」 悠斗は手を洗いに行った。 私は食卓に料理を並べる。 肉じゃが。 ほうれん草のおひたし。 味噌汁。 悠斗の好きな献立だ。 好きなものを覚えていて、自然に作ってしまう。 昔はそれが嬉しかった。 今も嬉しいはずなのに。 何かが少し違う。 ◇ ◇ ◇ ◇ 「いただきます」
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