昼休みに、私は不動産屋から届いたメールを開いた。 審査に必要な書類の確認。 勤務先。 年収。 緊急連絡先。 保証会社の申込フォーム。 項目をひとつずつ埋めていくたびに、胸の奥が少し落ち着かなくなった。 新しい部屋。 新しい契約。 新しい住所。 そこに、自分の名前だけを書く。 今まで、何か大きな手続きをする時は、いつも悠斗のことも考えていた。 引っ越し先を決める時も。 家具を買う時も。 家電を選ぶ時も。 二人で暮らすなら。 悠斗が使いやすいなら。 悠斗の帰りが遅くても大丈夫な場所なら。 そんなふうに。 けれど、今入力している名前は私だけだった。 藤崎真琴。 ひとり分の契約。 ひとり分の生活。 画面の上で自分の名前を見つめていると、不意に不安が押し寄せた。 本当に、できるのだろうか。 一人で家賃を払って。 一人で鍵を受け取って。 一人でカーテンを選んで。 一人で夜を過ごす。 楽しみだと思った。 でも、怖くないわけではなかった。「藤崎」 顔を上げると、千尋が弁当の袋を持って立っていた。「ここ、いい?」「うん」 千尋は向かいの席に座り、私のスマホをちらりと見る。「部屋?」「うん。申し込みの書類」「進んでるね」「うん」 私はスマホを伏せた。「思ったより、ちゃんと現実になるんだね」「そりゃなるよ。申し込んだら現実が書類持ってくる」「現実、事務的だね」「だいたい事務的だよ。感情に配慮してくれない」 その言い方に、少し笑った。 千尋も笑いながら、袋から
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