神宮寺家へ戻る車の中は、静かな空気に包まれていた。 窓の外を流れる夜景を見ながら、澪は何度も胸元のお守りへ触れる。 隣では綾人が静かにハンドルを握っている。 何か言わなければと思うのに、言葉が見つからない。 やがて車が屋敷の前へ止まった。 神宮寺家の大きな門扉が開いた瞬間だった。「澪さま!」 ひまわりが勢いよく駆け寄ってきた。「よかったぁ……!」 泣きそうな顔で両手を握られ、澪は目を丸くする。「ひまわりさん……」「本当に心配したんですよ!」 周りを見ると、佐伯や芹香、桜……それから、他の使用人たちも眉を下げて澪を見ていた。「ご、ごめんなさい」 澪が深く頭を下げる。すると、佐伯が穏やかに一歩前へ出た。「澪さま」 名前を優しく呼ばれ、澪はゆっくり顔を上げる。 佐伯は、「お帰りなさいませ」 と、いつも澪を出迎えてくれるときのように微笑んだ。 責める言葉はない。 どうして行ったのかも聞かない。 ただ、帰ってきたことを迎えてくれる。 その温かさに、澪の胸がいっぱいになる。「……ただいま」 震える声で答えると、芹香も桜も嬉しそうに笑った。「お帰りなさいませ」 一斉に使用人たちの揃った声が響き渡る。「本当に安心いたしました」 佐伯のその言葉を聞いた瞬間、澪はようやく、自分がこの場所にもう一度帰ってきたのだと実感した。 ◇ 使用人たちが荷物を預かり、部屋へ戻ろうとしたときだった。「澪」 綾人に静かに呼び止められた。「……はい」 二人だけになった廊下。 澪は少し俯いた。「勝手なことをして、ごめんなさい」 綾人はしばらく黙って澪を見つめる。 静かな沈黙。 やがて、小さく口を開いた。「別に怒っていない」 短い一言。「ただ、心配した」 責めるような口調ではない。 けれど、その言葉は胸へ真っ直ぐ届いた。「……ごめんなさい」 澪の瞳に涙が滲む。 今度は、さっきよりもずっと小さな声だった。 綾人はそれ以上何も言わない。 ただ澪の頭へ、そっと手を置いた。 昔と変わらない、大きくて温かな手。そして胸元へと抱き寄せられる。 甘い花の香り。 澪は安心したように目を閉じた。 ◇ その頃、白石家では――。「ねぇ、美羽」 母は食後のお茶を飲みながら機嫌よく口を開いた。 せっか
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