「神の声が聞こえる。この場にいる私を除く者達は大罪人あると告げておられる……」「大罪人はお前だ! この人殺し!」「そうだそうだ!」 ひろしの言葉に、傍聴席がざわつく。被害者遺族は怒りに震え、傍聴人は便乗して野次を飛ばした。係官達が彼らをなだめようとする。「静粛に!」 木槌の音と裁判長の声で、法廷は静寂を取り戻す。「弁護人、被告人の精神鑑定を怠ったようですね」「いえ、被告人は精神異常者のふりをして無罪になろうとしているだけです。ここに証拠があります。被告人の許可を得て録った音声です。再生してもよろしいでしょうか?」「お願いします」 裁判長の許可がおりると、千夏はICレコーダーの再生ボタンを押した。『久しぶりだな、千夏。お前が弁護士になってたなんて思いもしなかった。それで、俺はどうすればいい? 精神錯乱したフリをすればいいのか?』 ひろしの音声に、法廷は再びどよめいた。 千夏はここで音声を止めようか迷ったが、そのまま再生させる。『いえ、あなたとは昨日もお会いしました。あなたは私を強姦しようとしましたね。証拠品もありますし、被害届も出してあります。あなたの罪状は強姦未遂と傷害と殺人です。無罪になれるとは思わないでください』「弁護人、これはどういうことですか!? あなたと被告人は、血縁関係にあるというのですか!?」 裁判長は立ち上がり、千夏を見下ろす。予想外の展開に驚いてるせいか、顔が赤い。「はい。被告人は私の父です」 千夏がそう告げた途端、何かが千夏に投げつけられた。「痛っ!」 足元には、ペットボトルが転がっている。それを見た途端、いじめられていた時の記憶が、フラッシュバックする。「父親をかばうつもりか!」「犯罪者の娘のくせに弁護士なんかやってんじゃねー!」「静粛に、静粛に!」 裁判長が木槌を叩きながら叫んでも、彼らは言うことを聞かない。持っていたものを千夏に投げつけ、罵声を浴びせる。「嫌だ、嫌だ……。私は悪くない、何もしてない……」 千夏は頭を抱え、その場にうずくまる。このままではいけないと分かっていても、恐怖心が拭えない。「係官、弁護人にものを投げつけた者はつまみ出しなさい。15分の休憩を取ります」 裁判長の指示で数人の傍聴者が連れ出される。彼らはまだ腹の虫が収まらないらしく、千夏に暴言を浴びせながら無理やり外に
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