「ふふ、怖い? 大丈夫よ。恐怖なんて忘れるくらい、気持ちよくしてから殺してあげるから。さあ、最期の治療を始めましょう」 紫織は舌なめずりをし、いつものように手錠をかけて服を脱がせていく。服をはだけさせた瞬間、勢いよくドアが開く音がした。驚いて振り向くと、千夏と弘泰がトイレから出てきて紫織を睨みつけている。「あなた達、どうして!?」「現行犯逮捕だ、この痴女!」 弘泰は驚いて無抵抗の紫織に手錠をかけると、彼女を突き飛ばして美咲の服を整える。「お前がこんなことされてるって気づいてやれなくて、ごめんな、美咲……」「ううん、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」 弘泰は美咲の涙を拭うと、ボストンバッグを開ける。中にあるおびただしい数のアダルトグッズを床に叩きつけ、紫織の胸ぐらを掴んだ。「テメェ、よくも美咲を!」「ダメだよ、弘泰!」 千夏は振り上げられた腕を、必死で掴んだ。「離せ! 殴ってやんねーと気が済まねーんだよ!」「美咲ちゃんの前だよ!」 千夏の言葉に我に返り、振り上げた腕をだらりと下げる。紫織を掴んでいた手からも力が抜け、紫織は尻もちをついてしまう。「やっと、先生の暴走を止められてよかったです」 いつの間にか病室に入ってきた茜は、涙をいっぱいに溜めた目で紫織を見下ろす。「そう、あなたが手引きしていたのね……。私の敗因は、あなたの調教をしなかったことかしら」 茜を見上げ、紫織は力なく笑った。「いいえ、犯罪を犯した時点であなたは人として負けです。あなたを信じていた人は、皆失望するでしょう。私も、あなたに失望しています。性被害者を救いたいって言葉、信じてたのに……」 茜はその場で泣き崩れ、紫織の肩を何度も叩く。「おい、ここは俺がどうにかしとくから、お前はあのイケメン助けてこいよ」 弘泰は片手で美咲を抱きしめ、もう片手でスマホを操作している。きっと警察を呼ぶのだろう。「ありがとう、行ってくる」 千夏は病室から出ると、急いで特別室へ向かう。途中、”廊下で走ってはいけません”という張り紙を見かけたが、そんなもの知ったことではない。
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