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All Chapters of Asymmetry: Chapter 151 - Chapter 153

153 Chapters

151話

「ふふ、怖い? 大丈夫よ。恐怖なんて忘れるくらい、気持ちよくしてから殺してあげるから。さあ、最期の治療を始めましょう」 紫織は舌なめずりをし、いつものように手錠をかけて服を脱がせていく。服をはだけさせた瞬間、勢いよくドアが開く音がした。驚いて振り向くと、千夏と弘泰がトイレから出てきて紫織を睨みつけている。「あなた達、どうして!?」「現行犯逮捕だ、この痴女!」 弘泰は驚いて無抵抗の紫織に手錠をかけると、彼女を突き飛ばして美咲の服を整える。「お前がこんなことされてるって気づいてやれなくて、ごめんな、美咲……」「ううん、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん」 弘泰は美咲の涙を拭うと、ボストンバッグを開ける。中にあるおびただしい数のアダルトグッズを床に叩きつけ、紫織の胸ぐらを掴んだ。「テメェ、よくも美咲を!」「ダメだよ、弘泰!」 千夏は振り上げられた腕を、必死で掴んだ。「離せ! 殴ってやんねーと気が済まねーんだよ!」「美咲ちゃんの前だよ!」 千夏の言葉に我に返り、振り上げた腕をだらりと下げる。紫織を掴んでいた手からも力が抜け、紫織は尻もちをついてしまう。「やっと、先生の暴走を止められてよかったです」 いつの間にか病室に入ってきた茜は、涙をいっぱいに溜めた目で紫織を見下ろす。「そう、あなたが手引きしていたのね……。私の敗因は、あなたの調教をしなかったことかしら」 茜を見上げ、紫織は力なく笑った。「いいえ、犯罪を犯した時点であなたは人として負けです。あなたを信じていた人は、皆失望するでしょう。私も、あなたに失望しています。性被害者を救いたいって言葉、信じてたのに……」 茜はその場で泣き崩れ、紫織の肩を何度も叩く。「おい、ここは俺がどうにかしとくから、お前はあのイケメン助けてこいよ」 弘泰は片手で美咲を抱きしめ、もう片手でスマホを操作している。きっと警察を呼ぶのだろう。「ありがとう、行ってくる」 千夏は病室から出ると、急いで特別室へ向かう。途中、”廊下で走ってはいけません”という張り紙を見かけたが、そんなもの知ったことではない。
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152話

 乱雑にドアを開けると、部屋は真っ暗だった。手探りで電気スイッチを見つけて電気をつけると、掠れたうめき声が聞こえた。「末安さん!」 ベッドに駆け寄ると、成也は眩しそうに何度も瞬きをする。成也が生きていることに安堵し、千夏は急いでベルトを外していく。「先、生……? ここは危ないって……」 成也の声はとても弱々しく、かなり衰弱してしまっているのが素人目でも分かる。 上半身のベルトを全部外すと、千夏は成也を抱き起こし、そのまま力強く抱きしめる。「末安さん、もう、終わったんです、助かったんですよ。東堂紫織は逮捕されました」「そっか、よか、った……」 千夏が涙声で言うと、成也は涙を流してそのまま気を失ってしまった。 院長である紫織が逮捕されたことにより、他の精神科医が院長になり、病院は一新した。それでもこの病院で紫織から性的暴行を受けた患者達は、ここにいると思い出してしまうからと、別の病院へ転院した。成也もそのひとりだ。 東堂紫織は不動産屋の名刺を見つけてしまい、成也が自分の元から離れようとしていることに気づき、彼を監禁したそうだ。他の被害者については、現在取調中とのこと。 数日後、千夏はコンビニでスナック菓子とコーラを買うと、成也の見舞いへ行く。病室に入ると、成也はベッドの上であぐらをかいて外を見ていた。「末安さん、調子はどうですか?」「だいぶ回復してきたよ」 千夏が袋を渡しながら聞いてみると、成也は小さく笑ってそう答え、コーラを半分近く飲んだ。「本当にありがとね、先生」「改めて言われると照れますね……」 見たことのない穏やかな笑みに、少し戸惑いながらベッドの隣に置いてある椅子に座った。「言っとくけど、このお礼は助けてくれたことに対してだけじゃないよ」「どういうことです?」 千夏が首をかしげると成也は千夏の正面に来て彼女の手を取り、頬をすり寄せた。その仕草に、千夏の胸の鼓動が早くなる。「俺と出会ってくれてありがとう。先生と出会ってなかったら、俺は東堂先生の人形として生きてただろうし、歳を取って先生が若いお気に入り見つけたら、捨てられてたと思う。そうなったら俺は、野垂れ死ぬしかなかった……。本当にありがとう」「それを言うなら私だって……。末安さんがいなかったら、父と向き合うことはできませんでした。きっと、過去に縛られながら生き続け
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153話

「私も、末安さんが好きです」 先に好きと言われていても、想いを伝えるのには勇気がいるようで、緊張で張り裂けそうになる胸をおさえながら、少しこわばった成也の目をまっすぐ見て伝える。「あぁよかった。フラれたらショックで一生退院できなかったよ」 成也は崩折れるように千夏に抱きつき、安堵の息を吐く。「大げさですよ」「そんなことないよ、これでもガラスのハートなんだから。本気で好きになった人にフラれたら、ショック死してもおかしくないね。ね、目閉じて」 熱烈な視線で言われ、千夏は頬を紅潮させながら目を閉じた。少しカサついた、温かい唇と重なる。 傷跡のせいで恋愛を諦めていた千夏は、こんなに幸せなキスができる日がくるなんて思っていなかった。有り余る幸福で、頬に雫が伝う。「泣かないでよ。ただでさえ緊張と幸せでどうにかなりそうなのに、もらい泣きしちゃうじゃん」 そう言う成也の目には、既にいつ零れてもおかしくないほどの涙が溜まっている。「仕方ないじゃないですか、私だってこんな幸せな日が来ると思ってなかったんですから」「ははっ、そうだね。ね、もう一回」 千夏が目を閉じる前に、成也は唇を重ねた。先程よりも長いキスに千夏が成也の腕を掴むと、彼は名残惜しそうに少し離し、啄むようなキスをして、今度こそ離れた。「あー、幸せ。先生の、千夏さんの助手になれて本当によかった」 名前で呼ばれ、千夏は一瞬呼吸を忘れる。そんな彼女を見て、成也は苦笑した。「恋人なんだから、名前で呼んでもいいでしょ? 仕事中は今までどおり先生って呼ぶからさ。千夏さんも、俺のこと名前で呼んで」「せ、成也さん……」 千夏は耳まで真っ赤になりながら名前を呼ぶと、恥ずかしさのあまり成也の胸に顔を埋めた。「可愛いなぁ、俺の恋人は」 成也は千夏をぎゅっと抱きしめ、額にキスを落とす。「大好きだよ、千夏さん。傷ごと愛してる」 これ以上ない愛の言葉に、千夏は幸福の涙で成也の胸を濡らした。
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