Todos os capítulos de 逃げたいニセモノ令嬢と逃したくない義弟と婚約者。: Capítulo 21 - Capítulo 30

37 Capítulos

21.奇妙な関係

sideリリーすごく奇妙な状況だ。この6年ですっかり慣れてしまったアルトワ伯爵邸内にある広すぎる食堂で、アルトワ一家全員と朝食を食べながら、私はそんなことを思っていた。「レイラ、そういえばこの間話していた研究はどうなったの?」5人で使うには大きく、やたら長いテーブルの向こう側で、奥方様がいつものようにふわりと笑い、私のことを〝レイラ〟と呼ぶ。「順調だよ。来週中には面白い結果を教えられるんじゃないかな」なので、私はリリーとしてではなく、レイラ様として奥方様に笑顔で応えた。そんな私に奥方様は、「あら、そうなの。それは楽しみねぇ」と、目を輝かせ、こちらに期待の眼差しを向けた。それから今度はそのままの流れで、私の左隣にいるセオドアのさらに左隣にいるレイラ様に視線を移した。「アイリスもまた今度一緒にレイラの学院での研究の成果を見せてもらいましょう?新しい花の色を作っているんですって」「まあ、そうなの?とっても興味深い研究ね。ぜひ、一緒に見たいわ、お母様」奥方様に〝レイラ〟ではなく、〝アイリス〟と呼ばれたのはホンモノのレイラ様だ。だが、レイラ様は特に気にする様子もなく、いつも通り微笑んでいた。全く同じ星空のように濃い青色の瞳を細めて微笑み合う2人は、本当によく似た母と娘だ。醸し出す雰囲気も、言葉の選び方も、何よりも顔までも、2人に対して同じ血を感じる瞬間がここ数日でよくあった。「レイラの学院での研究はいつも興味深いんだ。きっとアイリスも気に入るものがたくさんあるだろう」そんなよく似た美しい母と娘の会話に入ってきたのは、一番奥の席でこちらを優しげに見つめていた、これまた美しい伯爵様だった。ーーーやはりすごく奇妙な状況だ。アルトワ夫妻やレイラ様との会話に必要な場面で入りながらも、私はずっとそんなことを思っていた。ホンモノであるレイラ様が〝アイリス〟と呼ばれ、ニセモノである私が〝レイラ〟と呼ばれる。しかもそれが当たり前であるように全てが進められている。一体、何故このような奇妙な状況が出来上がってしまったのか。それは今だけ、レイラ様がホンモノのレイラ様であることを隠す為だった。私とレイラ様は6年前こそ、瓜二つだったが、今ではかなり違う見た目をしている。そんな私たちがある日突然入れ替われば、間違いなく同一人物には見られないだろう。結
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22.大切で愛おしい

「おい」 アルトワ伯爵一家の家族団欒をBGMに朝食を食べ進めていると、突然セオドアが冷たい目で私を見てきた。 やはり先ほどまで見せていたキラキラ笑顔は幻だったようだ。 「にんじん、また後回しにしてるだろ?」 「え」 セオドアにそう冷たく指摘されて、自身の皿に視線を移す。 すると様々な温野菜が並ぶ皿の端に、少しだけにんじんが集まっているような気がした。 無意識にそうしていたので、正直狙ってにんじんを後回しにしていたつもりは一切ない。 「あとで後悔するのは姉さんなんだから後回しにするなよ。今食べろ」 「…えぇ」 いつものように冷たく責められて、つい嫌な顔をしてしまう。 にんじんのことは確かに正直得意ではないが、食べない訳ではない。 得意ではない分、自分のタイミングで食べたいのだ。 「あとで食べるからセオドアは気にしないで」 はは、と誤魔化すように笑うとギロリとセオドアに睨まれた。 「最後の方まで苦手なものを残して、睨みつけたまま固まるお前を何度見たと思ってるんだよ。お前の食事が終わらないと僕も終われないし、学院にも遅刻するだろ」 何故、私は今、セオドアに責められ、怒られているのだろうか。 セオドアのあの態度は聞き分けの悪い、いつも同じ失敗をしている子どもに向けるものだ。 「…私のことなんて置いて先に部屋に帰ってもいいし、学院にも行っていいんだよ」 少々セオドアに反発したい気持ちを押さえながらも、そう言うと、セオドアから「はぁ」と盛大なため息が漏れた。 「いつも言っているだろ?貴族の姉と弟のあり方を。何度も何度も言わせるな」 「…」 セオドアに〝貴族の姉と弟のあり方〟について言われてしまうと私は何も言えなくなる。 結局どんなに貴族のことを学んでも、ほぼ平民のような生活をしていた私では、貴族の価値観や常識などいつまで経っても身につかないのだ。 どんなにおかしいと思っても、生粋の貴族であるセオドアがそうだと言うのならそうなのだろう、となってしまう。 「食べられないのなら食べさせてやる」 「え!いい!いいから!自分で食べるから!」 黙ってしまった私をじっと見た後、何を思ったのかおもむろにフォークを手に取り、私のにんじんを己のフォークで刺そうとするセオドアを、私は手をとにか
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23.結婚しよう

何をやらせても完璧で王子様のようなウィリアム様と、こちらも何をやらせても完璧で女神様のようなレイラ様。あまりにも完璧で美しい2人は常に学院…いや、国中で注目されており、完璧な未来の公爵夫妻として、広く知れ渡っていた。そして完璧な未来の公爵夫妻の仲は大変良く、一切の隙がなかった。…もちろんウィリアム様と私が意図的にそう見えるようにしているだけだが。対外的に大変仲の良い私たちはいつもある程度身分の高い、選ばれた者だけが使えるカフェテリアで共に昼食を食べるようにしている。そこにはもちろんセオドアもいるのだが、今日は用事があるようで、どうしても一緒に昼食は食べられないようだった。『用事が済んだら絶対に行くから。絶対に』と、どこか悔しそうに言っていたセオドアの姿を思い出し、首を傾げる。セオドアは一体何が悔しくてあんな顔をしていたのだろうか?ここにはいないセオドアに少しだけ思いを馳せながらも、私は目の前にある美味しそうなスープに口をつけた。口に含んだ瞬間、野菜とお肉の深い味わいが口いっぱいに広がる。上品な味わいの中にブラックペッパーも効いており、かなり好きな味だ。「…ん。美味しい」なかなか好きな味に自然と頬が緩む。そんな私の一瞬の変化を見逃さず、ウィリアム様は優しく微笑んだ。「それ好きだった?」「…え、あ、はい」あまりにも愛おしそうに私を見るウィリアム様に思わずドギマギしてしまう。完璧な婚約者を演じる為とはいえ、こんなにも甘い瞳までできてしまうとは、さすがウィリアム様だ。何だか気恥ずかしくなり、ウィリアム様からスープの入った器へと視線を落としていると、「うちのシェフにも覚えさせるね、このレシピ」と言うウィリアム様の声が聞こえてきた。ウィリアム様は誰がどう見ても完璧な婚約者だ。婚約相手であるレイラ様をよく見て、気に入ったものや好きなものをすぐ
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24. 愛しい人 sideウィリアム

sideウィリアム「それじゃあまた明日、レイラ」「はい、ウィリアム様」大きな扉の向こうでこちらに微笑む彼女に俺は名残惜しそうに笑い、小さく手を振る。彼女の周りには弟であるセオドアとホンモノのレイラがいるのだが、俺の眼中には彼女しかいない。俺に手を振られた彼女は俺に応えるように小さく手を挙げ、柔らかく微笑んでいた。そして扉はいつものように閉められた。ああ、本当はアルトワではなく、シャロンに連れて帰りたい。そう扉の向こうに消えていく彼女を見る度に思う。それでもそうできないのはまだ彼女がアルトワの人間だからだ。名残惜しい、離れ難い気持ちで扉から離れ、シャロン公爵家の馬車へと乗る。それからしばらくして馬車は動き始めた。「…」動き始めた馬車から見える見慣れてしまった風景を何となく見つめる。あのシャロン公爵邸には劣るが、なかなか立派な屋敷には俺の婚約者である彼女がいる。彼女はレイラが帰ってきたあの日、レイラの代わりであるという価値を失った日、俺に言った。ただ元に戻るのだ、と。元に戻るとはすなわち、レイラの代わりではなく、没落寸前の男爵家の何も持たない娘、リリーに戻るということなのだろう。彼女はレイラが現れたことによって、自由になったのだ。今までの彼女は、アルトワ夫妻の顔色を伺い、レイラのように振る舞い、俺に婚約破棄されないように最低限のラインを守ってきた。完璧な令嬢になり、周りの人が求める言葉を欲しい時に吐き、望まれた行動をする。まるで俺たちの人形だったリリーはもう自由の身だ。何を選んでもいい、何をしてもいい、全てが彼女の自由。そこには婚約者の項目だってある。ーーー彼女は俺以外を選ぶ自由を得たのだ。彼女が、リリーが、俺ではない誰かを選ぶだなん
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25. ニセモノの憂鬱

sideリリーレイラ様が帰ってきて、1ヶ月が経った。この1ヶ月の間にウィリアム様から私へまさかの結婚の打診があったがそれを私は未だに保留にしていた。そもそも何故、何も持たない、何者でもない、私には勿体なさすぎる、あまりにも好条件なウィリアム様からの結婚の打診を未だに保留にしているのか。それは私、リリーが今後どうなるのか、私自身がわかっていないからだった。アルトワ伯爵家にとってシャロン公爵家との婚約はとても重要で大切にしなければならないものだ。例えばレイラ様と入れ替わり終えた半年後、セオドアの意向で、アルトワから籍を抜くことが許されず、今後とも私がアルトワのリリーであることが決まったのなら、きっとウィリアム様と私の婚約、結婚をアルトワは歓迎するだろう。だが、そうではなかったとしたら。私がフローレスのリリーへと戻れたとしたら。フローレスである私がシャロンと婚約、結婚などすれば、それはアルトワにとってとても大きな損害となってしまうだろう。そもそも私が望めば、おそらく私はフローレスへと帰れるので、きっとこのパターンが有力だ。私はアルトワ伯爵夫妻に恩がある。ここまで何不自由なく、整えられた環境で育ててくれたこと、没落寸前だったフローレスを助けてくれたこと、たくさんの数えきれない彼らへの恩から、私は彼らが望まぬことはしたくなかった。アルトワ伯爵家は何度も言うが、シャロン公爵家との婚約を重要視しており、望んでいる。それをフローレスへと戻ったアルトワとは何の関係もない私がするということは、アルトワにとって極めて重要であり、大切にしてきたものを横から奪うということで。そんなことやはり気が引ける。…それでも、それでも、だ。シャロン公爵家のウィリアム様と結婚すれば、フローレス男爵家は確実に安泰で…。しかしアルトワ伯爵家の支援のおかげでフローレスはもう安定しており、努力を続ければ、安泰とはいかずとも、没落することは恐らくないわけで…。こうしてぐるぐるぐるぐると
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26. 2人のレイラ

劇場内の準備が整い、ついに入場が始まる。ウィリアム様が私たちに用意してくれた特別席は個室のようになっており、たくさんの鑑賞席が並ぶ一般席の上から、舞台を観られるようになっていた。そしてこの落ち着いた空間にはきちんと4つの席があった。「さあ、どうぞ、レイラ」ウィリアム様に手を引かれ、まずこの部屋に入ったのは私だった。部屋に入った私は何となく目に留まった左端の席まで移動し、腰を下ろす。するとそのままウィリアム様は私の右隣に腰を下ろそうとした。…したのだが。「ちょっと待ってください」それをセオドアが冷たい声で制止した。「姉さんの隣には僕が座ります。ですからウィリアム様はそこには座らないでください」こちらにゆっくりと近づいてきたセオドアが、そこから動くようにとウィリアム様を促す。だが、そんなセオドアの言うことなどもちろんすんなり聞くウィリアム様ではなかった。「レイラの隣に座るのは婚約者である俺だよ」「違います。家族である僕です」にこやかだが、どこか目の笑っていないウィリアム様と、冷たい表情でウィリアム様を睨むセオドアの間にギスギスとした空気が流れる。何と嫌な空間なのだろうか。「…じゃあホンモノの家族の隣に座ればいいんじゃないかな?」お互いに一歩も引かない空気が続く中、ウィリアム様はセオドアにそうにこやかに提案した。「もちろんそうするつもりですよ。姉さんとアイリス姉さんの間に僕が座るんです」「ふーん。でも2人ともなんて少々わがままなんじゃない?1人くらいは俺に譲るべきだよ?」「どちらも譲れません」「強情だね」何を
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27.毒と庇護

あの4人での演劇鑑賞から1週間後。今日もいつものようにアルトワ伯爵一家の皆様と私は共に夕食を食べていた。「この魚は今朝捕れたものだそうよ」机を挟んで向こう側に座る奥方様が本日のメインディッシュに視線を向ける。すると、セオドアの左隣に座るレイラ様の表情が明るくなった。「まあ、そうなの?それは楽しみだわ」魚料理が一番好きだというレイラ様が嬉しそうに、けれど上品にフォークを使って、魚料理に手をつける。それから美しい所作で魚料理を楽しんでいた。かつてセオドアに『姉さんは実は肉料理の方が好きだ。周りが勝手に姉さんが魚料理好きだと勘違いしていたから、心優しい姉さんは仕方なく、魚料理好きだということにしていた。姉さんが好きなのは肉料理』と教えられたことに疑問を持つ。もう1ヶ月以上、レイラ様のことを見ているが、どう見ても肉料理好きを隠して、魚料理好きなフリをしているようには見えないのだ。普通に魚料理好きに見える。6年前、レイラ様のことを何も知らなかった私は、とにかく一番レイラ様のことを知っていると思われるセオドアのアドバイスをよく聞き、完璧なレイラ様の代わりになろうと決めていた。そしてセオドアの助言もあり、完璧なレイラ様に近づけたのではないかと思っていたが、いざホンモノのレイラ様にお会いすると、私とレイラ様は似ても似つかないものになっていた。この1ヶ月レイラ様を見続けて思ったのだが、食の好み以外にも、選ぶものや身につけるものの好みなど、全てが若干セオドアが言うものと違う気がするのだ。セオドアのレイラ様像が少しだけ違ったのか、わざと間違いを教え続けていたのかわからないが、今はもうそんなことどうでもよかった。完璧なレイラ様の代わりに実はなれていなかったのだとしても、私がレイラ様の代わりを務めるのはあと数ヶ月ほどだ。もうどうでもいい話だろう。「アイリ
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28.ニセモノの正体は

スープに毒を盛られた日を境に使用人が私とは口を聞かなくなった。私の担当をしていた仲の良かった使用人たちは全てレイラ様の担当となり、新しく私の担当になった使用人たちは何故か私に冷たかった。だが、冷たいだけで仕事を放棄しているわけではなかった。私が使っているレイラ様の部屋の掃除ももちろんきちんとしてくれるし、私の身支度等も手伝ってくれる。しかし、その全てが必要最低限であり、仲の良かった使用人たちのように私への気遣いからくるその先のことは何一つなかった。何故、こんなにも急に冷たくなってしまったのか。やはり6年前のように嫌がらせが始まってしまったのか。そんなことを思いながらも、アルトワ伯爵邸内の階段を1人で登っていると、それは突然聞こえてきた。「ホンモノのレイラ様はあのお方なのに!どうしてニセモノがレイラ様として生きているの!?」廊下から聞こえてきた若そうなメイドの悔しそうな声に、思わず私はその場で足を止める。ニセモノって多分私のことだよね?どうしても話の内容が気になり、私はバレないようにそっとその声のする方へと歩みを進めた。そして廊下で何やら不満げに話をしているメイドたちの姿を見つけた。「ホンモノのあのお方のことを思うと胸が痛いわよねぇ。本来なら学院に通っていたのもあのお方なのよ?それなのに1日中ここに閉じ込められて、ニセモノが学院に通っているんだもの」「図々しいにもほどがあるわ。さっさとあのお方の場所を返すべきよ」「それなのにあのお方は常に笑顔でいらっしゃるからこっちももう苦しくて…」何故下っ端であるメイドたちがホンモノのレイラ様の存在を知っているのだろうか。彼女たちの話に聞き耳を立て、私はそんなことを思った。今ここにホンモノのレイラ様が帰ってきているということは、要らぬ混乱を招く為、伏せられているはずだ。あの日、ホンモノのレイラ様を見た使用
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29.変わらぬ2人

そして予想通り、あの日を境に私の学院での受難の日々が始まった。 まずあんなにも尊敬され、憧れの的だった私は学院中の生徒から冷たい視線を向けられる嫌悪の対象となった。 そこにいないもののように扱われたり、陰口を囁かれることは日常茶飯事で。 さらにそれが加速し、私に面と向かって暴言を吐いたり、私の教科書やノートなどに手を出し、ボロボロにしたり、隠したりするなど、直接私に害をなす生徒まで現れた。 『あれはレイラ様のニセモノだ』 『あれにホンモノのレイラ様はいじめられて怯えている』 『あれのせいでホンモノのレイラ様は学院にも社交界にも戻れない』 そうあることないことを口にする生徒たちの声を何度聞いてきたことか。 噂の出所はもちろんあのイザベラ様なのだろう。 しかし、日に日に風当たりが強くなる生徒たちとは違い、ウィリアム様とセオドアだけは何も変わらなかった。 もうすでに私がレイラ様ではないと知っており、私に嫌がらせをしても、どうにもならないとよくわかっている2人だからこそ、変わらなかったのだろう。 ただ2人は本当に以前と何も変わらなかった。 私が嫌がらせを受ける現場を見ても、何事もないように私に接してくるのだ。 助けようとする素振りさえも一切見せない。 それでも、彼らが変わらず傍にいる間は、生徒たちも遠慮しているのか、あまり積極的に私に嫌がらせをしてこようとしないので、結果として、間接的に彼らに守られている形となっていた。 皆、ウィリアム様とセオドアの前では、粗相を起こしたくないらしい。 それがほんの少し私の心を軽くさせた。 彼らさえ傍にいれば、嫌がらせを受けることもない。彼らはここでの安全地帯のようなものなのだ。 あの2人が私の安全地帯になるとは、何とも皮肉なものだが。
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30.我慢の限度

しかしただ耐え続けるといっても、限度というものがある。学院での嫌がらせが始まり3週間。アルトワ伯爵家での嫌がらせが始まり4週間。レイラ様のニセモノとして嫌がらせを受け始め、もう1ヶ月。さすがの私も我慢の限界を迎えていた。イザベラ様を始め、生徒たちの怒りも、アルトワ伯爵家の使用人たちの怒りもわかる。痛いほどわかる。だからこそ、反撃も反論もすることなく、彼らの怒りが収まるのならと、嫌がらせや嫌味も黙って受け続けたのだ。だが、それは収まるどころか私を排除しようと、激しさを増す一方だった。6年前とは違い、あまりにも四方八方敵だらけでさすがの私も疲れてしまった。きっともう耐えるだけでは、この大きな怒りは収まらないだろう。この大きな怒りを収めるには、怒りの原因である私自身が消えるしかない。レイラ様が戻ってきた当初の予定では、要らぬ混乱を招かぬよう段階を踏んで、私とレイラ様が入れ替わる予定だった。だからこそ、その予定に従い、今日まで何を言われても、何をされても、私はレイラ様であり続けた。だが、今の状況でもそうすることが果たして本当にベストなのだろうか。学院中の生徒も、アルトワの使用人たちも、全員が私がニセモノだと知っており、恐れていた事態はもうすでに起きてしまっているのだ。私がニセモノだと周知された今、私はもういらないし、消えるべき存在だろう。今日という息苦しい1日を終えた私は今の状況をアルトワ夫妻に伝える為に談話室へと向かった。夕食後には決まってあそこで仲良くくつろいでいるからだ。「お父様、お母様、今ちょっといい?」談話室の扉を開けると、そこにはやはり予想通り、仲良く同じソファに座り、くつろぐ夫妻の姿があった。なので、私はそんな夫妻の元へ迷わず歩み寄り、声をかけた。すると2人は優しく私に微笑んだ。「どうしたの?レイラ?」「何だい?」
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