私は一瞬何が起こったのか分からずにドミニク様の服を握りしめたまま、硬直していた。 ここには沢山の人々が行き来していて、私たちの他にも様々な人がいるのに――――でもドミニク様は背が高く、そのうえ手も腕も大きいので私の顔がすっぽりと隠れていた。 その為、周りの人間はあまり見えていないようでざわついてはいない感じだった。 ただヤヌシュにだけは見せつけるようにキスをされているのだけは分かる。 「んんっ…………ん…………っ」 だんだんと激しさが増してきて、声がもれてしまう。 私は必死にドミニク様の服にしがみついてキスが終わるのをただ待つしかなく、恥ずかしいやら嬉しいやらで思考がうまくまとまらない。 まるで自分のものだとマーキングされているかのような口づけ――――。 ようやくドミニク様の唇が離れた頃には足の力が抜けそうになっていて、それを察したドミニク様が私の腰を支えてくれていた。 「今もこれからもティナは私のものだよ。彼女のこの美しい唇も全部、ね」 ヤヌシュに向かってそう言いながらドミニク様の指が私の唇をなぞり、体中に熱が集まってくる。 きっと肩まで真っ赤になっていそうだと自分でも分かるくらい体が熱い。 ヤヌシュの方を見ると、ドミニク様の言葉や行動にさっきチラリと見た時以上に顔を歪めていて、ナタリア嬢の事などまったく忘れているかのようだった。 かつては真実の愛を見つけたと言っていたくらいの相手なのに……ううん、もう私には関係ないのだから気にかけるべきではないわね。 「行こうか」 「は、はい!」 ドミニク様がヤヌシュから視線を外し、私の方を見ると、その瞳はさっきまで厳しいものだったのにいつもの優しい瞳に戻っていた。 後ろからはもの凄い視線を感じ、一瞬名前を呼ばれた気がするけど、それに気付かないフリをして観劇を観るべくドミニク様と歩き始めたのだった。 ~・~・~・~・~ 私たちが観る席は普段は王族が利用する席とあって、入口には衛兵が立っていて、まさに特別席への入口といった感じだった。 この辺はもうまったく人の気配はない。 それはそうよね、王族の方が座る席なんだもの。 王族が座る場合は裏口から入ってくるのでしょうけど、私たちは今回は正面の入口から入ってここまで来た。 それもあって怪しまれないか心配だった
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