「にゃー」 ……猫? うちに猫なんていたっけ? 波瑠は細く目を開けた。昨日、深酒をしてしまったので、身体がとてもだるい。 ほわほわの白と薄茶の毛並みで金茶の目をした猫が「みゃー」と小さく鳴きながら、とてとてと畳の上を歩いていた。 仔猫? 思わぬものが目に入り、細くしか開けていなかった目を、瞬きを一度してからはっきりと開けた。すると、そこはいつも眠っている寝室ではなかった。広い土間の玄関から入ってすぐの、使っていない和室だった。その畳の上に直に寝ていたのである。 ……昨日、こんなところで寝ちゃったんだ。ベッドにも行かず着替えもせず。暖房つけっぱなしで。……スーツ、しわくちゃ。雨戸を立てるのも忘れちゃった。 部屋は朝の光で満ちていた。明るい日差しが縁側から入り、カーテンのかかっていないガラス戸を通って、畳に幸福そうな陽だまりをつくっている。 「にゃー」 猫。……かわいい。 でも、私、猫は飼っていなかったはず。 どこで連れて来ちゃったんだろう? 拾ったのかな? ぼんやりした頭で波瑠は、昨夜のことを思い出そうと考えを巡らした。 ……駄目だ。寝起き、駄目。全然思い出せない。 とりあえず波瑠は身体を起こした。 やわらかな毛玉のような仔猫は、波瑠が身体を起こすと「にゃー」と鳴いて、波瑠にすり寄って来た。 ふふ。かわいい。 「――え⁉」 猫を抱き上げようとして、波瑠はあるものが目に入り、思わず声を上げた。 あるもの―― ――誰か、いる。 波瑠が寝ていた和室に、もう一人、見知らぬ人間が寝ていた。 波瑠は一人暮らしだ。 一人暮らしには広い、平屋の一軒家で静かに暮らしている。 ……誰? 眠っているその人を、波瑠はじっと見つめた。 短い黒髪……きれいな髪。さらさらしている。 波瑠は向こうを向いている顔を見るために移動し、顔を覗き込んだ。 うわあ、きれいな寝顔! 白い肌に整った眉毛。毛穴なんて見当たらず、つるんとしている。睫毛長い! ――女の子? ううん、男の子? ――どっちだろう? 波瑠がじっと見つめていると、そのきれいな寝顔がぴくりと動き、ゆっくりと目を開けた。 すごい! 目を開けると、ますますきれい!「おはようございます。……昨日は泊めてくれてありがとうございます
Last Updated : 2026-06-03 Read more