アウルの手が、私の背へ回る。 ドレスの留め具に触れた指先が、すぐには動かなかった。薄い布越しに、彼の迷いが伝わってくる気がした。さっきまであれほど熱を帯びていたのに、その一線の前で、彼はまた私の返事を待っている。「アス」 名前を呼ばれて、私は彼の肩に置いた指へ力を込めた。「……うん」 返事になっているのか分からないほど小さな声だった。けれど、それ以上うまく言えなかった。 アウルの呼吸が、耳元でわずかに乱れた。「そんなふうに返事をされたら、本当に困る」「……困らせたいわけじゃないのに」「君のそういうところが困るんだよ」 背の紐がひとつ、静かにほどかれた。 家名や礼儀や人目のために整えていた令嬢としての形が、少しずつ解かれていくようだった。紐がほどけるたびに、指先が私の背へかすかに触れる。そのわずかな感触だけで、呼吸が浅くなった。肌に直接触れられているわけではない。それなのに、これから触れられるのだと身体の方が先に分かってしまう。 もうひとつ、紐がほどける。 肩のあたりが軽くなり、胸元を支えていた形まで緩みかけた。私は反射的に両腕で自分を隠した。隠したつもりだったのに、腕の下で押さえきれない柔らかな膨らみがかえって意識されて、頬が一気に熱くなる。 アウルの視線が、そこで一瞬だけ止まった。 いつもの余裕のある目ではなかった。琥珀色の瞳の奥で、抑えていた熱が揺れる。けれど彼はすぐに私の顔を見て、重ねた私の手にそっと触れた。退かせるのではなく、震えを包むような触れ方だった。「無理に見ない」「……でも、見たいのでしょう」 自分で言ってから、顔を伏せたくなった。 アウルの喉が、小さく動いた。「見たいよ」 正直すぎる答えだった。 私は息を止めた。すると彼は、私の指先に唇を落とす。手袋を外した素肌に触れる唇は熱く、たったそれだけで、押さえていた力が抜けかけた。「でも、怖がらせたいわけじゃない」「怖く
Read more