All Chapters of 死に戻り令嬢は冤罪を覆し、幼馴染の王子に溺愛される 〜銀の令嬢の甘く危険な事件簿〜: Chapter 61 - Chapter 62

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第二章 第61話 同じ手

 ファロー子爵家の門前で馬車が止まると、セシル様は父君の手紙を胸元へ引き寄せた。 泣いたあとの目元は赤く、手紙を押さえる指にも、まだ強く力が入っていた。それでも、伯爵家を出た時のように俯いてはいなかった。「今夜から、目立たない者を屋敷の周囲に置く」 アウルが窓の外へ目を向ける。道中、一定の距離を保って馬車についてきた男が、門脇の暗がりで小さく頭を下げた。「子爵家の暮らしは変えなくていい。ただ、しばらく一人では出歩かないで」「分かりました」 セシル様は頷いた。 父君を脅した者たちは、次は娘だと言った。恐怖を与えるためだけの言葉だったとしても、無視はできない。伯爵を階段から落とした者が、今も屋敷の内外を自由に動けるのなら、セシル様の居場所も知られていると考えるべきだった。 扉が開き、子爵家の従者が足台を置いた。 降りる前に、セシル様は私たちを振り返った。「父は、生きて、私に伝えてくれました」 手紙を押さえる指がわずかに震えた。「もう、何も知らないふりはできません。どうか、お父様を助けてください」 私は彼女の手を取った。冷えた手が、私の手を強く握り返す。「お父様を助けるために、私たちも止まりません」 すぐに伯爵家へ踏み込むことはできない。監視している者も、手紙を樫へ運んだ者も、まだ分かっていなかった。焦って動けば、伯爵をさらに危険な場所へ追い込むかもしれない。 セシル様も、それを分かっているのだろう。唇を一度引き結んでから、彼女は頷いた。 門の内側へ歩いていく背中を見送り、扉が閉まるまで、私たちはその場を離れなかった。 離宮へ戻った頃には、夜も深くなっていた。 書斎には火が残されていたが、広い室内を暖めるには足りず、窓辺には白い曇りが張りついている。エレーヌが新しい薪を足す。その手の甲には、樫のうろへ腕を差し入れた時についた細い擦り傷が残っていた。「エレーヌ、その手は大丈夫?」「この程度なら何ともありません」 いつもと変わらない返事だったが、袖口を引き下ろす動きはいつもより少し慎重だった。 外套を脱いでも、私の指先はまだ冷えたままだった。椅子へ向かおうとすると、アウルが私の手を取る。 冷え切っているのを確かめるように指を包み、そのまま暖炉に近い席へ導いた。「先に温まって」「あなたも冷えているでしょう」「俺は君ほどじゃ
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第二章 第62話 名前のない手

「事故の三日後だ」 アウルが机へ置いた紹介状の控えには、見覚えのない商会の印影まで写し取られていた。 窓から差し込む冬の光は弱く、書斎の奥までは届いていない。机の上だけが燭台に照らされ、紙に残された署名と印の輪郭がはっきり見えた。 アウルは、使用人を周旋する者の帳面と紹介状の控えを辿っていた。伯爵家へ入った新しい従者は、伯爵が階段から落ちた三日後、「先代の頃からヴェルネ家と縁があった商会」の紹介を受けて雇われていた。「怪我をした当主の家なら、人手が増えても不自然じゃない」 アウルは紹介状の名義を指先で示した。「家令の補佐を任せられる者だと書いてある。ただし、この商会は八年前に畳まれていた」 私は控えへ目を落とした。 署名は整い、印影も一見しただけでは偽物と分からない。けれど、名義に使われた商会はすでになく、署名したはずの人物へ辿り着く手がかりも残っていなかった。 当主が倒れ、屋敷中が混乱していた時期だった。人手を必要としていた伯爵家に、古い縁を名乗る紹介状が届けば、細部まで確かめる余裕はなかったのかもしれない。 怪我人を抱えた家へ、もっともらしい書類と共に人を送り込む。辿ろうとしても、使われた名義から先へは進めないようにしてある。 脅迫状や毒の絵の指示書と、よく似た手配だった。 あの男は事故の三日後に偽の紹介状で入り、伯爵の居室へ続く廊下を見張っていた。 私は紙から顔を上げた。「偶然とは考えにくいわ。監視のために送り込まれた可能性が高いと思う」「俺も同じ考えだ」 アウルは紹介状を畳まなかった。「けど、今ここで捕らえるのは早い」 伯爵家の中には、父君の手紙を樫のうろへ運んだ者がいる。その人物が今も伯爵を守ろうとしているなら、監視役を突然消すことで疑いが向くかもしれない。 従者が戻らなければ、送り込んだ側に異変を悟られるおそれもある。最初に危険にさらされるのは、伯爵だった。 調べるべきなのは、あの従者の名ではない。誰から指示を受け、どこへ報告しているのかだった。 扉が静かに叩かれた。 入ってきたエレーヌの外套から、冷たい空気が流れ込む。裾には市場近くの泥が薄くついていた。「数日、出入りを確認しました」 日ごとに服と立つ場所を変え、伯爵家へ出入りする商人や使用人に紛れて見張ったという。 あの従者は、三日から四日おきに屋敷
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