九条征哉様の指示に従い、真中芙美と共にかつて美緒お嬢様が使っていたお部屋に向かう。今、この離れは誰も使っていなくてここに執務室を構えている私だけが出入りしている状況だ。そして美緒お嬢様がお使いになられていたお部屋は、華瑛の指示で何故か、そのままに保たれていた。今となってはそれは幸運であったとしか言いようが無いが。美緒お嬢様のお部屋はシンプルそのものだった。本邸の瑛理香や華瑛の部屋とは違い、装飾品はほとんど無い。美緒お嬢様のお部屋の飾り棚の中……その片隅にひっそりとしまわれているものがある。それは一冊の仕掛け絵本だ。この仕掛け絵本は美緒お嬢様がお母様の香織様から譲り受けたもの。そしてその譲り受けたという事を華瑛も瑛理香も知らない。だからこそ、奪われずにそのまま棚の隅に置かれていたままになっていた。「これがそう?」真中芙美にそう聞かれる。私は頷く。「あぁ、そうだ」何の変哲も無い、普通の仕掛け絵本。見た目はそう見える仕掛け絵本だが、実際には違う。絵本を開く。妖精が描かれているような、ファンタジーの世界が広がる。数枚、ページをめくると、真ん中に飛び出してきた妖精が指さしている場所に……一枚のカードが仕込まれていた。それを取り出す。一見すると、その仕掛け絵本のおまけのようにも見えるが、これはれっきとした貸金庫カードだ。本来ならばここには当初の仕掛け絵本のおまけのカードが入れられていた。そのカードが美緒お嬢様によって別のカードに替えられていた事を私はこの段になって初めて知ったのだ。美織お嬢様は一体、いつ、香織様からこのカードを受け取ったんだろうか。◇◇◇「カードを受け取っていた?」九条征哉にそう聞かれて私は頷く。「えぇ、随分と幼い頃に、お母様から受け取っていたの」私は背後から私を抱き締めている九条征哉に、お母様から幼い頃に受け取っていたカードの存在を話していた。「もちろん、その頃の私はそれが何なのか、分かっていなかったけれど、すごく大事なものだって、お母様に言われて私も幼心にそれを聞いて、たぶん、その当時の一番大事にしてた絵本の中に隠したの」私がそう言うと九条征哉が笑う。「その隠し場所が、功を奏したな」そう言われてその通りだと思った。子供だからこそ、カードをその当時大事にしていた絵本の中に隠した訳だけれど。大人になってからそのカードを渡
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