すべてのスタッフが引き上げたあとの、人気のない廊下。 さっきまで大勢の人間が行き交っていた場所とは思えないほど静かだった。 窓から差し込む冬の光が、長い廊下の床を淡く照らしている。 ひかるは、ゆっくりと歩いていた。 最終話の撮影を終えたばかりだった。 玲子として泣き、笑い、怒り、そして最後には蒼一のもとを去った。 まだ胸の奥には、役を演じ切った余韻が残っている。 それだけではない。 この作品と出会ってから過ごした時間。 優と共に作り上げてきた日々。 そのすべてが、今になって一気に胸へ押し寄せていた。(終わったんだ……) そう思った瞬間、少しだけ寂しくなった。 もう玲子として優の前に立つことはない。 撮影という理由がなければ、こんなにも近くで優と同じ時間を過ごすこともなくなる。(……どうして、こんなに寂しいんだろう) その理由を考えようとした、そのときだった。「ひかる」 背後から声がした。 振り向く。 そこに立っていたのは、藤崎優だった。 ひかるは思わず微笑んだ。 その目には、まだ幸福の余韻が宿っている。 優も、ひかるの表情を見つめていた。 最終話の撮影を終えた安堵。 作品を最後までやり切った喜び。 そして――どこか寂しそうな表情。 優には、そのすべてが伝わっているような気がした。「このドラマ、多分一生語られるぞ」 優が静かに言った。「そうだったら嬉しいですね」 ひかるは笑う。 けれど心の中では、別のことを思っていた。(私も……そう願ってる) 視聴者の心に残る作品になってほしい。 玲子と蒼一の愛が、誰かの心に届いてほしい。 そしてできることなら――。(私たちが、この作品で過ごした時間も……ずっと忘れたくない) そんな気持ちが胸の奥に芽生えていた。「賞も取る」 優は迷いなく言った。 ひかるは少し目を丸くする。「断言しますね」「ああ。本物だからな」 その言葉に、ひかるの胸が大きく打った。 本物。 それは作品のことだけではないような気がした。 優が自分に向ける視線。 これまで何度も感じてきた温かさ。 厳しい言葉をかけられたこともあった。 励まされたこともあった。 そして、何度も自分を信じてくれた。(優さんは……いつも私を見てくれていた) 女優として。 一人の人間と
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