結城美緒が指定したカフェは、駅から少し離れた場所にある、落ち着いた雰囲気の店だった。昼下がりの柔らかな光が大きな窓から差し込み、店内には静かなジャズが流れている。その一角のテーブルに、相沢玲奈と黒崎俊哉は先に着いていた。約束の時間が近づくにつれ、玲奈の苛立ちは目に見えて増していく。腕時計を何度も確認し、爪先で床を小刻みに叩く。指定された時間になっても、美緒は現れない。玲奈はカッカして、アイスコーヒーをグイッと飲んだ。氷が音を立て、グラスの中でぶつかり合う。俊哉はそんな玲奈を横目で見ながら、ため息をつきそうになるのをこらえていた。感情を露わにする玲奈とは対照的に、彼はどこか冷めた空気をまとっている。そのときだった。「遅れてごめんなさい」柔らかな声とともに、美緒が現れた。息一つ乱していない。まるで遅刻など些細なことだと言わんばかりの落ち着きだった。そのまま自然な動作でテーブルの向かいに座る。玲奈がアイスコーヒーを一気に飲み干すのを見て、美緒は小さく首を傾げた。「冷たい物は、モデルさんにはよくないわよ」まるで親切な助言のように聞こえるが、その声音にはどこか余裕が滲んでいる。玲奈の顔が一瞬で真っ赤になった。「アンタ、ホントに上から目線よね!」椅子から立ち上がりそうな勢いでいきり立つ。だが美緒は、その言葉をまるで聞こえなかったかのように受け流した。視線をわずかに横へ動かし、玲奈の隣に座る俊哉へ向ける。そして静かに問いかけた。「あなたたち、ホントに付き合ってたの?」俊哉は言葉を使わず、両手を広げて見せた。それは肯定したのと同じだった。美緒は軽く頷くと、どこか申し訳なさそうな表情を作る。「あの時はごめんなさい。私が選ばれるなんて思わなかったの……」そう言ってから、玲奈を上目遣いで見上げた。「玲奈さんだって、候補に挙がってたんでしょ?でも、久遠ひかるさんが……」そこまで言って、わざとらしく言葉を切る。沈黙が落ちた。玲奈は、「ハッ?」とおかしな声を出したあと、すぐにその意味に思い至る。「まさか……私も候補に挙がってたのに、あの女が落としたってこと!?」声が店内に響き、近くの客がちらりと視線を向けた。美緒は肩をすくめ、困ったように微笑む。「だって…オーデションの時、私、負けたかもって思ってたから…」そう言いながら、じっと
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