「まって、待って、美緒ちゃん!!」 夕季が慌てて声を上げたが、その制止は一歩遅かった。 結城美緒は迷うことなくひかるの隣の椅子に腰を下ろし、身体ごと正面から向き合う。「ひかるさん、夕季ちゃんにも、今度の8話のオーディションを受けさせてあげてくださいよ」 屈託のない声。 だが、その視線は強く、逃げ場を与えない。 ひかるは一瞬、言葉を探すように、美緒と夕季の顔を交互に見た。「ええ、夕季ちゃんがやりたいなら」 そう言って、静かに頷く。 拒む理由はなかった。 夕季がどれだけ現場で必死に学び、耐えているかを、ひかるはよく知っている。 すると美緒は満足そうに立ち上がり、軽やかに夕季の元へ戻ってくる。「ひかるさんもOKだって」 そう言って、夕季の顔を覗き込むように見た。 夕季は胸の奥がきゅっと締めつけられた。 嬉しいはずなのに、どこか置いて行かれた気がしてならない。「美緒ちゃん…私、自分でひかるさんに言いたかったのに」 ひかるの方へ目を向けられず、美緒の顔だけを見て言う。 声は小さく、言い訳のようでもあった。「そんな消極的な態度じゃ、前に出られないわよ。特に、私たち、中途半端な年齢じゃない。今、頑張らなかったら、ひかるさんの年齢の時には、完全に『バイプレイヤー』じゃない」 美緒は、目の前の皿に乗ったパスタを、フォークでくるくると巻きながら言った。 淡々と、しかし迷いなく。 夕季はその言葉に俯いた。 反論はできなかった。 確かに、いつまでもひかるの付き人をしていられる時間は、自分にはないのかもしれない。自分が付き人をしている、『久遠ひかる』は、15歳でデビューしてから、スター街道を走っていた。活動休止していたとはいえ、復帰した瞬間から、話題をさらっていける、本物のスタ―だった。それなら、自分は……? 今、夢を掴まなければ、美緒の言う通り、主役を張る位置には行けない。 夕季は小さく息を吐き、軽く頷く。「美緒ちゃんありがとう。私やってみる」 そう言って立ち上がり、「ひかるさんにも話してくるね」 その背中を、美緒は無言で見送った。 その視線が一瞬、冷たく細められたことに、夕季は気づかなかった。 食事は一次会でお開きとなった。 撮影は中休みだが、結城美緒にはレッスンがある。 脚光を浴びたばかりとはいえ、まだ新人。 休
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