薬草院から届いた次の手紙は、アデル叔母のものではなかった。 封を切る前から、紙の質が少し違うと分かった。叔母の手紙は、実用一点張りの、乾いた白い紙を使うことが多い。だが今朝届いた封書は、同じように飾り気はないものの、ほんの少しだけ厚手で、文字を書く者の癖が出やすい滑らかな紙質だった。封蝋には母方の家の小さな紋章が押されているが、その筆跡は叔母のものではない。 窓辺の椅子へ座り、リリアーナは慎重に封を切った。 春の光はまだ弱い。 白く薄い日差しが、窓越しに机の端と便箋の隅を照らしている。 侯爵邸から戻って以来、伯爵家の自室に差し込む朝の光まで少し違って見えるようになった。たぶん、自分の中で切れたものがあるのだろう。 家族という言葉に寄りかかる心が、もうない。 その代わり、自分がどこへ向かうのかを考える時間は、以前よりまっすぐになった。 便箋を開く。 整った、若い筆跡だった。 几帳面で、だが堅すぎない。 官吏の文面らしい端正さの中へ、どこか人の気配が混じっている。 ――初めてお便り差し上げます。 ――アデル叔母上より、リリアーナ様がこちらへお越しになる可能性があると伺いました。 ――私はカイ・フォルネと申します。西丘薬草院の帳簿と周辺役所への届け出を任されております。 ――到着の折、必要な宿帳、移動証明、薬草院での滞在名目について、王都側でご準備いただくべき書類を整理してお送りします。 ――どうかご不安なくお越しください。こちらは王都ほど華やかではありませんが、息のしやすい土地です。 ――叔母上は、あなたが必要以上に緊張して来るのではと案じておられました。 ――ですので、せめて最初のご連絡だけでも、堅苦しくなりすぎぬよう努めたつもりです。 そこで一度、リリアーナは目を止めた。 息のしやすい土地。 たったそれだけの表現が、妙に胸へ沁みた。 王都では、呼吸をするにも姿勢がいる。 伯爵家でも、侯爵家でも、社交界でも。 だから「息のしやすい」という言葉が、慰めではなく、具体的な希望のように見えた。 続きを読む。 ――王都から西へ入る頃は、朝晩の冷えがまだ厳しいので、厚手のショールを一枚多く。 ――また、こちらの井戸水は最初、慣れぬ方には少々冷たく感じられるかもしれません。 ――もし薬草
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