桐島夫人は、玄関で佳枝に微笑んだ。「今日は、少し趣が変わりましたのね」「若い方に手伝っていただいたものですから」 佳枝は、苦しい笑みを浮かべた。「ええ。新しい風というのは、時に強いものですものね」 桐島夫人の声は穏やかだった。 だが、次の茶会の約束はしなかった。 三倉夫人は、車へ乗る前に言った。「お迎えの件は、どうぞお気になさらず。次からは、こちらで手配いたしますわ」 佳枝は凍りついた。 こちらで手配する。 それは、久世家の手配をもう信用しないという意味に近かった。 相馬夫人は菓子をほとんど残し、帰り際に「お若い方は華やかでよろしいわね」とだけ言った。返礼品が用意されていないことには、誰も触れなかった。触れないことが、かえって重かった。 最後の客が去ると、玄関は急に静かになった。 花器の中で、抜き損ねた百合の香りがまだ微かに残っている。 応接間には、食べ残された菓子、少し冷めた茶、座り直した跡のある椅子、置き場所を変えられた席札が残っていた。誰かが声を荒げたわけではない。だが、部屋全体が細く傷ついているようだった。 佳枝は、応接間の中央に立ち尽くした。 瑠璃花は、目に涙を浮かべていた。「私、頑張ったのに」 その声は小さかった。 佳枝は振り返る。「頑張ればよいというものではありません」「だって、何も分からないんです。澄乃さんがちゃんと教えてくれなかったから」 その言葉に、佳枝の中で何かが切れた。「あなたは、渡されたファイルを読まなかったのでしょう」「全部なんて無理です」「なら、妻の座など欲しがるべきではなかったのよ」 瑠璃花の顔が真っ赤になる。 そこへ、昌親が入ってきた。「母さん、言いすぎだ」 佳枝は昌親を睨んだ。「あなたにも言っているの」「俺に?」「この茶会は、久世家の信用に関わるものだったのよ。澄乃さんが、どれだけ細かく整えていたか、あなたは一度でも見たことがあった?」 昌親は言葉に詰まる。「花も、菓子も、席順も、車も、返礼も、全部あの人がしていた。私たちはそれを受け取っていただけだった」「だからって、今日のことを全部瑠璃花のせいにするな」「では、誰のせいにするの」 佳枝の声は震えていた。「妻の座を譲らせたあなた? その座の中身を知らないまま笑っていた汐見さん? それとも、澄乃さんが
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