Partager

第26話:王弟パウロ⑥

Auteur: ももちく
last update Date de publication: 2026-08-05 05:05:46

 ギルド長のゲイルが剣の柄に手を置いている。居合斬りの構えだ。こちらが少しでも不審な動きを見せれば、斬る気なのだろう。

 ゴクリ……と息を飲む。動けずにいるとリリーが一歩前に出る。慌ててリリーを止めに入るや否や、ズシャッ! と背中に熱が走った。

「いったーーーー!」

「みね打ちだ」

「警告にしてはやりすぎじゃね!? 背骨が折れるかと思ったよ!?」

「もう一度言う。みね打ちだっ」

「大事なことだから二度言った!?」

 今のゲイルは異常と言えた。リリーと言えども斬る気満々である。何故、こうなってしまったのかよくわからない。

 背中が痛むためにその場に膝をつくことになった。鈍い汗が身体全体から溢れてくる。今の一撃は鞘で打たれた。白刃を喰らっていたら横に真っ二つにされていた可能性がある。

 怖気と痛みに耐えながら、どうにか立ち上がる。リリーが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。

「あのぉ……私のわがままを聞いてもらえますぅ?」

「な……に?」

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Dernier chapitre

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第43話:聖騎士救出①

     転送した先で目に飛び込んできたのはおどろおどろしい神殿であった。紫色のオーラを放っていやがった。その紫色のオーラがこちらに近づいてきた。思わず後ずさる。「これ、触れていいやつなのか?」 こんな異様な雰囲気を放つ神殿の前に立つ笑顔の女神に問いかけた。女神はさらに笑みを強くして、こちらに手を差し伸べてきやがった。「ようこそ、アルト。邪龍の神殿へ」 「俺、何の準備もしてないよ!?」 「大丈夫。今回は囚われの聖騎士シャインの救出にやってきただけだから。今のアルトに戦えなんて、そんな自殺行為、お勧めできないわ」 「その言葉、信じていいのか判断しかねるなぁ」 差し伸べられた手に手を合わせた。すると、イメージが脳内に再生された。聖騎士シャインが囚われている姿が見えた。 聖騎士シャインが着ている鎧のあちこちが破損している。さらに逃げられないようにと植物の蔓のようなもので拘束されている。「この映像は!?」 「聖騎士シャインはまだ生きているっていう証拠をあなたに見せてあげたのよ」 「場所はわからないんですか!?」 「神殿の生贄の間だと思うわ。そこにシャインがいるはずよ」 「そこまでわかっているのならば、なんで女神様が助けにいかないんだ!?」 「……そこは男の子が頑張るところじゃないの?」 「……そうなりますよね」 場所までわかっているなら、女神パワーでどうにかしてほしかった。だが、現実は甘くなかった。女神はそうしない。女性を助けるのは男性の役目だとして、こちらに仕事を押し付けてきやがった。「ちなみにやろうと思えば、やれるんですよね?」 「できるわよ。でも、私の力に呼応して、邪龍が目を覚ますわよ」 「ああ、なーるほど? 脆弱な力しかもってない俺なら、刺激しなくて済むってわけですね?」 「そういうこと。理解が早くて助かるわ~~~♪」 「とほほ……」 女神が「行ってらっしゃい」と手をひらひらさせている。うなだれるしかなかった。リリーがこちらに声をかけてくれた。「がんばってください、アルトさ

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第42話:王城襲撃④

     自分たちの目の前に黄金色の扉が出現した。その扉は自然と開く。だが、その向こう側からは誰も現れない。 肩透かしを食らってしまった。ゲイルが恐れ知らずなのか、扉の向こう側を確認しに行く。その時だった。ゲイルの姿が忽然と消えたのだ。「!? 今、何が起きたんだ」 「はわわ。ゲイルさんが消えちゃったのですぅ!」 「リリー、ここは下がっていろ! なんか嫌な予感がする」 リリーをすぐさま下がらせる。そして、代わりに自分が前に出る。何故、ゲイルが消えてしまったのかの原因を探ろうとした。だが、その前に口うるさい第3王子がしゃしゃり出てきやがった。「お前の仲間はこの場から逃げたのでしゅ!」 「うるせー! 俺たちのゲイルがそんなことするわけねえだろっ!」 本当に口が減らない第3王子であった。しかしながら、ピーンと来るものがあった。この黄金の扉の前に立っていたゲイルが消えた。 これは転送装置の可能性がある。繩で簀巻き状態にしている第3王子を黄金の扉の前に転がしてやった。「な、何をするでしゅ!? 吾輩は消えたくないでしゅよ!」 「ははーん。お前も気づいているんだな?」 「いやーーー! どこかに飛ばされるでしゅーーー!」 第3王子は叫び声をあげた。だが、その声は途中でいきなりぶった切られることになった。予想通り、第3王子もどこかへと消えてしまった。「というわけだ。これは女神様からの助け舟みたいだ。俺たちも転送しよう」 「……どこに飛ばされるかもわからないってのに?」 「ヴィオさん。ここには聖騎士シャインがいないんだ。長居は無用だろ?」 「それはそうだけど」 「ほら、行こうぜ」 聖女ヴィオレッタに手を差し伸べる。そうだというのにまだ逡巡している聖女だった。そんな彼女の肩に手をポンと置いた大魔導士ミカが「お先に」と言って、黄金の扉の前に立つ。 すると、今度は大魔導士の姿が消えた。次に動いたのはリリーだった。「アルトさん。ヴィオさんをお願いします。でも、浮気は許しませんからね?」 「そ、そんなつもりでヴィ

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第41話:王城襲撃③

     第3王子は繩でぐるぐる巻きにされて、まるでミノムシのようになっていた。だが、その状態でもやかましい。いっそ、腹に蹴りでも入れて、無理矢理黙らせてやろうかとさえ思えてくる。 だが、それを静止してきたのは大魔導士ミカであった。「人質に手をあげるのはご法度でございまする」 「そんなルールでもあるわけか? この世界には」 「はい、ありまする。人質や捕虜の扱い、あとはその交換に関する国際ルールが制定されておりますのじゃ」 「中世ナーロッパのくせに……」 どうにももやもやとしてしまう。ミノムシ状態にしなければよかったとすら思えてくる。完全に拘束してしまったことが裏目に出てしまった。「吾輩をどうする気でしゅか! このまま親父との交渉に使うでしゅか!」 「ああ、全くその通りだよ!」 「くーくくっ。浅知恵にもほどがあるのでしゅ」 「どういう意味だ?」 「まずひとつ。吾輩を背負ったまま、無事に国王である親父のとこにまで到達できないのでしゅ」 「やってみなきゃわからんだろ」 「さらにもうひとつ。この城にお前たちが探している聖騎士はいないのでしゅ」 「なん……だと!?」 聖騎士シャインはこの城に囚われているままだと思い込んでいた。しかし、実際は違った。急いで、聖騎士シャインをどこに移送したのかを第3王子に詰問した。「クククッ。邪龍が住まう神殿でしゅ。聖女が生贄になるのを拒んだから、今年は代わりに聖騎士シャインを生贄にすることにしたのでしゅ」 「どういうことだってばよ!?」 「おや? そこの聖女様から聞いてないのでしゅか?」 恐る恐る聖女ヴィオレッタの方へと視線を向けた。聖女は「あはは……」と苦笑していた。怒りが湧いてきた。「おい、ヴィオさん。あんたは俺に本当のことを隠していやがったのか!」 「隠してたわけじゃないわよ。話す機会がなかっただけ」 「くっ! 俺がそんなに信用できないってのか!」 「そうじゃないわ。これ以上、私のことで巻き込みたくなかっただけよ」 「どういう

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第40話:王城襲撃②

     だが、本当の地獄はここからだった。牢屋を抜けだしたはいいが、城のそこら中に警備兵が巡回していた。 彼らに見つかれば、また牢屋に戻される。ここで光ったのが自分の透視能力だった。城のどこに警備兵がいるのか壁越しでわかる。 皆の先頭を自分が率先して歩く。網目のように張りめぐらされた警戒網をゆっくりと進んでいく。 皆が緊張感に包まれていた。そして、緊張感がMaxに届いた時、事件が起きた。誰かがプゥ~~~とオナラをしたのである。「なんだ今の音!?」 警備兵たちが一斉にこちらへと振り向いてきた。急いでリリーを抱き寄せる。次の瞬間には透明化を行い、自分とリリーの姿を相手から見えなくさせた。「おっとぉ? お客さんたち。どこへ行く気かな?」 警備兵たちから見えるのはゲイルとヴィオレッタ、そしてミカの3人だ。自分とリリーは透明化で姿を消している。 こちらの3人に向かって、警備兵がゆっくりと近づいてくる。自分はリリーの口に手を当てて、声を出させないようにした。 そのままの体勢でゆっくりと、警備兵の後ろへ回る。素早く彼の右腕を絞り上げ、その手から武器を取り上げた。「なんだ!?」 警備兵が素っ頓狂な声をあげた。手に持っていた武器をリリーに投げ渡す。その後、警備兵の足をひっかけて、彼を転ばせた。 それを合図にゲイルが警備兵の頭頂部にチョップを喰らわせた。警備兵は「ぐぇええ」とカエルのような声をあげて、失神してしまう。 警備兵の残りは二人だ。こちらの動きが流れるように鮮やかだったためか、呆けた顔をしていやがった。 その隙を見逃さない。急いで時間停止を行い、警備兵から武器を取り上げる。それをまたしてもリリーに投げ渡しておく。「これはみね打ちよ」「ひでぶっ!」「あべしっ!」 聖女ヴィオレッタと大魔導士ミカが素早く動き、警備兵たちの股間を目掛けて膝を入れている。倒れた警備兵たちが口から泡を吹いていた。ゾゾ……と背筋に冷たい汗が流れ落ちてくる。「お前ら、どこがみね打ちなんだよっ

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第39話:王城襲撃①

     自分たちは襲撃に会いながらも、どうにか城門にまでやってくる。城門を守る衛兵がこちらに槍の穂先を向けてきた。「何の用でこの城にやってきた」 どこまでも冷たい声だった。こちらを邪魔者としか感じていない。そんな雰囲気を発していやがった。 ムカッとしたのでその怒りをそのまま声に乗せそうになった。だが、口から言葉が飛び出す前にリリーがこちらの手を引っ張ってきた。「ダメですぅ。喧嘩を売りにきましたけど、買いにきたわけじゃないのですぅ」 「ハハッ。リリーは上手いことを言いやがる。そうだった。俺たちはカチコミにやってきたんだったな」 さすがはリリーである。こちらの手綱をしっかりと握ってくれている。心が軽くなった。衛兵とのやり取りをトラブルメーカーの聖女ヴィオレッタに任せることにした。「この城のどこかに私の従者が囚われているってのは知っているの。白状しなさいっ」 「おいっ。何をおかしなことを言ってやがる。そもそも、お前は誰なんだ」 「私? 私は聖女ヴィオレッタ様よっ!」 「そんな……バカな!?」 衛兵がおおいに戸惑っている。彼はただの衛兵だ。情報を処理しきれなくなっていた。こちらはニヤニヤと悪い顔になっていた。 衛兵の事情など、お構いなしにずけずけと用件を伝えてこいと命じる聖女であった。衛兵は「グヌヌ……」と唸っている。 衛兵は門を守る仕事を忠実にこなすか、それとも伝令役になるかの二択を迫られていた。しばらく聖女とやりとりをしていたかと思えば、急にあちらが折れることになった。「わかったわかった。上に伝えてくる。だが……その結果がどうなろうが俺の知ったことじゃない」 「気にしなくてもいいわ。モブはさっさと引っ込んでね。話が進まないもの」 「ぐぬー――! 言わせておけばっ!」 さすがはトラブルメーカーの聖女である。ついに堪忍袋の緒が切れたのか、衛兵は聖女に向かって槍の穂先を突き付けてきた。 だが、その槍の中ほどを手で掴んで止めた男が出てきた。その男はもちろん、頼もしい我らがゲイルである。「淑女に失礼だぞ。

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第38話:一難去ってまた一難⑤

     盗賊に襲撃されてから三時間後、王都の入り口の門が夕日に照らされて見えてきた。自分たちはようやく王都の門の前に立つことになる。 一気に王城まで行きたいところだったが、夕暮れに差し掛かっている。「どうする?」 大魔導士ミカの方に顔を向けて、そう聞いてみた。大魔導士はコクリと頷き、こちらに返答してくる。「今から王都で宿屋を探すくらいなら、王城で寝泊まりさせてもらいましょうぞ」 「あくまでもイケイケでいいわけだな? 後悔はないんだな?」 「時間をかければかけるほど、聖騎士シャインの立場が危うくなりますゆえ」 「わかった。皆、このまま王城へかちこみだ!」 大魔導士の指示に従い、王都内を馬車で突っ切る。さすがは王都だ。どこに行っても、人だらけである。人の波が途切れることが無い。 リリーがこちらの腕に手を回してきた。彼女は心細さを感じているのかもしれない。回された手にこちらも手を添える。「リリーは必ず俺が守るから」 「はいっ。期待しているのですぅ」 「あらあら、お熱いこと! アルト、私たちも守ってね!」 「ヴィオさん? からかうところじゃないと思いますよ」 「超真面目に言ってるんだけどにゃぁ?」 ぷいっと聖女ヴィオレッタから視線を外す。そうした瞬間、嫌な予感がした。自分が動く前にギルド長のゲイルが動いた。彼は腰に佩いた剣を素早く抜刀する。 カキーンカキーンという甲高い音が聞こえた。さすがのゲイルである。四方八方から飛んできた矢を剣で叩き落してくれた。馬車の幌がゲイルの剣裁きによって四散する。「サンキュ。ゲイル」 「アルト殿も気づいておられたご様子。お節介でしたかな?」 「いいや。何かが来るとは感じたけど、迎撃体勢にまでは移れなかった。さすがはゲイルだよ」 「ふっ。これはご謙遜を」 ゲイルはこちらの実力を過大評価しすぎている。今の襲撃に対応できたのはゲイルがいてくれたおかげである。これは嘘偽りのない自分の評価だった。 だが、ゲイルはこちらと視線を合わす前に次の行動へと出た。馬車の荷台の後

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第4話:債務

     とりあえず合わせて2万ゴリアテを手に入れた。女神が言うには日本円に換算して20万円だそうだ。身分がしがない高校生である自分にとっては大金に感じてしまう。「俺……20万円もリボ払いで返すって、人生詰んだんじゃないですかぁ!?」「安心して? たったの20万円だからっ。月々5000円+手数料で約40回払い。スマホ本体を48回払いするよりも簡単に返せちゃう!」「ははっ……俺、腹が減って思考能力が落ちてるせいか、20万円を天文学的数字に思っちまった。てか、スマホの48回払いって今更にとんでもないな!?」 スマホの話はさておき、女神から手に入れたお金で何か食べたい。こちらの気持ちを汲んでくれた

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第3話:追放

    「さてと……そろそろ真面目な話をするわよ?」 女神がピシャリと場を整えてくれた。その身から威厳と神々しい光を溢れさせる。いよいよかと思われる瞬間がやってきた。 周りにいる貴族たちが姿勢を正す。聖女パーティの3人も女神に向かってひざまずく。自分はどうしたものかと考えていると、女神がこちらの両肩に両手を乗せてきた。「勇者アルト・キサラギが聖女の旅を助けてくれます。彼はハズレ職業のエスパーですが、それでもきっとたぶん聖女のためにその命を捧げてくれるでしょう!」 「……えっと、女神様」 「はい? なんでしょうか、勇者アルト・キサラギ」 「キャラクターシートでエスパーをお勧めしてくれてまし

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第2話:初対面

     如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆

  • ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる   第1話:アルトの日課

    「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status