ログインゲイルが魅力的な話をしているが、却下しておく。現国王がどうであれ、自分には関係ないと思いたい。
第一優先は囚われの身となっている聖騎士シャインを助け出すこと。国王の件は二の次だ。ここで軍師役の大魔導士ミカに意見を聞く。
ミカはくせ毛をいじりながら、さも面倒くさそうにこちらと受け答えしていた。ムムム……と唸るしかなかった。
「そんなに俺が国王排除を却下したのが気に入らねえのか!」
「あちきはまず最善策を示しましたのじゃ。それを却下しておいて、一粒で二度美味しい策を出せと言われましても?」 「でも、大魔導士と呼ばれるほどのミカなら、策は出せるんだよね?」 「はい、出せます。出したくないだけなので」 「グヌヌ……見返りに欲しいものなんだ?」 「ブランド物のバッグですなぁ」 「もってけ泥棒!」大魔導士ミカのやる気を削いだのは他でもない自分だった。本来なら、カノジョ以外の女性にプレゼントを贈りたくない。だが、背に腹は替えられない。
さすが大魔導士。ポ
ゲイルが剣を構える。すぐさま自分はゲイルの後ろに回り込んだ。剣風がゲイルの身から発せられる。 目にも止まらぬ斬撃だ。ゲイルは近づいてくるスケルトンを次々と打ち砕いてくれた。だが、それでも敵の勢いは衰えない。 次に襲ってきたのは骨で出来た獣たちだった。彼らは骨だけの身体でありながらも俊敏に動く。ゲイルが驚きの表情になっていた。「これはちと難儀しそうですわい」 「俺も何か手伝ったほうがいいか!?」 「いえ。シャイン殿を落とさないようにご注意を。駆け抜けますぞっ!」 埒が明かないと判断したのだろう、ゲイルは。大広間を走って突っ切る判断に出た。ゲイルがまたしても剣風を発生させる。目の前に展開していた骨の獣が吹き飛んだ。 空いた道をゲイルと共に走る。そして、自分を先に行かせてくれたゲイルが殿を務めてくれた。 自分はシャインを背負ったまま、走りに走った。階段が見えた。その階段を転げそうな勢いで下っていく。1階部分にやってきた。そこで足を無理矢理止められることになった。 道を塞いでいたのは骨で出来た恐竜だった。強靭な顎を持ち、さらに手には鋭すぎる爪が生えている。 ゲイルは自分の尻を守ってくれていた。そのため、骨の恐竜の相手をするのは自分となる。覚悟を決めた。その場でシャインを床に下ろす。 短剣を身体の前で構える。まずは透視能力を発動させた。敵の弱点を探すためである。骨だけの存在であろうが、その身体を動かしているエネルギーの核があるはずだと睨んだ。 そして、こちらの目論見通り、エネルギーの核が見えた。骨だけの存在だというのに心臓部分にエネルギーの核があった。 そこを的確に短剣で貫けばよいと思えた。しかし、そう簡単にはいかないようである。骨の恐竜が大きく口を開いて、こちらに突進してきやがった。 時間停止を発動させた。短剣を仕舞う。床に置いたばかりのシャインを担ぐ。その後、恐竜の突進を躱せる位置へと移動する。 時間停止が解けた。骨の恐竜がドッスンドッスンと足音を立てて、あらぬ方向へと突っ込んでいく。壁に激突しやがった。顔が半分砕け散っている
ぐったりとして動けなくなっている聖騎士シャインを背負う。鎧が無い分、彼女本来の重さにびっくりしてしまう。(これが女子の体重ってやつ? 見た目と裏腹に軽すぎる!) 聖騎士シャインは自分と同じ身長だ。そして、胸にはFカップのおっぱいを実らせている。それならば、自分と大して体重はかわらないはずだと思えた。 実際には違った。背負ったことで、男と女がここまで違うものかとびっくりしてしまった。背中に当たるおっぱいの感触を楽しんでいる暇などいっさいなかった。「女子を助けるのは男子冥利だとは思いませんか?」 「それが憎々しいシャインじゃなかったら、もっと良かったって思ってる」 「がははっ。アルト殿は狭量ですな」 「うるせえ。散々ひどい目、見せられてんだこっちは。てか、やっぱり仕返しにおっぱい揉んでおけばよかった?」 「ゆっさゆっさと身体を揺らしてあげなされ。それで背中におっぱいがこすりつけられるでしょう」 「そこまで俺の足腰が強くないから却下かな」 バカ話をしながら神殿から脱出しようとしていた。足元に転がる大量の骨がとにかく邪魔だ。こちらはシャインを背負っている。危なくて仕方がなかった。 変な風に骨を踏んだら、転んでしまう自信があった。来た時以上に慎重に帰りの道を行く。 すると、来た時には気付かなかったものが目に映ることになった。古びた絵画が壁に飾られていた。「こんな絵画、来る時にあったっけ?」 思わず先を歩くゲイルに訪ねてしまった。ゲイルはふむ……と息をつき、足を止めてしまった。「行きはアルト殿のお尻を守ることに集中していたため、気づきませんでしたな」 「俺の尻に集中しすぎじゃね?」 「イイ男ですからなっ」 「うほっ!」 ゲイルがおどけてみせた。ゲイルがホモじゃないことは知っている。彼の性的指向は至ってノーマルだ。もしアブノーマルだったら、二人っきりで神殿内部に入ってこようとはしない。 それはともかくとして、絵画に注目した。一人の男がドラゴンと戦っている姿が描かれていた。
禍々しいオーラを放つ邪龍の神殿の前に立つ。ボリボリと頭を掻いた。そうしていると、ポンとお尻をゲイルに叩かれた。「どうぞお先に。見えるのでしょう? 聖騎士シャインまでのルートが」 「頼りにされて涙が零れそうだぜ。ああ、しっかりと見てやるさ!」 透視能力を発動する。禍々しいオーラの中から清浄なオーラを見つけた。か細い糸のようなオーラであったが、この糸の先に聖騎士シャインがいるのだろうと予想できた。 ゲイルに向かってこくりと頷く。ゲイルがうんうんと頷き返してきた。二人揃って慎重に神殿内に足を踏み入れた。 その瞬間であった。とんでもなく臭い匂いが鼻をおおいに刺激してきた。吐き気を催した。酸っぱい胃液が食道をせせり上がってくる。「おえええ……なんちゅう匂いだ」 「死臭ですな。それもとんでもない量の」 「この中を歩けってかー?」 「行くしかないですなぁ」 「行くしかないのかぁ……」 ちらりと後ろを振り向く。リリーと聖女が「がんばれがんばれ」と応援してくれていた。そのこと自体は嬉しいのだが、それでも足がすくんでしまう。それほどの悪臭が鼻を襲ってきていた。 鼻に手を当てながら、恐る恐る神殿内に入る。さしものゲイルも自分と同じポーズだった。歴戦の戦士であるゲイルでも堪える匂いなのだろう。 神殿内に入り込んで10メートルもしないところで足が止まってしまった。激臭で目までもが痛くなってきたからだ。視界が歪む。そんな時、ゲイルがこちらの身体を支えてくれた。「トゥンク……じゃねえよ!」 「がーははっ。ワシに惚れるなよ?」 「男前すぎて、胸が高鳴っちまったよ」 「それだけ元気があれば、まだまだ大丈夫ですなっ」 ヤレヤレ……と肩をすくめるしかない。激臭すぎて、嗅覚が麻痺してきた。おかげで手で鼻を抑えなくてよくなった。 目がシパシパするが、直に慣れるだろうということで、ゲイルと一緒に先に進む。突き当りを右に曲がる。先ほどから見えている清浄なる糸のようなオーラがこの先に続いていたからだ。 右に曲がった後に階段があった。そこを
転送した先で目に飛び込んできたのはおどろおどろしい神殿であった。紫色のオーラを放っていやがった。その紫色のオーラがこちらに近づいてきた。思わず後ずさる。「これ、触れていいやつなのか?」 こんな異様な雰囲気を放つ神殿の前に立つ笑顔の女神に問いかけた。女神はさらに笑みを強くして、こちらに手を差し伸べてきやがった。「ようこそ、アルト。邪龍の神殿へ」 「俺、何の準備もしてないよ!?」 「大丈夫。今回は囚われの聖騎士シャインの救出にやってきただけだから。今のアルトに戦えなんて、そんな自殺行為、お勧めできないわ」 「その言葉、信じていいのか判断しかねるなぁ」 差し伸べられた手に手を合わせた。すると、イメージが脳内に再生された。聖騎士シャインが囚われている姿が見えた。 聖騎士シャインが着ている鎧のあちこちが破損している。さらに逃げられないようにと植物の蔓のようなもので拘束されている。「この映像は!?」 「聖騎士シャインはまだ生きているっていう証拠をあなたに見せてあげたのよ」 「場所はわからないんですか!?」 「神殿の生贄の間だと思うわ。そこにシャインがいるはずよ」 「そこまでわかっているのならば、なんで女神様が助けにいかないんだ!?」 「……そこは男の子が頑張るところじゃないの?」 「……そうなりますよね」 場所までわかっているなら、女神パワーでどうにかしてほしかった。だが、現実は甘くなかった。女神はそうしない。女性を助けるのは男性の役目だとして、こちらに仕事を押し付けてきやがった。「ちなみにやろうと思えば、やれるんですよね?」 「できるわよ。でも、私の力に呼応して、邪龍が目を覚ますわよ」 「ああ、なーるほど? 脆弱な力しかもってない俺なら、刺激しなくて済むってわけですね?」 「そういうこと。理解が早くて助かるわ~~~♪」 「とほほ……」 女神が「行ってらっしゃい」と手をひらひらさせている。うなだれるしかなかった。リリーがこちらに声をかけてくれた。「がんばってください、アルトさ
自分たちの目の前に黄金色の扉が出現した。その扉は自然と開く。だが、その向こう側からは誰も現れない。 肩透かしを食らってしまった。ゲイルが恐れ知らずなのか、扉の向こう側を確認しに行く。その時だった。ゲイルの姿が忽然と消えたのだ。「!? 今、何が起きたんだ」 「はわわ。ゲイルさんが消えちゃったのですぅ!」 「リリー、ここは下がっていろ! なんか嫌な予感がする」 リリーをすぐさま下がらせる。そして、代わりに自分が前に出る。何故、ゲイルが消えてしまったのかの原因を探ろうとした。だが、その前に口うるさい第3王子がしゃしゃり出てきやがった。「お前の仲間はこの場から逃げたのでしゅ!」 「うるせー! 俺たちのゲイルがそんなことするわけねえだろっ!」 本当に口が減らない第3王子であった。しかしながら、ピーンと来るものがあった。この黄金の扉の前に立っていたゲイルが消えた。 これは転送装置の可能性がある。繩で簀巻き状態にしている第3王子を黄金の扉の前に転がしてやった。「な、何をするでしゅ!? 吾輩は消えたくないでしゅよ!」 「ははーん。お前も気づいているんだな?」 「いやーーー! どこかに飛ばされるでしゅーーー!」 第3王子は叫び声をあげた。だが、その声は途中でいきなりぶった切られることになった。予想通り、第3王子もどこかへと消えてしまった。「というわけだ。これは女神様からの助け舟みたいだ。俺たちも転送しよう」 「……どこに飛ばされるかもわからないってのに?」 「ヴィオさん。ここには聖騎士シャインがいないんだ。長居は無用だろ?」 「それはそうだけど」 「ほら、行こうぜ」 聖女ヴィオレッタに手を差し伸べる。そうだというのにまだ逡巡している聖女だった。そんな彼女の肩に手をポンと置いた大魔導士ミカが「お先に」と言って、黄金の扉の前に立つ。 すると、今度は大魔導士の姿が消えた。次に動いたのはリリーだった。「アルトさん。ヴィオさんをお願いします。でも、浮気は許しませんからね?」 「そ、そんなつもりでヴィ
第3王子は繩でぐるぐる巻きにされて、まるでミノムシのようになっていた。だが、その状態でもやかましい。いっそ、腹に蹴りでも入れて、無理矢理黙らせてやろうかとさえ思えてくる。 だが、それを静止してきたのは大魔導士ミカであった。「人質に手をあげるのはご法度でございまする」 「そんなルールでもあるわけか? この世界には」 「はい、ありまする。人質や捕虜の扱い、あとはその交換に関する国際ルールが制定されておりますのじゃ」 「中世ナーロッパのくせに……」 どうにももやもやとしてしまう。ミノムシ状態にしなければよかったとすら思えてくる。完全に拘束してしまったことが裏目に出てしまった。「吾輩をどうする気でしゅか! このまま親父との交渉に使うでしゅか!」 「ああ、全くその通りだよ!」 「くーくくっ。浅知恵にもほどがあるのでしゅ」 「どういう意味だ?」 「まずひとつ。吾輩を背負ったまま、無事に国王である親父のとこにまで到達できないのでしゅ」 「やってみなきゃわからんだろ」 「さらにもうひとつ。この城にお前たちが探している聖騎士はいないのでしゅ」 「なん……だと!?」 聖騎士シャインはこの城に囚われているままだと思い込んでいた。しかし、実際は違った。急いで、聖騎士シャインをどこに移送したのかを第3王子に詰問した。「クククッ。邪龍が住まう神殿でしゅ。聖女が生贄になるのを拒んだから、今年は代わりに聖騎士シャインを生贄にすることにしたのでしゅ」 「どういうことだってばよ!?」 「おや? そこの聖女様から聞いてないのでしゅか?」 恐る恐る聖女ヴィオレッタの方へと視線を向けた。聖女は「あはは……」と苦笑していた。怒りが湧いてきた。「おい、ヴィオさん。あんたは俺に本当のことを隠していやがったのか!」 「隠してたわけじゃないわよ。話す機会がなかっただけ」 「くっ! 俺がそんなに信用できないってのか!」 「そうじゃないわ。これ以上、私のことで巻き込みたくなかっただけよ」 「どういう
赤、ピンク、紫といったいかがわしいネオンが眩しいデカすぎる建物の前に自分は立っていた。さらにこの建物がカジノであることがこれまたデカすぎる看板で示されていた。 正直、怖気付いてしまいそうになる。女神に自分はダメンズではないことを証明しようとして、ひとりでカジノの前までやってきた。「当
この世界で一番手っ取り早く稼げる方法。それはどこの世界でも変わらないようだった。女神が妖艶な笑みを浮かべる。「カジノで荒稼ぎするのよ」 「犯罪じゃないですよね!?」 「バレなければね」 「女神ぃぃぃっ!?」 バレなければ犯罪じゃない。なんとも甘美な言葉だった。またしても女神はこちらを堕落させようとしてくる。(この女神様。ダメンズ製造機なのでは?) 目の前で踏ん反り返っている女神に対して、こちらはおどおどと情けない姿を晒してしまっている。 確かに金を稼ぐ方法を聞いたのは自分だ。今
如月有人は今の状況にうろたえるしかなかった。下半身丸出しで居て良い場所ではないことは一目瞭然だ。 貴族と思わしき人々の中でも、一番に目立ついかつい身体をしている壮年の男が真っ赤な顔で「おい、この不埒者が!」とこちらへと詰め寄ろうとしてきた。 ひっ! と情けない声をあげてしまう。しかし、そんな自分といかつい貴族の男の間に割って入ってくれる人物がいた。 その人物は女性だった。真っ白な身体をこれまた真っ白なローブで包んでいる。金髪碧眼縦ロール。彼女がニッコリとほほ笑む。 その笑顔だけで怒り顔の貴族の顔が破顔してしまった。何をしたのかと疑ってしまうレベルだった。「皆
「ボストンバッグ発見! 第1調査隊の如月有人、突貫します!」 高校1年生の如月有人は学校の帰り道、河川敷にポツンと置かれていた黒革のボストンバッグを発見した! 彼はお宝の匂いに敏感だ。きょろきょろと辺りを見回す。犬と一緒に散歩しているお爺ちゃん。運動不足を解消するために走っているジャージ姿の青年。 彼らはまったくこちらに気付く様子もない。しめしめと思いながら、ボストンバックのチャックを開く。「うひょぉ~♪ 俺が睨んだ通り、お宝の山だ! この湿り気具合。捨てたのは昨夜……っぽいな?」 有人はボストンバックの中身を吟味する。ざっと見た感じでは30冊はある。どれもこ







