All Chapters of 夢幻の旅路と二つの世界 〜『夢』に喰われる街で、能力“ブラム”で世界を救う〜: Chapter 31 - Chapter 40

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第三十一話

さらに奥まで進んだが、周りの景色は一向に変わらない。無機質な鉄格子と丸石の壁だけがまだまだ続いている。「なあ、これ同じところ行ったり来たりしてないか?」歩いていると、景佑が話し出した。「まあ、こんなに同じ場所ばっかりだとそう思うよな」「いや、これ見てくれよ」景佑は壁に書かれている名前を指さした。『3ーA 竹中夏美』入り口で見た名前と同じで、番号もまるっきり同じだ。「同じ名前…」「一体どう言うことだ?」黎慈は周りを見渡し、難しい表情をした。だが、解決になりそうなものは何もない。奥の道もまだまだ続いている。「大抵、ゲームとかだとギミックがあってそれをこなすと解ける、ってのがテンプレなんだが…」「…」二人は考え始めた。だが、黎慈は何も思いつかない。ループしていると仮定して、何がきっかけでなっているのかすらも検討がつかない。そもそもここから抜け出せるのかすらわからない。そう考えていると、景佑が徐に壁を触り始めた。「何してんだ?」「もしかしたら、壁はあるようで無いのかもしれない」訳のわからないことを言い始めた。遂に頭がおかしくなったかと思った。だが、壁を触っている景佑は何かに気づいたらしい。「黎慈、ここの壁…」景佑に変わり、黎慈が壁を触る。他の壁とは違い、少しだけ奥に押せるような感覚があった。「もしかして…?」黎慈はその部分を力強く押した。「ガシャン…」装置が動くような轟音が空間へと響く。すると、後ろにあった鉄格子の部屋が開いた。それと同時に、それまで無限のように続いていた奥の道が、消えるようにして壁になった。二人は息をのみ、その鉄格子の部屋の中に入って行った。とは言っても、特に何の変哲もない刑務所のような空間だった。だが、この部屋に何かがあるのは間違いない。二人は隅々まで探すことにした。黎慈が今にも壊れそうなベッドの上に登り、上の方を見ていた。ベッドの上には木製の棚しか無かった。ベッドから降りようとした時、体勢を崩してそのまま背中から地面に落ちてしまった。「いてて…」「何してんだよ…」ベッドは大破していた。ただ、ベッドの下に何かがあるようだ。毛布や鉄筋を除ける。すると、そこに現れたのは開きそうなドアだった。黎慈はドアを開けた。下には梯子が続いており、さらに地下へと続いているよ
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第三十二話

梯子を登り、先程まで居た通路まで出た。相変わらず静寂に包まれていた。「…っで…君たちは…何なわけ?」息切れしているようだったが、声は明らかに苛立っている。「難しい質問だな」黎慈は口を窄めた。どうせ自分たちが言っていることは信じてもらえない。言っても無駄だと黎慈は考えた。そのまま黙って進むことにした。「ちょ、答えてよ」先を急ぐ黎慈の服の裾を乱暴に掴んだ。「はあ…」うるさい口を閉じるために、話すことにした。「ここが夢の世界って言ったら信じるか?」「は?何言ってんの?頭おかしいんじゃないの?」そりゃあそうだよな。まぁ、当然と言えば当然の反応だ。しかし、すごく癪にさわる。「やっぱいいや」先を急ぐことにした。「ちょっと!信じるからって言ったじゃん!無視すんの?」また黎慈の服の袖を強く引っ張ってきた。仕方なく自分たちの目的と、何者なのかを話し始めた。「とにかくそう言うことだから、絶対に離れるなよ」黎慈と景佑は出口に向かって歩き始めた。少女は黎慈の裾を掴んだまま、後ろをガッチリとついてくる。時々、後ろから大きめのため息が聞こえる。明らかに聞こえるように言っているだろう。数分歩き、やっと出口の扉が見えた。慎重に扉を開け、登ってきた階段を上がった。外に出る扉まで着き、扉を開けた。幸い、外には何もいなかった。「ふう~、やっと外か」「狭くて息苦しかったわ」その子は地面にドカッと座った。相当疲れていたのだろうが、座り方も投げやりだ。黎慈と景佑も数十分ぶりの外の風を感じながら、軽く息をついた。少しの間、誰も口を開かなかったが、その静けさが逆に不安を増幅させていた。「これで大丈夫なのか…?」景佑がぽつりと呟いた。「外には何もいない、今のところはな」黎慈はそう言いながらも、油断することなく周囲を見渡す。「ねえ本当に夢なの?信じらんないんだけど」「さっき信じるって言っただろ」「実感がまだないって言うか…」「ていうかあんたら本当に信じてるの?頭大丈夫?」一挙手一投足全てが黎慈をイライラさせる。『置いてってやろうか、こいつ』そう思うほどに。少女はもぞもぞと地面に座ったままの体勢を変える。「実際に四肢は現実と同じように動かせる訳だし…」女子生徒は手を擦り合わせるなどして、感覚を確かめていた。「この世
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第三十三話

「大丈夫か!」すぐに合流し、駆け寄った。体を揺らし、起きるように促した。「おい!起きろ!」声でも起こしてみようとする。だが、いくら揺らしても起きる気配がない。口元に指を当てる。幸い息はしているようだった。彼女の方を見ると、その子のことを凝視していた。「この子、知ってる…」「実際に会ったわけじゃない、でもどこかで…」その瞬間、黎慈は彼女の肩を掴んでいた。「本当か?どこで?」「ちょっと、がっつきすぎ」彼女は黎慈をかなり強い力で肩から剥がしていた。「…悪い」「でも、本当にどこで会ったんだ?」気まずそうな黎慈の代わりに景佑が聞いた。「少し長くなるから、まずはその子を安全な場所に移動させよう」黎慈がその子を抱き抱え、噴水がある場所まで移動することにした。「よいしょっと」黎慈がその子を地面に置いたが、まだまだ起きる気配はなかった。「さっきの話、聞かせてくれ」彼女が地面に座った。「二人も座って」黎慈と景佑が座った。「あんまり覚えてないし、名前もわからないんだけど、覚えてるところまで話すね」女子生徒は話し始めた。「最初に記憶にあるのは夢の中でかな」黎慈がそのことについて疑問を持った。「夢ってどっちの意味?」「この世界じゃないよ。寝てる時に見る方」「ちょうど十日前かな」「内容は覚えてないんだけど、何かを言われたんだよね」覚えてないのか。まあ夢で見た内容を忘れることは良くあることだろう。そのまま話を聞くことにした。「そして昨日。またこの子が夢に出てきたんだよね」「その内容はしっかりと覚えてる」二人は固唾を飲んだ。「早くこの街から逃げろって」二人は妙に感じた。なんせ前に会った時は普通の女の子。同じ学校に通う一般女生徒だったはず。確かに少しおかしいと思う点はあった。だが、それを差し引いても一般女生徒のはずだ。「なんかおかしくね?」景佑が先に口にした。黎慈も薄々感じていた。「ああ、“何か“がおかしい」明らかに異変が起きている。そうこうしていると、横たわっていた子がモゾモゾと動き出した。起きたようで、黎慈と目があった。「ここは?」「夢の世界だ」そう黎慈が答える。「左様…ですか…」何だか前より雰囲気が違って見えた。「どうやら間違えたようですね」三人は困惑していた。「間違えたっ
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第三十四話

「ここから出るには、先天的なブラムの適正が必要です」「言わば、潜在能力というものでしょうか」「潜在能力?」景佑が困惑の表情でその子に聞き返す。「はい。ブラムは、誰でも扱える力というわけではありません」「適性は生まれた時に決まっています」「お二人は、ブラムの適性が人と比べて著しく高いのです」「だからこそ救世主として抜擢されたのだと思います」「あの方の考えていることはよく分かりませんが…」「とにかく、今現在そちらの方がここから出る方法はありません」結論が出たようだ。ただ、まだ心の奥で引っ掛かりがある。「あの方っていうのは、一体?」黎慈が聞き返す。「お二人は会ったことがあるはずです」「夢と現実を繋ぐ、重要なあの方です」「私も詳しい名前は知らないし、詳細もお伝えするなと言われているのですが…」なんだか引っかかる言い方だ。「…分かった。本当に出られる方法はないのか?」「完全に無いという訳ではないです。ただ、かなりのリスクを孕んでいます」「私からは薦められません」嫌な予感がする。「今日一日で出来るものでもないですし、最悪の場合、お三方の現実での意識が戻らない可能性があります」三人は少し考え込んでいた。ただ今の状況を打破するために、できるかできないかは置いておいて聞いてみることにした。「…聞かせてくれないか?」黎慈がそう聞く。「承知致しました。少し長くなりますので、一度夢の核から出ましょう」四人は屋敷の敷地内から出た。「ここまでくれば安全なはずです」かなり離れた路地裏まで来た。道中は化け物に出会うこともなくすんなりとついた。「今から言う説明を聞いた上で、三人でもう一度お考えください」「まずブラムをお持ちの二人は、夢の核の主人に現実で接触してください」「つまり、一度現実に戻る必要があるってことか?」「左様です」「接触する必要性はあるのか?」景佑が質問する。「この世界は現実での認知、個々の意識が関わっています」「その認知を変えることで、夢の世界でも影響が出ます」「具体的な接触方法は今から説明します」そう言うと、建物の壁に向けて何かの力を使った。すぐに異変が出た。プロジェクターのように壁に映像が流れ始める。「この力もブラムなのか?」「少し違いますが、概ね同じ力です」「まず、認知を変えるために個
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第三十五話

「にしても遅いな…」すでに5分以上経過していた。「ちょっと見てくる」黎慈は景佑の方へ歩いて行った。「どうするんだ、景佑」黎慈は景佑の方を軽く叩く。景佑は背を向けたまま、何も言わずに立ち尽くしていた。彼の肩越しに見える景色は、夢の世界特有の赤黒い光で覆われている。彼は少しだけため息をつき、ゆっくりと振り返った。「俺がここに踏み入るのは、もしかしたら早かったのかもな」「黎慈、お前は本当にそれでいいのか?」光がない目の景佑がこちらを見てくる。黎慈は景佑の問いかけに一瞬戸惑ったが、すぐに答える。「俺は覚悟を決めた。確かに、あの人は癪に触る人だ」「それでも、彼女を見捨てるわけにはいかない」「何が起こっているのか、この世界で何をしなければならないのか、全部を知りたいんだ」「景佑もそう言ってたじゃないか、原因を突き止めたいって」「そもそも夢について教えてくれたのはお前だったじゃないか」数秒、間が空く。「結局、我が身可愛さだったんだよ」「こうやって危機になったら、足が竦んで動けないんだ」下を見ると、確かに足が震えている。二人はその景佑の発言に黙り込む。少し間をあけて、景佑が顔を下に落としながら話し始める。「俺はお前みたいに強くない」黎慈はその発言に苛立ちが湧いてきた。「そんなの言い訳に過ぎないだろ!」黎慈の鋭い声が轟く。景佑はその言葉に反応せず、なおも俯いたままだった。その姿に黎慈の苛立ちはさらに募る。「逃げたままの自分で良いのかよ!」黎慈の声が大きく反響する。途端、景佑が黎慈の胸ぐらを掴み掛かる。「お前に俺の何が分かるんだよ!何も知らないくせに!」二人の顔が至近距離まで近づく。一触即発な雰囲気だ。目線でぶつかり合っている。「何も失ったことがないくせに、全てを見透かしたような目をして!」その景佑の発言に、黎慈は会ったときのことを思い出した。つい最近の事だったが、もうかなり昔のように思える。『その現象で、俺の友人は死んだ』最初にそう言っていた。明らかに景佑の地雷を踏んだことに気づいた。今までの発言が途端に申し訳なくなった。そう思い視線を下に落とす。「すまん…」この一言しか出てこなかった。どう謝ればいいのか分からない。景佑はしばらく黙ったままだったが、徐々にその手を離し、俯きながら一歩下が
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第三十六話

「回答は、出ましたか?」足音に気がついたようで、後ろ姿のまま話しかけてきた。気配を感じ取ったのだろう。その状態のまま、黎慈が結論を話し出していく。「もちろん。協力する」先ほどまでの憤りは、完全に消えていた。「覚悟は、よろしいですね?」「あぁ」その子がこちらに振り返った。「あまり時間がありません」「お二人は現実に戻り、現実でのアクションを起こしてください」「覚悟は決まっているのは重々承知ですが、アクションを起こした後は後戻りできません」「しっかりと、話し合ってください」「そして、ご存知の通り夢の主人は底知れない力を持っています」「こちらの世界に帰ってきた時、おそらく夢の主人の容態がすぐに変わるはずです」「起こすアクションにもよりますが、ほぼほぼ力を暴走させるはずです」二人は固唾を飲み込んだ。「すぐに対処・行動できるように作戦を考えてください」「猶予は三日間です」「三日間を過ぎると、そこのお方は記憶と共に消えますので、ご注意を」「この方は私が責任を持ってお守りします。安心して準備ください」黎慈と景佑は顔を見合わせた。そして頷き合った。「よし。行動開始だ」「ちゃんと間に合わせてよ!」走って屋敷の敷地を離れていくと、後ろから朱音の喚き声が聞こえる。「絶対に助ける!安心しろ!」黎慈は大声で返事をした。二人は屋敷を離れ、現実に帰還することにした。いつも通り、スマホのアラームで目が覚めた。いつもより体が気怠いのを感じながらも、体を起こす。とりあえず景佑にメッセージを飛ばすことにした。『今日、昼休みにいつもの教室で。衣百合にも話しとく』しかし、いつもよりも明らかに体調が悪い。やはり夢の世界に長く居たのが原因だろうか。風邪のように体が重たい。重力が体に重くのしかかる。なんとか着替えロビーまで向かう。キッチンには朝食を作っている衣百合がいた。それを横目に見ながら、ロビーにあるソファーに酔っ払いのように座り込む。「どうしたの?」キッチンにいる衣百合から声が飛んでくる。「まあ色々あってな」「あ、そういえばちょっと知っておいて欲しいことがあって…」黎慈はソファーから立ち上がり、衣百合がいるキッチンまで歩いて行った。「あんまり聞かれるとアレだから…」黎慈は衣百合に耳打ちするように、話そうとした。「ち
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第三十七話

「まず、私に具体的な説明貰える?」黎慈と景佑は具体的な説明を衣百合にし始めた。「簡単な内容は黎慈くんから聞いてたけど、やっぱり不思議な話だね」「まあ今さら驚かないけど…」ここまで驚きの連続が続いている。三人とも今更驚かない。「ここからが本題だ」「どうやって注意を引くかだけど…」黎慈は頭を抱えた。これと言って特に思いつかない。ここまで安全にやってきているからこそ、この最後で危険な目に遭わせる人を増やしたくはない。思考を巡らせていると、衣百合が話し始めた。「夢の核がある場所は、現実のこの学校なんだよね?」衣百合がそう聞いてきた。二人は頷く。「なら、あの人はこの学校全体を自分の居城だと思ってるわけでしょ?」「だったら、この学校のあの人が考えている認知自体を変えれば良いんじゃないかな?」黎慈は衣百合の話に希望が見えた。「具体的にはどうするんだ?」景佑が衣百合にそう聞く。「学校全体で“そういう雰囲気“を出せば良いんじゃないかな?」なんだか曖昧な内容だ。ただ、可能性としては捨てきれない。「具体的な内容はあるのか?」黎慈がそう聞く。「ん~、例えばだけど、全校生徒の和寿の認知を変えるとか?」「あの人、表ではものすごく善人だから、そのギャップを利用すれば良いんじゃない?」「少なからず和寿に被害を受けた生徒は存在するわけだから、その人たちを使えば…」「…その作戦、俺ら以外の協力者にものすごくリスクがないか?」景佑が考え込んでいて下がっていた頭をあげ、衣百合に言った。「あ…」衣百合は気づいてなかったようだ。口がポカーンとなっている。「俺ら以外の協力者はやめよう、危険すぎる」黎慈がそう言うと、二人は了承したかのように頷く。「でも、協力者がいないとこの作戦は厳しいと思うよ?」衣百合がそう言う。確かに、一理ある考えだ。「…良い考えがある」景佑は何かが閃いたようだ。そう話していると、昼休みが終わるチャイムが聞こえてきた。「昼はここまでだな。放課後、またここに集合でいいか?」黎慈が言う。「問題ないよ」「大丈夫だ」二人はそう言い、その場は解散した。授業が午後に移り変わり、終わろうとしていた5時限目が終わった。「あ~ねむ」眠い目をなんとか起こしながら迎えた6時限目。教科は数学だった。いつもなら手厳しい
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第三十八話

黎慈と衣百合は二人で帰ることにした。ある程度の距離感を保っていた。身長差はありつつも、側から見ればカップルのそれだっただろう。「実はさ、ちょっと緊張してるんだよね」衣百合が、この謎の空気感を変えるために話し始めた。黎慈は、自分にしか見せない衣百合の一面になんとも言えない感情を抱いていた。信頼の証ではあるのだが、その一面にどう接したらいいか分からなくなっていた。学校などではしっかり者のイメージがついており、この一面を知っていること自体になぜか動悸がする。「衣百合も緊張するんだな」黎慈は一言だけ口から漏れる。黎慈は衣百合を見ようとはせず、帰り道の道路の奥を見ていた。よく顔は見えなかったが、顔はぷすくれていた。「人をなんだと思ってるのさ…」衣百合は肩をガクッと落としていた。衣百合は冗談混じりでそう言いつつも、緊張は止まらないようだった。少し視線を落とすと、手が震えていた。『何かをしてあげたい。言葉をかけたい』そうは感じていた。だが、何を言えばいいか分からない。手を近づけようとしたが、結局触れ合う直前に手を離した。「まあ、疲弊しすぎて倒れんなよ」気持ちを悟らないように、なるべくいつも通り返した。声の震えも抑えたつもりだった。必死に普段通りを装う。「ありがとね」衣百合のその言葉には、様々な感情が乗っているのを感じた。これが恋愛的な感情なのかは分からない。二人は緊張しながらも、寮に帰った。寮につくと、ロビーにはすでに亮がいた。亮は二人で帰ってきたのを見て察したのか、すかさずニヤリと笑った。「ごゆっくり~」亮はそう言うと、2階にある自分の部屋に上がっていった。「あいつ…」黎慈は亮の言葉に少し苦笑いをしながら、軽くため息をついた。茶化してくる分、これが亮なりの気遣いなのだろう。「はあ…あいつ…」衣百合も黎慈に続いてため息をついた。「亮って昔からあんな感じなのか?」黎慈はロビーにあるソファに座った。「高校より前の亮は知らないけど、一年生の時とは変わってないよ」「…まあ、そう簡単に変わりはしないだろな…」「でも、今日はなんかありがとね」「聞いてもらってスッキリしたよ」黎慈は少し微笑んだ。「別に大したことはしてないよ」肩をすくめた。「そんなことないよ」「黎慈くんは誰かの支えになってると思うよ。
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第三十九話

そして次の日になった。黎慈は制服に着替え、ロビーに向かった。ロビーにはすでに衣百合がいた。そのままソファーに座った。そうしていると、黎慈のもとに衣百合が朝食を運んできた。「今日はよろしくね?」衣百合はそう言った。「まあ、俺ができることはないけど…」「祈ってくれてるだけで充分だよ」衣百合は優しく微笑んだ。「じゃあ、全力で祈ってるよ」昼休みになった。黎慈と景佑は空き教室に向かった。衣百合はまだ来ていなかった。「黎慈は色々と聞いてるんだよな?」「まあ、昨日聞いたけど…」黎慈は昨日のことを言うのか渋った。だが、景佑の為にも言うことにした。「かなり緊張してそうだったぞ」立ちながら話す黎慈に、景佑が椅子を用意しながら話す。「そりゃあ、そんだけのことをするんだからな…」「逆に緊張感持ってもらわないとな」冗談混じりで景佑が言う。そんなことを話していると、衣百合が教室にやってきた。「じゃあ、早速話していこうか」衣百合がスマホの画面を見せ、詳細を話し始めた。「なるほどねえ…」「まあ良いんじゃない?学内の雰囲気も一気に変わるだろうし」景佑は曖昧な感じを出しつつも、了承していた。「じゃあこれで行こうか」黎慈が最後にまとめるように話し始めた。「景佑の行動はどうする?」黎慈がそう言うと、衣百合が『うーん』と唸った。「私とグルだとバレたらめんどくさいから、そのまま帰って大丈夫だよ」「帰宅後は一旦黎慈に連絡してもらう感じで良いかな?」「うん。了解」そのまま三人は解散した。6時限目が終わった。正念場がやってくる。『頼む』黎慈は心の中で祈った。「キーンコーンカーンコーン」放送のチャイムが鳴る。どうやら始まったようだ。「全校生徒、並びに職員にお知らせです」周りにいる生徒たちは唖然としていた。「二年主任の夏樹 和寿に告ぐ」「お前は生徒たちに傍若無人の限りをつくし、生徒に対して事実上の殺人を犯した!」「学校に来なくなっている生徒がいるのはこれが原因である」「これは紛れもない事実であり、お前の犯した罪は絶対に」「これは我々からの宣戦布告だ!」「生徒諸君、教師諸君も忘れるでない」黎慈は放送が終わるとすぐに教室を出て行った。廊下はほぼパニック状態だった。生徒たちは『なにあれ!?』など阿鼻叫喚の様子だった。
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第四十話

黎慈は開きっぱなしだった寮のドアを閉め、二階にある空き部屋へと向かうことにした。空き部屋の前についた。部屋の扉を開けようとするが、びくともしないくらいガッチリと閉められていた。「和寿、帰ったよ」黎慈がそう声掛けをすると、ゆっくりと扉が開く。 扉が開くと、衣百合が立っていた。衣百合は廊下を見渡して確認していた。「大丈夫…だよね?」「もちろん」「良かった…」衣百合は気が抜けたように椅子に寄りかかっていた。「大丈夫か?」黎慈が衣百合にそう問いかけると、今の状況に慌てて立ち上がった。「ああごめん…」「気にしてないよ」黎慈の声に安心したのか、表情が緩んだ。「もしなにかあったらって思ったら、とても気が気じゃなくてさ…」黎慈は照れくさそうに笑いかける。だが、黎慈の中にある感情が爆発しそうになっていた。しかし、今のこの状況で恋愛などにしている場合ではないことは明白だった。「ありがとね…でも大丈夫だよ」 胸の鼓動が飛び出しそうなほど高揚している。「これからは、心配させないようにするよ」「約束ね?」 二人は指切りをした。二人が感傷に浸っていると、ロビーのドアが開いた音がした。「おーい、二人ともいるんだろ?」聞こえてきた声は亮のだった。二人は触れ合っていた手を瞬時に離す。「上にいるよ~」衣百合が大きな声で亮を呼んだ。「部屋に戻ってるね」黎慈は衣百合にそう伝え、亮が来る前に自室に戻った。そうして思いに耽っていると、夕飯の時間なのに気がついた。黎慈は部屋着に着替え、一階へと向かう。一階に降りると、音で気がついていたのか衣百合がこっちを見ていた。少し気まずさもあるが、そのままキッチンへ向かう。衣百合はまだ夕飯の準備をしていた。「手伝えること、ある?」今までよりもぎこちなく衣百合に聞く。「もう終わるから大丈夫だよ」「あ、出来上がったのをダイニングに持って行ってくれる?」黎慈は言われた通り夕飯を持って行った。夕飯を置いてくるついでに寮を見てみたが、いつもいるはずの亮の姿が見当たらない。「あれ、亮はどこ行ったの?」ダイニングにいる衣百合に向かって声をかける。「ああ、まだ自室にいるってさ」なんとなく理由は察せる。これもあいつなりの配慮なのだろう。「二人ってことか…」 衣百合に聞こえないくらいの小声で独
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