Se connecter「まず、私に具体的な説明貰える?」黎慈と景佑は具体的な説明を衣百合にし始めた。「簡単な内容は黎慈くんから聞いてたけど、やっぱり不思議な話だね」「まあ今さら驚かないけど…」ここまで驚きの連続が続いている。三人とも今更驚かない。「ここからが本題だ」「どうやって注意を引くかだけど…」黎慈は頭を抱えた。これと言って特に思いつかない。ここまで安全にやってきているからこそ、この最後で危険な目に遭わせる人を増やしたくはない。思考を巡らせていると、衣百合が話し始めた。「夢の核がある場所は、現実のこの学校なんだよね?」衣百合がそう聞いてきた。二人は頷く。「なら、あの人はこの学校全体を自分の居城だと思ってるわけでしょ?」「だったら、この学校のあの人が考えている認知自体を変えれば良いんじゃないかな?」黎慈は衣百合の話に希望が見えた。「具体的にはどうするんだ?」景佑が衣百合にそう聞く。「学校全体で“そういう雰囲気“を出せば良いんじゃないかな?」なんだか曖昧な内容だ。ただ、可能性としては捨てきれない。「具体的な内容はあるのか?」黎慈がそう聞く。「ん~、例えばだけど、全校生徒の和寿の認知を変えるとか?」「あの人、表ではものすごく善人だから、そのギャップを利用すれば良いんじゃない?」「少なからず和寿に被害を受けた生徒は存在するわけだから、その人たちを使えば…」「…その作戦、俺ら以外の協力者にものすごくリスクがないか?」景佑が考え込んでいて下がっていた頭をあげ、衣百合に言った。「あ…」衣百合は気づいてなかったようだ。口がポカーンとなっている。「俺ら以外の協力者はやめよう、危険すぎる」黎慈がそう言うと、二人は了承したかのように頷く。「でも、協力者がいないとこの作戦は厳しいと思うよ?」衣百合がそう言う。確かに、一理ある考えだ。「…良い考えがある」景佑は何かが閃いたようだ。そう話していると、昼休みが終わるチャイムが聞こえてきた。「昼はここまでだな。放課後、またここに集合でいいか?」黎慈が言う。「問題ないよ」「大丈夫だ」二人はそう言い、その場は解散した。授業が午後に移り変わり、終わろうとしていた5時限目が終わった。「あ~ねむ」眠い目をなんとか起こしながら迎えた6時限目。教科は数学だった。いつもなら手厳しい
「回答は、出ましたか?」足音に気がついたようで、後ろ姿のまま話しかけてきた。気配を感じ取ったのだろう。その状態のまま、黎慈が結論を話し出していく。「もちろん。協力する」先ほどまでの憤りは、完全に消えていた。「覚悟は、よろしいですね?」「あぁ」その子がこちらに振り返った。「あまり時間がありません」「お二人は現実に戻り、現実でのアクションを起こしてください」「覚悟は決まっているのは重々承知ですが、アクションを起こした後は後戻りできません」「しっかりと、話し合ってください」「そして、ご存知の通り夢の主人は底知れない力を持っています」「こちらの世界に帰ってきた時、おそらく夢の主人の容態がすぐに変わるはずです」「起こすアクションにもよりますが、ほぼほぼ力を暴走させるはずです」二人は固唾を飲み込んだ。「すぐに対処・行動できるように作戦を考えてください」「猶予は三日間です」「三日間を過ぎると、そこのお方は記憶と共に消えますので、ご注意を」「この方は私が責任を持ってお守りします。安心して準備ください」黎慈と景佑は顔を見合わせた。そして頷き合った。「よし。行動開始だ」「ちゃんと間に合わせてよ!」走って屋敷の敷地を離れていくと、後ろから朱音の喚き声が聞こえる。「絶対に助ける!安心しろ!」黎慈は大声で返事をした。二人は屋敷を離れ、現実に帰還することにした。いつも通り、スマホのアラームで目が覚めた。いつもより体が気怠いのを感じながらも、体を起こす。とりあえず景佑にメッセージを飛ばすことにした。『今日、昼休みにいつもの教室で。衣百合にも話しとく』しかし、いつもよりも明らかに体調が悪い。やはり夢の世界に長く居たのが原因だろうか。風邪のように体が重たい。重力が体に重くのしかかる。なんとか着替えロビーまで向かう。キッチンには朝食を作っている衣百合がいた。それを横目に見ながら、ロビーにあるソファーに酔っ払いのように座り込む。「どうしたの?」キッチンにいる衣百合から声が飛んでくる。「まあ色々あってな」「あ、そういえばちょっと知っておいて欲しいことがあって…」黎慈はソファーから立ち上がり、衣百合がいるキッチンまで歩いて行った。「あんまり聞かれるとアレだから…」黎慈は衣百合に耳打ちするように、話そうとした。「ち
「にしても遅いな…」すでに5分以上経過していた。「ちょっと見てくる」黎慈は景佑の方へ歩いて行った。「どうするんだ、景佑」黎慈は景佑の方を軽く叩く。景佑は背を向けたまま、何も言わずに立ち尽くしていた。彼の肩越しに見える景色は、夢の世界特有の赤黒い光で覆われている。彼は少しだけため息をつき、ゆっくりと振り返った。「俺がここに踏み入るのは、もしかしたら早かったのかもな」「黎慈、お前は本当にそれでいいのか?」光がない目の景佑がこちらを見てくる。黎慈は景佑の問いかけに一瞬戸惑ったが、すぐに答える。「俺は覚悟を決めた。確かに、あの人は癪に触る人だ」「それでも、彼女を見捨てるわけにはいかない」「何が起こっているのか、この世界で何をしなければならないのか、全部を知りたいんだ」「景佑もそう言ってたじゃないか、原因を突き止めたいって」「そもそも夢について教えてくれたのはお前だったじゃないか」数秒、間が空く。「結局、我が身可愛さだったんだよ」「こうやって危機になったら、足が竦んで動けないんだ」下を見ると、確かに足が震えている。二人はその景佑の発言に黙り込む。少し間をあけて、景佑が顔を下に落としながら話し始める。「俺はお前みたいに強くない」黎慈はその発言に苛立ちが湧いてきた。「そんなの言い訳に過ぎないだろ!」黎慈の鋭い声が轟く。景佑はその言葉に反応せず、なおも俯いたままだった。その姿に黎慈の苛立ちはさらに募る。「逃げたままの自分で良いのかよ!」黎慈の声が大きく反響する。途端、景佑が黎慈の胸ぐらを掴み掛かる。「お前に俺の何が分かるんだよ!何も知らないくせに!」二人の顔が至近距離まで近づく。一触即発な雰囲気だ。目線でぶつかり合っている。「何も失ったことがないくせに、全てを見透かしたような目をして!」その景佑の発言に、黎慈は会ったときのことを思い出した。つい最近の事だったが、もうかなり昔のように思える。『その現象で、俺の友人は死んだ』最初にそう言っていた。明らかに景佑の地雷を踏んだことに気づいた。今までの発言が途端に申し訳なくなった。そう思い視線を下に落とす。「すまん…」この一言しか出てこなかった。どう謝ればいいのか分からない。景佑はしばらく黙ったままだったが、徐々にその手を離し、俯きながら一歩下が
「ここから出るには、先天的なブラムの適正が必要です」「言わば、潜在能力というものでしょうか」「潜在能力?」景佑が困惑の表情でその子に聞き返す。「はい。ブラムは、誰でも扱える力というわけではありません」「適性は生まれた時に決まっています」「お二人は、ブラムの適性が人と比べて著しく高いのです」「だからこそ救世主として抜擢されたのだと思います」「あの方の考えていることはよく分かりませんが…」「とにかく、今現在そちらの方がここから出る方法はありません」結論が出たようだ。ただ、まだ心の奥で引っ掛かりがある。「あの方っていうのは、一体?」黎慈が聞き返す。「お二人は会ったことがあるはずです」「夢と現実を繋ぐ、重要なあの方です」「私も詳しい名前は知らないし、詳細もお伝えするなと言われているのですが…」なんだか引っかかる言い方だ。「…分かった。本当に出られる方法はないのか?」「完全に無いという訳ではないです。ただ、かなりのリスクを孕んでいます」「私からは薦められません」嫌な予感がする。「今日一日で出来るものでもないですし、最悪の場合、お三方の現実での意識が戻らない可能性があります」三人は少し考え込んでいた。ただ今の状況を打破するために、できるかできないかは置いておいて聞いてみることにした。「…聞かせてくれないか?」黎慈がそう聞く。「承知致しました。少し長くなりますので、一度夢の核から出ましょう」四人は屋敷の敷地内から出た。「ここまでくれば安全なはずです」かなり離れた路地裏まで来た。道中は化け物に出会うこともなくすんなりとついた。「今から言う説明を聞いた上で、三人でもう一度お考えください」「まずブラムをお持ちの二人は、夢の核の主人に現実で接触してください」「つまり、一度現実に戻る必要があるってことか?」「左様です」「接触する必要性はあるのか?」景佑が質問する。「この世界は現実での認知、個々の意識が関わっています」「その認知を変えることで、夢の世界でも影響が出ます」「具体的な接触方法は今から説明します」そう言うと、建物の壁に向けて何かの力を使った。すぐに異変が出た。プロジェクターのように壁に映像が流れ始める。「この力もブラムなのか?」「少し違いますが、概ね同じ力です」「まず、認知を変えるために個
「大丈夫か!」すぐに合流し、駆け寄った。体を揺らし、起きるように促した。「おい!起きろ!」声でも起こしてみようとする。だが、いくら揺らしても起きる気配がない。口元に指を当てる。幸い息はしているようだった。彼女の方を見ると、その子のことを凝視していた。「この子、知ってる…」「実際に会ったわけじゃない、でもどこかで…」その瞬間、黎慈は彼女の肩を掴んでいた。「本当か?どこで?」「ちょっと、がっつきすぎ」彼女は黎慈をかなり強い力で肩から剥がしていた。「…悪い」「でも、本当にどこで会ったんだ?」気まずそうな黎慈の代わりに景佑が聞いた。「少し長くなるから、まずはその子を安全な場所に移動させよう」黎慈がその子を抱き抱え、噴水がある場所まで移動することにした。「よいしょっと」黎慈がその子を地面に置いたが、まだまだ起きる気配はなかった。「さっきの話、聞かせてくれ」彼女が地面に座った。「二人も座って」黎慈と景佑が座った。「あんまり覚えてないし、名前もわからないんだけど、覚えてるところまで話すね」女子生徒は話し始めた。「最初に記憶にあるのは夢の中でかな」黎慈がそのことについて疑問を持った。「夢ってどっちの意味?」「この世界じゃないよ。寝てる時に見る方」「ちょうど十日前かな」「内容は覚えてないんだけど、何かを言われたんだよね」覚えてないのか。まあ夢で見た内容を忘れることは良くあることだろう。そのまま話を聞くことにした。「そして昨日。またこの子が夢に出てきたんだよね」「その内容はしっかりと覚えてる」二人は固唾を飲んだ。「早くこの街から逃げろって」二人は妙に感じた。なんせ前に会った時は普通の女の子。同じ学校に通う一般女生徒だったはず。確かに少しおかしいと思う点はあった。だが、それを差し引いても一般女生徒のはずだ。「なんかおかしくね?」景佑が先に口にした。黎慈も薄々感じていた。「ああ、“何か“がおかしい」明らかに異変が起きている。そうこうしていると、横たわっていた子がモゾモゾと動き出した。起きたようで、黎慈と目があった。「ここは?」「夢の世界だ」そう黎慈が答える。「左様…ですか…」何だか前より雰囲気が違って見えた。「どうやら間違えたようですね」三人は困惑していた。「間違えたっ
梯子を登り、先程まで居た通路まで出た。相変わらず静寂に包まれていた。「…っで…君たちは…何なわけ?」息切れしているようだったが、声は明らかに苛立っている。「難しい質問だな」黎慈は口を窄めた。どうせ自分たちが言っていることは信じてもらえない。言っても無駄だと黎慈は考えた。そのまま黙って進むことにした。「ちょ、答えてよ」先を急ぐ黎慈の服の裾を乱暴に掴んだ。「はあ…」うるさい口を閉じるために、話すことにした。「ここが夢の世界って言ったら信じるか?」「は?何言ってんの?頭おかしいんじゃないの?」そりゃあそうだよな。まぁ、当然と言えば当然の反応だ。しかし、すごく癪にさわる。「やっぱいいや」先を急ぐことにした。「ちょっと!信じるからって言ったじゃん!無視すんの?」また黎慈の服の袖を強く引っ張ってきた。仕方なく自分たちの目的と、何者なのかを話し始めた。「とにかくそう言うことだから、絶対に離れるなよ」黎慈と景佑は出口に向かって歩き始めた。少女は黎慈の裾を掴んだまま、後ろをガッチリとついてくる。時々、後ろから大きめのため息が聞こえる。明らかに聞こえるように言っているだろう。数分歩き、やっと出口の扉が見えた。慎重に扉を開け、登ってきた階段を上がった。外に出る扉まで着き、扉を開けた。幸い、外には何もいなかった。「ふう~、やっと外か」「狭くて息苦しかったわ」その子は地面にドカッと座った。相当疲れていたのだろうが、座り方も投げやりだ。黎慈と景佑も数十分ぶりの外の風を感じながら、軽く息をついた。少しの間、誰も口を開かなかったが、その静けさが逆に不安を増幅させていた。「これで大丈夫なのか…?」景佑がぽつりと呟いた。「外には何もいない、今のところはな」黎慈はそう言いながらも、油断することなく周囲を見渡す。「ねえ本当に夢なの?信じらんないんだけど」「さっき信じるって言っただろ」「実感がまだないって言うか…」「ていうかあんたら本当に信じてるの?頭大丈夫?」一挙手一投足全てが黎慈をイライラさせる。『置いてってやろうか、こいつ』そう思うほどに。少女はもぞもぞと地面に座ったままの体勢を変える。「実際に四肢は現実と同じように動かせる訳だし…」女子生徒は手を擦り合わせるなどして、感覚を確かめていた。「この世
黎慈(れいじ)は夢の中で覚醒した力の余韻が、まだ体に残っている気がした。体が気怠い気がするが、無理やり頭と体を起こす。昨日の出来事を共有するためにも、いつもより早く寮を出た。衣百合(いゆり)も亮(りょう)もまだ眠っている早朝だった。学校に着くと、教室も廊下も無人だった。静まり返った朝の廊下を歩きながら、黎慈(れいじ)は昨夜の混沌とした夢の世界を思い出していた。体に流れ込んだ熱い奔流、あの声、そして化け物を殴り飛ばした時の衝撃。
時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」 衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」「今は
学生寮に戻ったのは、午後4時を少し回った頃だった。部屋に入るなりベッドに腰を下ろし、鞄を床へと放り投げる。空き教室での会話が、まだ耳を占領している共通夢。夢の中で落ち合う。にわかには信じがたい話だ。普通だったら、興味も湧かなかっただろう。しかし、夜になるまで何を考えても空回りするだろう。一度深く息を吐き、スマホで夕食前の時間にアラームを設定した。まだ時間はある。余計な考えが脳を占領するよりも、一度寝てリセットした方が良いと考えた。部屋の電気を消し、制服のままベッドの上で目を閉じる。意識はすぐに沈んでいった。また、妙な違和感を感じた。目をゆっくりと開ける。──青白い
「そこまでして知りたいんだな。この町について」男子生徒の声は、静まり返った空き教室の中でやけに重く響いた。放課後の校舎は人気が少なく、窓の外から聞こえてくるのは、遠くのグラウンドで続く部活動の掛け声だけだ。古びた時計の秒針が、やけに大きな音を立てて時を刻んでいる。「当たり前だ」迷いなくそう答えた。「この街に一生住む可能性もあるんだ」「少しでも、自分の中の疑問は晴らしておきたい」できるだけ平静を装ってそう答えた。しかし、自分でも感じるほど強い興味に動かされている。無理もないのだろう。妙なことの連続で、「……そっか。分かった」彼は一度目を伏せ、小さく息を吐いた。その仕草







