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第三十五話

Auteur: 百瀬 三月
last update Date de publication: 2026-07-10 21:39:24

「にしても遅いな…」

すでに5分以上経過していた。

「ちょっと見てくる」

黎慈は景佑の方へ歩いて行った。

「どうするんだ、景佑」

黎慈は景佑の方を軽く叩く。

景佑は背を向けたまま、何も言わずに立ち尽くしていた。

彼の肩越しに見える景色は、夢の世界特有の赤黒い光で覆われている。

彼は少しだけため息をつき、ゆっくりと振り返った。

「俺がここに踏み入るのは、もしかしたら早かったのかもな」

「黎慈、お前は本当にそれでいいのか?」

光がない目の景佑がこちらを見てくる。

黎慈は景佑の問いかけに一瞬戸惑ったが、すぐに答える。

「俺は覚悟を決めた。確かに、あの人は癪に触る人だ」

「それでも、彼女を見捨てるわけにはいかない」

「何が起こっているのか、この世界で何をしなければならないのか、全部を知りたいんだ」

「景佑もそう言ってたじゃないか、原因を突き止めたいって」

「そもそも夢について教えてくれたのはお前だったじゃないか」

数秒、間が空く。

「結局、我が身可愛さだったんだよ」

「こうやって危機になったら、足が竦んで動けないんだ」

下を見ると、確かに足が震えている。

二人はその景佑の発言に黙り込む。

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