LOGIN主人公 高校二年生の黎慈は東京から辺境の冨永山にある高校に越してきた。 東京とは正反対の長閑な町での暮らしに心を踊らせていた黎慈だったが、冨永山で起こる“ふたつの世界“を股にかけた事件に巻き込まれていく。 現実ともう一つの世界で起こる、偶然とは到底考えられない現象の数々。 謎の少女、謎の女性。 この世界の真理とは、果たして…
View More「では、とりあえず夢の核まで向かいましょう」四人は夢の核に向かって歩き出して行った。「とりあえず着いたが…」ただならぬ雰囲気が出ている。空気も先ほどとは打って変わって、どこか甘ったるくなっている。頭がクラクラするくらいだ。屋敷の外周にあった城壁も、ほぼ半壊で無くなっている。「黎慈さん。ここからは一人行動でお願いします」「ああ、分かった」黎慈は深く深呼吸をした。そして、景佑の方を見て一言。「生きてたら、また会おう」「縁起でもないな」二人は冗談混じりで笑った。「朱音を現実に返したら、俺もすぐに向かう。それまでくたばるなよ?」「フッ、どうかな…」「待ってるぞ」黎慈はそう言うと、夢の核の中に向かって行った。半壊していた城壁の内部に入ると、中は化け物が無数にいた。ただ、襲ってくる様子はない。まるで感情を失い、無気力になったような状態で彷徨っている。黎慈はそれを横目に、中に入れそうな場所を探し始めた。屋敷の外側を色々と見ていると、壁が豪快に破壊されている場所があった。「ここからなら…」黎慈はその穴から、屋敷の内部に入って行った。幸い、穴の先は小さな部屋になっていた。ただ、誰かの話し声が聞こえる。「こんな事態は初めてだぞ!主人はなんと?」「…まだ情報が回ってこない。しばらくは待機だろうな…」二人が話している様子だ。壁越しから聞こえてくる。「あーもう!むしゃくしゃする!ちょっと行ってくるわ!」「ば、ばか!待て!」二人は動揺しているように感じた。『今しかない!』黎慈は部屋の扉を最速で開けた。扉を開けると、案の定兵士のような格好をした化け物がいた。「だ、誰だおま…」声を出させる間もなく、一人を倒す。もう一人も、連鎖反応の如く始末する。あまりに早い身動きに、自分でも困惑していた。「いつもより、体が軽いな…」手を何度か握りしめる。ブラムを使っても、全く疲れない。『これも、不安定が故の影響なのか?』とにかく、黎慈は先を急ぐ事にした。黎慈と別れた頃。「それで、これから向かうところなのですが…」黎慈が夢の核に向かったのを確認し、夢の住人が話し始める。「景佑さん、前に夢の主人である和寿の記憶を見た場所って、覚えてますか?」現実だと、あの大きな公園だ。ここからそう遠くないことも覚えていた。「もち
その後は特に何もなく、夢の中に向かうことにした。「どうやらやってくれたようですね」聞き覚えのある声が聞こえてきた。目を開けると、いつもの少女が座っていた。「あなた方のおかげで、今はかなり不安定な状態です」「すでに相方さんはいらっしゃいます」「夢の住人も迷い込んだ人も一緒にいるようです」「そこまでお送りしますか?」「頼んだ」少女が立ち上がり、歩いて行った。黎慈はそれについてくように歩いていく。「そう言えば、お前の夢の住人ってやつなのか?」黎慈が歩きながら少女に聞く。少女が立ち止まる。「ん~、少し違うかも知れません」少女が歩きながら説明を始める。「認識の違い、ですかね」黎慈はよく分からなかった。「現実の人間と、夢の住人と言う二つの括りで決めるなら、そこの違いはあります」「ですが、ブラムの適性などは夢の住人の方が圧倒的に上です」「夢の世界の適性も高いと言えます」「最初から夢の住人か、そうでないかの違いです」少女は黎慈の方を見た。まだ分からないという顔をしていた。「…まあ、少し難しい話だったかも知れません」話しながら歩いていると、光っている扉が見えた。「ここです」黎慈が入ろうとすると、少女が呼び止めた。「一つだけご忠告を」「不安定な状態で夢の世界に入ると、安定化するまで出られなくなります」「不安定な状態で戦闘不能となると、最悪の場合死ぬ可能性もございます」黎慈は覚悟を決め、固唾を飲み込む。「くれぐれもご注意ください」「あぁ」黎慈は少女の言うことを了承し、扉を開けて中に入った。「ご武運を」そう言葉が聞こえると、視界がパッと明るくなった。意識がどんどん薄れていった。「よっ、遅かったな」目を開けると、そこには景佑と夢の住人がいた。二人はいたが、もう一人いるはず。周りを見渡しても、朱音が見当たらない。「朱音はどこに?」「この中にいるよ」景佑が指を刺した先は、なんの変哲もない住宅街に佇む一軒の家だった。「安全のために、夢の核からはかなり遠い場所に隔離しました」「ここなら、化け物に襲われる心配もないかと思いまして」確かに、化け物たちの気配が全くしない。夢の中のはずだが、妙に現実味が強い場所だ。「呼んできます」夢の住人が家の中に入って行った。すぐに家の中からは朱音と夢の住人が出てきた。
黎慈は開きっぱなしだった寮のドアを閉め、二階にある空き部屋へと向かうことにした。空き部屋の前についた。部屋の扉を開けようとするが、びくともしないくらいガッチリと閉められていた。「和寿、帰ったよ」黎慈がそう声掛けをすると、ゆっくりと扉が開く。 扉が開くと、衣百合が立っていた。衣百合は廊下を見渡して確認していた。「大丈夫…だよね?」「もちろん」「良かった…」衣百合は気が抜けたように椅子に寄りかかっていた。「大丈夫か?」黎慈が衣百合にそう問いかけると、今の状況に慌てて立ち上がった。「ああごめん…」「気にしてないよ」黎慈の声に安心したのか、表情が緩んだ。「もしなにかあったらって思ったら、とても気が気じゃなくてさ…」黎慈は照れくさそうに笑いかける。だが、黎慈の中にある感情が爆発しそうになっていた。しかし、今のこの状況で恋愛などにしている場合ではないことは明白だった。「ありがとね…でも大丈夫だよ」 胸の鼓動が飛び出しそうなほど高揚している。「これからは、心配させないようにするよ」「約束ね?」 二人は指切りをした。二人が感傷に浸っていると、ロビーのドアが開いた音がした。「おーい、二人ともいるんだろ?」聞こえてきた声は亮のだった。二人は触れ合っていた手を瞬時に離す。「上にいるよ~」衣百合が大きな声で亮を呼んだ。「部屋に戻ってるね」黎慈は衣百合にそう伝え、亮が来る前に自室に戻った。そうして思いに耽っていると、夕飯の時間なのに気がついた。黎慈は部屋着に着替え、一階へと向かう。一階に降りると、音で気がついていたのか衣百合がこっちを見ていた。少し気まずさもあるが、そのままキッチンへ向かう。衣百合はまだ夕飯の準備をしていた。「手伝えること、ある?」今までよりもぎこちなく衣百合に聞く。「もう終わるから大丈夫だよ」「あ、出来上がったのをダイニングに持って行ってくれる?」黎慈は言われた通り夕飯を持って行った。夕飯を置いてくるついでに寮を見てみたが、いつもいるはずの亮の姿が見当たらない。「あれ、亮はどこ行ったの?」ダイニングにいる衣百合に向かって声をかける。「ああ、まだ自室にいるってさ」なんとなく理由は察せる。これもあいつなりの配慮なのだろう。「二人ってことか…」 衣百合に聞こえないくらいの小声で独
そして次の日になった。黎慈は制服に着替え、ロビーに向かった。ロビーにはすでに衣百合がいた。そのままソファーに座った。そうしていると、黎慈のもとに衣百合が朝食を運んできた。「今日はよろしくね?」衣百合はそう言った。「まあ、俺ができることはないけど…」「祈ってくれてるだけで充分だよ」衣百合は優しく微笑んだ。「じゃあ、全力で祈ってるよ」昼休みになった。黎慈と景佑は空き教室に向かった。衣百合はまだ来ていなかった。「黎慈は色々と聞いてるんだよな?」「まあ、昨日聞いたけど…」黎慈は昨日のことを言うのか渋った。だが、景佑の為にも言うことにした。「かなり緊張してそうだったぞ」立ちながら話す黎慈に、景佑が椅子を用意しながら話す。「そりゃあ、そんだけのことをするんだからな…」「逆に緊張感持ってもらわないとな」冗談混じりで景佑が言う。そんなことを話していると、衣百合が教室にやってきた。「じゃあ、早速話していこうか」衣百合がスマホの画面を見せ、詳細を話し始めた。「なるほどねえ…」「まあ良いんじゃない?学内の雰囲気も一気に変わるだろうし」景佑は曖昧な感じを出しつつも、了承していた。「じゃあこれで行こうか」黎慈が最後にまとめるように話し始めた。「景佑の行動はどうする?」黎慈がそう言うと、衣百合が『うーん』と唸った。「私とグルだとバレたらめんどくさいから、そのまま帰って大丈夫だよ」「帰宅後は一旦黎慈に連絡してもらう感じで良いかな?」「うん。了解」そのまま三人は解散した。6時限目が終わった。正念場がやってくる。『頼む』黎慈は心の中で祈った。「キーンコーンカーンコーン」放送のチャイムが鳴る。どうやら始まったようだ。「全校生徒、並びに職員にお知らせです」周りにいる生徒たちは唖然としていた。「二年主任の夏樹 和寿に告ぐ」「お前は生徒たちに傍若無人の限りをつくし、生徒に対して事実上の殺人を犯した!」「学校に来なくなっている生徒がいるのはこれが原因である」「これは紛れもない事実であり、お前の犯した罪は絶対に」「これは我々からの宣戦布告だ!」「生徒諸君、教師諸君も忘れるでない」黎慈は放送が終わるとすぐに教室を出て行った。廊下はほぼパニック状態だった。生徒たちは『なにあれ!?』など阿鼻叫喚の様子だった。
黎慈(れいじ)は夢の中で覚醒した力の余韻が、まだ体に残っている気がした。体が気怠い気がするが、無理やり頭と体を起こす。昨日の出来事を共有するためにも、いつもより早く寮を出た。衣百合(いゆり)も亮(りょう)もまだ眠っている早朝だった。学校に着くと、教室も廊下も無人だった。静まり返った朝の廊下を歩きながら、黎慈(れいじ)は昨夜の混沌とした夢の世界を思い出していた。体に流れ込んだ熱い奔流、あの声、そして化け物を殴り飛ばした時の衝撃。
時間は7時半、衣百合(いゆり)が食器を洗いながら、ロビーの椅子に座っている黎慈(れいじ)に話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんは、今日の学校はどうだった?」「まあ、楽しそうな雰囲気でしたよ。一年間、楽しみです」「なら良かった。私、こう見えても生徒会の人間だからさ。そう思ってもらえて嬉しいよ」 衣百合(いゆり)は笑顔で黎慈(れいじ)を見ており、また衣百合(いゆり)が話しかけてきた。「黎慈(れいじ)くんはさ、部活動とか入る予定はある?」「今は
学生寮に戻ったのは、午後4時を少し回った頃だった。部屋に入るなりベッドに腰を下ろし、鞄を床へと放り投げる。空き教室での会話が、まだ耳を占領している共通夢。夢の中で落ち合う。にわかには信じがたい話だ。普通だったら、興味も湧かなかっただろう。しかし、夜になるまで何を考えても空回りするだろう。一度深く息を吐き、スマホで夕食前の時間にアラームを設定した。まだ時間はある。余計な考えが脳を占領するよりも、一度寝てリセットした方が良いと考えた。部屋の電気を消し、制服のままベッドの上で目を閉じる。意識はすぐに沈んでいった。また、妙な違和感を感じた。目をゆっくりと開ける。──青白い
「そこまでして知りたいんだな。この町について」男子生徒の声は、静まり返った空き教室の中でやけに重く響いた。放課後の校舎は人気が少なく、窓の外から聞こえてくるのは、遠くのグラウンドで続く部活動の掛け声だけだ。古びた時計の秒針が、やけに大きな音を立てて時を刻んでいる。「当たり前だ」迷いなくそう答えた。「この街に一生住む可能性もあるんだ」「少しでも、自分の中の疑問は晴らしておきたい」できるだけ平静を装ってそう答えた。しかし、自分でも感じるほど強い興味に動かされている。無理もないのだろう。妙なことの連続で、「……そっか。分かった」彼は一度目を伏せ、小さく息を吐いた。その仕草