紗耶は満足そうに笑った。「私の意見を聞いてくれて、よかったね」宗一郎を助けたことをきっかけに、二人の距離は以前よりずっと近くなっている。蓮も、紗耶の言うことなら無下にはしない。征司はスマホをポケットにしまい、蓮に目を向けた。「事業計画書も見ずに、リスクや実現性を検討しなくていいのか?」それらは投資を決める前に、最低限確認しておくべきことだ。蓮は気にした様子もなく答えた。「もともとは澪から詳しい話を聞くつもりだったけど、あの態度だろ?そこまでしてアカリ製薬に金を出す必要もないし、紗耶も実現は難しいって言ってる。もう調べなくてもいいと思うけど」蓮は、このプロジェクトが成功するとは思っていない。もし本当に成功すれば、業界を一変させる特許技術となり、アカリ製薬の企業価値は何兆円規模にまで跳ね上がるだろう。だが、今のアカリ製薬にそんな実力があるとは到底思えない。出資するなら、いずれ紗耶が開発するAI問診ロボットのほうが、まだ期待できそうだ。征司はそれ以上何も言わず、ただ一つだけ事実を告げた。「アカリ製薬は、一回目の資金調達だけで四十億円に達してる。出資者もかなり多い」まったく予想外の数字に、蓮だけでなく紗耶も驚いた。それほど集まっているとは、二人とも予想していなかった。征司はメッセージに返信しながら続けた。「フェイが開発を率いるという噂が出回ってる。多くの投資家は、その名に惹かれて集まっているんだ」蓮の顔から笑みが消えた。もしかすると、自分の判断が間違っているのだろうか。紗耶の目にも驚きが走った。そしてふと、澪が今アカリ製薬にいることを思い出した。知之はまた澪をこのプロジェクトにねじ込み、何もしていないのに実績だけを得ようとしているのだろうか。その頃、澪が臨床試験センターに着くと、ドキュメンタリー番組のスタッフがカメラを設置しているところだった。撮影はあと三日続く予定だが、幸いにも彼らの通常業務に支障はない。固定カメラや遠隔撮影が中心で、スタッフの存在を忘れてしまうほどだ。澪は臨床試験センターで数時間を過ごした。その間に賢一から電話があり、出張先から戻ったと知らされた。「森宮社長から連絡があってな。近いうちに一度会いたいと言ってきている」澪には、征司の目的がすぐに分かっ
اقرأ المزيد