騒ぎは、結局うやむやなまま幕を閉じた。蓮もさすがに驚いた様子で言った。「榊社長、どうかしてるんじゃないか?あれだけ大きなチームで、経験豊富な研究者も大勢いるのに、いちばん重要なポジションに澪の名前を載せるなんて。澪にそこまでの価値があるのか?」彰人は彼を見やった。「澪にそれだけの実力があるってことじゃないのか?」紗耶は大型スクリーンに映る澪の名前に目を向け、険しい顔をした。その目には、隠しきれない悔しさが浮かんでいる。「あり得ないわ」そう言って、紗耶は深く息を吸った。「この前のこと忘れたの?アカリ製薬は彼女を臨床試験から外したんじゃない?それに、征司がアカリ製薬に巨額の投資をした。澪が当事者だからこそ、アカリ製薬は資金を調達できたんだから、特別扱いされるのは当然よ。どうせ金で買ったものなんだから、真に受けるようなものじゃないわ」そもそも病院での律樹の件で、澪はアカリ製薬から臨床試験の担当を外されかけていた。澪が知之をそそのかして、征司にあの大金を出させたんだろう。だから知之に気に入られて、いちばん目立つところに名前を載せてもらっているだけだ。蓮もそれが最も可能性が高いと考え、首を振りながら言った。「こんなやり方が、いつまで通用するんだろうな。今回たまたま評価されたからって、次も同じようにいくとは限らないだろ」紗耶は声を出さずに笑った。今回、澪はアカリ製薬とK大の多くの人間が積み重ねてきた努力を横取りしたようなものだ。今後、必ずや反感を買って見放されることになるだろう。いつまでも、いい気になっていられるはずがない。「征司……」頭ではそう理解していても、胸の奥では妬けたような焦燥感と不満が渦巻いている。紗耶はすがるような目で征司を振り返った。征司はゆっくりと立ち上がると、何か考え込んでいる彰人へ視線を向けた。「藤堂先生は、澪にずいぶん興味を持ってるようだな」澪の名が出た途端、紗耶は唇をぎゅっと噛み締め、さらに機嫌を損ねた。彰人も眉をひそめた。たしかに、そうかもしれない。祖母があそこまで柔らかな表情を見せる相手など、これまで見たことがなかった。—会場の外で何が起きているかなど、澪にもだいたい想像がついた。会場を出ると、ちょうど千鶴子が車に乗り込もうとしているところだった。澪
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