千鶴子は思わず澪を見た。その目にこもる真剣な思いにほっとして、澪の手をそっと握った。「そうね。きっといつか帰ってくるわ。あの子が生まれたとき、無事に育つようにと、最高級の翡翠でできたお守りを身につけてあげたの。きっと今も、あの子を守ってくれているはずよ」澪は幼い頃から、骨董品や玉石の細工物に詳しい。千鶴子が言うような翡翠のお守りも、実家の骨董店で何種類も見たことがある。「そのお守りって、どんなものなんですか?」と紗耶が尋ねた。聞こえなかったのか、千鶴子はため息をついて席を立った。「みんなはゆっくりしてね」紗耶の表情がわずかにこわばった。まさか、自分の声だけ聞こえなかったのだろうか。千鶴子は彰人に手招きした。「ちょっと来なさい」彰人に逆らえるはずもなく、後について部屋を出ると、困ったように口を開いた。「ばあちゃん、紗耶は一応、征司が連れてきた客なんだからさ。あんな態度じゃ、征司の顔が立たないだろ」千鶴子が誰かの夫や恋人に手を出すような女を毛嫌いしていることは、彰人にも分かっている。千鶴子は鼻で笑った。「征司が連れてきたから、追い出さずにいるんじゃない。あなたに言われるまでもない」彰人は千鶴子の気性はよく知っている。美佐子でさえ、千鶴子にはやり込められたことがある。紗耶の話を続ける気はないらしく、千鶴子は両手を後ろで組んで言った。「アカリ製薬が今進めているプロジェクト、出資してるの?」「いや。業界じゃ、成功する見込みは薄いって言われてるし」千鶴子は眉をひそめ、彼の頭をぴしゃりと叩いた。「目先のことしか見てないんだから!和漢医学研究センターからも応援が来ているのよ。まだ甘く見てるの?国の政策にも関わる話なんだから、もっとよく調べなさい。自分の目でちゃんと見極めるのよ」自分の孫だから、教えるべきことは教えておく。千鶴子はそう思っている。祖母がそこまで高く評価しているとは思わず、彰人は驚いた。アカリ製薬には、本当に大物がいるのだろうか。千鶴子はそれ以上語らず、軽く手を振ると、また客たちと話し始めた。彰人は入り口から室内にいる澪に目を向けた。そこへ秘書が近づいてきた。「社長、穂積社長がまもなく到着します」彰人は不敵な笑みを浮かべ、目を細めた。「澪を呼んできて」澪が出てくると、
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