幼い玲衣がどうして気づいたのか、澪には分からない。自分では感情を隠すのは得意なほうだと思っていた。それなのに、玲衣には見抜かれてしまった。今すぐ泣き出してしまうほど、悲しみに打ちのめされているわけではない。ただ、胸の奥に押し込めてきたものが多すぎて、もうどうやって吐き出せばいいのか分からなくなった。「そんなことないよ。どうして?」澪は手のひらを軽く握り、いつもよりやわらかく笑った。「玲衣、もうお風呂上がった?」玲衣はこくんとうなずき、小さな頬をスマホの画面にすり寄せた。まるで画面越しに澪をなぐさめようとしているみたいだ。「ママ、悲しい顔しないで。今、話そらしたでしょ。玲衣、ちゃんと分かってるよ。でもいいの。玲衣がママのところに帰ったら、ママのこと、いっぱい幸せにしてあげるから」澪は慌ててスマホを胸元に伏せ、玲衣に見られないよう顔を上げて、こみ上げるものを必死にこらえようとしたが、目元はすぐに熱くなった。このところ、本当にいろいろなことがあった。自分でも強く振る舞えているつもりでいたが、実際はずっと耐えているだけだ。耐える以外に、何もできない。吐き出せないものを抱えたままなら、何もなかった顔でやり過ごすしかない。そうしていなければ、自分を保てない。澪は乱暴に目元を拭い、もう一度笑った。「うん。玲衣、もう少しだけ待ってて。ママ、すぐに玲衣のことを隠さなくていいようにするから」――昨夜遅く、道端に置き去りにされ、三十分以上もタクシーを待つ羽目になった。そのせいか、翌朝にはすっかり風邪を引いた。ただ、澪は昔から薬が苦手だ。幼い頃、先生に生薬の見分け方や味まで無理に叩き込まれたせいで、薬に対して生理的な拒否感がある。数日我慢すればそのうち治るだろうと、澪は薬に頼らずやり過ごすことにした。年内は、アカリ製薬で新しいプロジェクトの方向性を詰めることになっている。年明けから、澪は和漢医学を広めるための計画を本格的に進めていくつもりだ。近年、和漢医学はさまざまな問題を抱え、かつてのような勢いを失いつつある。生薬の品質問題、医師の力量のばらつき、症状を正確に見極めないままの処方、さらには和漢医学を名乗った詐欺まがいの行為まで存在している。そのせいで、世間の評価は極端に分かれてしま
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