「紗耶さんと征司さんって、並んでるだけで絵になるよね。完璧すぎる組み合わせじゃない?」「征司さんがわざわざ迎えに来るなんて、紗耶さん相当大事にされてるよね。羨ましいな」人々の声は嫌でも耳に入ってきた。澪は聞き流そうとしたが、どうしても気になってしまう。七年も夫婦でいたのに、征司が自分を迎えに来たことなど一度もなかった。人前で並んで歩いたことも、自分のことを妻として紹介したこともない。考えてみれば、自分はずっと、名ばかりの森宮夫人という立場にいた。征司は当たり前のように紗耶に優しくしている。迎えに来ることも、人前で隣に立つことも、周囲に誤解されても訂正しないことも。自分が七年かけて一度も手に入れられなかったものを、紗耶はこんなにも簡単に受け取っていた。「森宮夫人」という誤解を、紗耶はあえて否定しなかった。澪にだけちらりと視線を向けると、それから何事もなかったようにこちらへ歩いてくる征司に微笑みかけた。征司は紗耶の柔らかな笑みを見て、応えるようにほんの少し口元を緩めた。それを見た若い女性が、思わず頬を押さえて声を上げた。「待って、これ本物じゃん……!」それを聞いて、紗耶の笑みがさらに深くなる。彼女は自分から征司の腕に手を添え、堂々と記者たちに告げた。「すみません。これから食事に行くので、取材はこのあたりでお願いします」征司にも、周囲が紗耶を「森宮夫人」と呼んでいるのは聞こえていたはずだ。それでも彼は、何も言わなかった。誤解を解くつもりなど、最初からないようだ。人波が押し寄せた途端、征司は迷わず紗耶を自分のそばへ寄せた。その仕草はあまりにも自然で、守り慣れているようにさえ見えた。彼は周囲を見渡し、低い声で口を開いた。「皆さん、少し下がってください。人にぶつからないように」低く落ち着いた声だが、その場の空気を一瞬で静める力があった。その光景を前に、澪は紗耶があれほど堂々としていられる理由を思い知らされた。あれは、絶対に守られると分かっている人間の余裕だ。たとえ澪がこの場で真実を暴いたとしても、紗耶は少しも怯えないだろう。たとえ何が起きても、征司は自分を責める側には回らないと彼女は分かっているからだ。むしろ今の澪のほうが、二人のあいだに割り込んだ邪魔者のように見
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