澪は数秒間、完全に思考が停止した。まさか、美佐子が自分に再婚相手を探そうとしているのが本気だったとは思わなかった。しかも、もうこんなに早く段取りまで進めていたなんて。「おばあ様、私は今、本当にそういう気持ちはないんです」澪はこめかみを揉んだ。自分のためを思ってくれているのは分かる。だが、その熱意があまりにも強すぎて、正直ついていけなかった。「でも、もうお相手との約束はしてあるのよ。まずはお友達として会うだけでいいじゃない。人付き合いの幅が広がるのは良いことだもの。その先のことはまた別のお話。ね?」美佐子は根気よく説得する。「今夜八時よ。ちゃんとおしゃれして行きなさいね」再び断られるのを恐れたのか、美佐子はそう言い残すと、あっという間に通話を切ってしまった。「……」澪は何とも言えない表情でスマホの画面を見つめた。征司の代わりに自分を気遣ってくれているのだろうが、美佐子のやり方はあまりにも豪快すぎる。時刻を見ると、すでに六時半だった。少し考えた末、澪は行くだけ行ってみることにした。少なくとも事情はきちんと説明しておかなければ、相手にも周囲にも迷惑がかかる。……美佐子が指定した場所は、K市でも屈指の豪華さを誇る「オービットクラブ」。まるでM市のきらびやかな娯楽施設を思わせる場所だった。電子チケットに記載されていた階は五階。食事もショー鑑賞も楽しめる完全個室が用意されている。澪は部屋番号を確認し、扉の前でもう一度確かめてからノックした。だが、中から返事はない。中にいる人が聞こえなかったのか、それともまだ相手が来ていないのか。澪は特に気にせず、そっと扉を少し開けた。そして、室内に視線を向けた瞬間――その動きが止まった。部屋にはすでに人がいた。大きな窓の前に立っていたのは征司だった。片手をポケットに入れたまま立つその姿は、相変わらず端正で隙がない。向かいに立つ紗耶は背伸びをして彼のネクタイを整えていた。視線が絡み合う。そして次の瞬間、紗耶はゆっくりと唇を近づけ――二人の間に関係があることは、すでに知っていた。それでも、実際にキスしようとしている場面を目の当たりにした瞬間、澪の頭は真っ白になった。どう反応すればいいのか分からない。七年間の結婚生活。そこに
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