王都ブリュード。 玉座の間。 ロンデル公国から戻ったジギスムント王は 地図の上に赤い旗を一本、打ち込んだ。「――ロンデル公国、陥落だ」 満足げにそう告げ、ゆっくりと背筋を伸ばす。 側近たちは一斉に頭を垂れた。「お見事です、陛下。 ノリス様も初戦の大戦果、今後も期待したいものですな」 その言葉に、ジギスムントは小さく頷いた。 玉座の脇では、ノリスがワイングラスを傾けている。 艶やかな笑み――しかし、どこか張りがない。 その違和感に、王は気づいた。「どうした、ノリス。勝利の酒だぞ」 彼女はゆっくりと立ち上がる。「……おめでとう、ジギスムント」 祝福の言葉は丁寧だったが、声音は冷えていた。「ただ、少しね。力が弱くなった気がするの」 ジギスムントの眉が、わずかに動く。「弱くなった?」「ええ。昨日話した通り、城との接続が切れた。 私の魔力は、あの城を基点に循環していたから」 王は地図から視線を離し、ノリスを見つめた。 確かに―― ロンデル攻略戦終盤での彼女の力は、 かつてほど圧倒的ではなかった。 裏でこそこそノリスが魔王城に出入りしていたのは把握している。 それでも城を奪われたのか――。「……あの役立たずに?」 低く呟く。 顔も思い出せない小娘。 ただ、処分済みの失敗作が、ここまで影響するとは思っていなかった。 ノリスの戦力低下は、彼の独裁計画にとって看過できない問題だ。 だがジギスムントは、動揺を表に出さなかった。「問題ない」 淡々と告げる。「次はサンドランドだ。 軍事力は低いが、資源が豊富」 彼は地図の別の地点を指す。「今回は力押しではない――婚姻による併合を行う。 サンドランド王女を正妃に迎え、内部から掌握する」 ノリスの瞳が、細くなる。「……婚姻?」「そうだ」 ジギスムントは微笑んだ。 冷たく、計算だけで作られた笑み。「もう、君は側室でいいだろう。 今後も力は借りるが、正妻には不要だ」 一瞬、空気が凍る。「負けた魔王には過ぎた扱いだが――。 ロンデル攻略には役立ったからな」 沈黙。 次の瞬間―― ノリスの表情が、ゆっくりと歪んだ。 怒りでも悲しみでもない。 もっと深い、冷えた感情。「……そ
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