九月の第一週、グループ横断データ統合基盤が完成した。 最後のデータ移行テストをパスしたのは、木曜日の夕方だった。 「松本さん、最終テスト結果は?」 「全十七社、エラーゼロ。ダッシュボードのレスポンスも基準内。完了です」 澪はモニターを見た。 十七社のデータが、ひとつのダッシュボードにリアルタイムで映っている。 在庫、売上、人員、品質、物流。 グループ全体の今を、一画面で見られる。 「……完成した」 声に出すと、チームのメンバーたちが一斉に顔を上げた。 「本当に?」 と田島が言った。 「本当に。最終テストパスした」 しばらく、誰も何も言わなかった。 それから松本が、 「やった……」 と小さく言い、大野が椅子から立ち上がり、小山が、 「信じられない、本当に終わったのか」 と笑った。 田島が拍手し、それが広がっていった。 澪は拍手の輪の中に立ちながら、喉が詰まった。 泣くのを堪えた。 でも、目が熱かった。 翌日の役員報告では、北野新社長が、 「素晴らしい成果です」 と言った。 「このダッシュボードで、グループ全体の経営判断が変わります。今まで月次でしか見られなかった数字が、リアルタイムで見える。これは革命です」 室員たちへの言葉があり、最後に澪への言葉があった。 「白石さん、プロジェクトリードとして、本当にお疲れ様でした。入社一年未満でここまでやりきる人材は、なかなかいません。今後も期待しています」 「ありがとうございます。チームのおかげです」 「いや、チームをまとめるのがリーダーの仕事です。あなたはそれをやりきった」 会議が終わり、廊下に出たとき、鷹司が澪の隣に立った。 「よくやりました」 「鷹司さんのサポートがなければ、できなかったです」 「私はサポートしただけです。実際に動いたのはあなたとチームです」 「それでも」 「……お疲れ様でした、白石さん」 その一言が、澪の胸に静かに落ちた。 お疲れ様。 たった四文字が、こんなに重く温かく響いたことはなかった。 「鷹司さん」 「はい」 「私、今日、少し泣きそうです」 「泣いていいですよ」 「泣きません。でも、泣きそうくらいは嬉しい」 「そうですか」 鷹司は廊下の窓の方を向き、それから澪の方を向いた。 「今夜、お祝いをしましょう。ど
Last Updated : 2026-06-15 Read more