澪は、添付された写真を見つめた。 今朝、会社の正面玄関を通る鷹司の姿。 遠くから撮影されたものらしく、画質は荒い。それでも、着ていたコートや手にしていた鞄まで、はっきり確認できた。『これ以上調べれば、次に排除されるのは、あなたではない』 胸の奥が冷たくなる。 だが、澪はすぐにメールを閉じなかった。「情報システム部長、このメールの送信記録を保存してください」「すぐに調べます」「写真の撮影場所も確認できますか」「建物の向かい側でしょう。防犯カメラを確認します」 澪は頷き、鷹司へ電話をかけた。 数回の呼び出し音のあと、彼の声が聞こえる。『白石さん?』「今、どこにいますか」『社内です。会議が終わったところですが』 普段と変わらない声に、澪は息を吐いた。「怪しい人物を見ませんでしたか」『いいえ。何かありましたか』 澪は一瞬迷った。 心配をかけたくない。 しかし、隠すことは、二人で決めるという約束に反する。「脅迫メールが届きました。今朝の鷹司さんの写真が添付されています」 電話の向こうが静かになった。『写真を送ってください。すぐにそちらへ行きます』「来なくて大丈夫です」『大丈夫ではありません』「鷹司さんが来れば、相手の思いどおりになります」『どういう意味ですか』「私を怖がらせて、調査から外すことが目的です。鷹司さんが感情的に介入すれば、私が婚約者の力を使っていると言われる可能性もあります」『それでも、あなた一人に任せるつもりはありません』 強い声だった。 澪は目を閉じる。「一人ではありません。会長も、法務部も、情報システム部もいます」『私だけが、何も知らずにいる必要がありますか』 その言葉に、澪は返事を失った。 守るという名目で、鷹司を遠ざけようとしていた。 以前の澪なら、何も言わずに自分だけで解決しようとしただろう。 誰かを頼れば迷惑をかける。 弱いと思われる。 そう考える癖は、まだ完全には消えていない。「すみません」 澪は静かに言った。「来てください。ただし、会議には参加せず、別の部屋で待っていてください」『わかりました』「それから、一人で移動しないでください」『白石さんもです』「はい」 通話を終えると、会長が澪を見ていた。「彼を巻き込みたくなかったのですか」「はい」「だ
Last Updated : 2026-07-21 Read more