それから数日後、俺は花が枯れないように毎日水やりをしていた。 朝の光は、薄いカーテンを一枚通るだけで、ずいぶん柔らかくなる。窓辺に置かれた花瓶へ水差しを傾けると、透明な水が細い音を立て、淡い色の花を支える茎の間へ注がれていった。 水を入れすぎて根元を傷めないように量を確かめ、萎れかけた葉を指でそっと起こす。花の世話なんて、元の世界にいた頃はしたこともなかった。それなのに今では、水面の高さや花びらの張りを毎朝確かめないと落ち着かない。 窓ガラスには、制服姿の俺が映っていた。 黄金の光をまとった甲冑は消え、身体はどこにでもいる高校生の姿へ戻っている。ただ、髪だけは戦いの前の色には戻らず、自然に流れる金色のままだった。朝日を受けるたび、見慣れない自分が窓の向こうからこちらを見返してくる。 その姿を見つめていると、胸の奥で別の鼓動が打った。 本来の鼓動へ黒い脈動が重なり、内側から心臓をつかまれたような圧迫感が広がる。水差しを持つ手が一瞬止まり、吸い込んだ息も喉の途中で途切れた。 俺は制服の上から胸を押さえ、痛みが少し引くのを待った。 背中へ視線を感じて振り向くと、寝台の上で身体を起こしていたミユウと目が合った。 銀色の髪は肩の辺りで柔らかく跳ね、朝の光を薄く映している。小さな身体の背には白い翼が畳まれ、呼吸に合わせて羽先だけがわずかに動いていた。 正天使だったときの面影はある。それでも、いま目の前にいるのは、力を使い果たして幼い姿へ戻ったミユウだ。 彼女は数日前に目を覚ましてから、少しずつ身体を起こしていられるようになった。けれど、俺と過ごした時間について尋ねても、困ったように首を傾げるだけだった。自分の名前を呼ばれても、それが本当に自分のものなのか確かめるように、何度か口の中で転がしていた。 俺のことも、毎日ここへ来て花や部屋の世話をする、金髪の年上の少年としか見ていない。 それでも今日は、昨日より長く俺の手元を眺めていた。「お花を育てるのが好きなの?」 窓辺の静けさを破った声は、思っていたより明るかった。 俺は胸から手を離し、何事もなかったように水差しを花瓶の横へ置いた。「好きと言うか、いつも見張ってないと勝手にかれたりするだろ。昔のお前みたいに」 重い話にしたくなくて、わざと不器用な冗談に変える。 ミユウは二度瞬きをしてから、自分
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