「なんでだよ!なんで出ないんだよ!」 腕から剣へ、力を押し込んだ感触は確かにあった。なのに、差し向けた刃の先には何もない。青い光は鋼に薄く残ったまま、迫ってくる黒い影を押し返してはくれなかった。 息を吐き切った喉がひりつく。もう一度吸おうとした胸を、呪いの痛みが内側から締めた。途切れた呼吸をつなぐより早く、頭上で甲高い笑い声が跳ねる。「あれぇ? 今、何かするつもりだった? かっこよく構えて、それでおしまい?」 ルキュは崩れた石壁の上で、足をぶらつかせていた。顔を向けかけた俺の右側で、別の羽音が膨らむ。近い。胸元へ伸びる爪を見て、俺は踏み出した足を横へずらした。 靴底で石の粉がじゃりっと鳴る。アストラル・オースを斜めに立てると、爪が刃を擦って外へ流れた。手首を返し、がら空きになった胴へ打ち込む。悪魔は床を転がり、後ろから来た一体の足を巻き込んだ。 剣は動く。狙った場所へ、少しの狂いもなく届く。それなのに、さっきの技だけが出ない。 淡い星の紋章へ目を落としかけた、その一瞬だった。倒れた悪魔の陰から、もう一体が低く飛び出した。左の肩口へ爪が迫る。刃を戻すには近すぎた。「しまった!」 背後で大きな羽音が重なり、金色が視界の端に広がった。「天柱の矢(アストロアロー)」 ミユウの声とともに、光の矢が俺の頬のすぐ横を走った。肩を引いた俺の前で、悪魔の胸に金色の光が突き立つ。爪の先が空を掻き、その体は後方の石壁へ弾き飛ばされて動かなくなった。 止めていた息が、ようやく漏れた。ミユウが左隣に足をつき、六枚の金の翼を狭める。頬にかかった黄金の髪も払わず、きゅっと唇を結んで俺を見た。「お兄さん、剣ばっかり見ないで。わたしの声、聞こえてる?」「ああ、聞こえてる。次が来る、少し左に」 正面の二体が左右に分かれた。一体は俺へ、もう一体はミユウの翼の外側へ回り込もうとする。二人の間を広げられたくない。俺は彼女の前に半歩出て、剣を低く構え直した。「そこを動かないでください」 ルゥの声が羽音を裂いた。俺たちの足元を避けて水が走り、砕けた床の溝で白く波立つ。悪魔の爪が届く寸前、水はせり上がって二体をさらい、続く影ごと壁際へ叩き流した。 飛沫が熱を持った頬を打った。冷たさに瞬きをした向こうで、黒い翼が水に押し伏せられる。俺は剣先を下げず、流れの縁から突き出た爪を弾いた
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