「ここが報道受付です。一般来賓はここより内側へは入れません。階段上の撮影位置は、公式カメラと登録媒体だけに限定します」 「未央さんが報道関係者を使う可能性は」 「あります。ただ、登録のない媒体は入れません。招待状を持つ来賓として入る可能性の方が高いでしょう」 「如月家の名義で?」 「もしくは桐生家側の同伴者として」 桐生家という言葉に、指先が止まった。 平面図の紙が擦れる音だけが残った。 桐生司。 もう恋の痛みではない。それでも、三年前に私の言葉を聞かなかった人が、また同じ場所に立つかもしれないと思うと、古い傷のふちが少し熱くなる。 「司さんには、こちらから連絡しますか」 私が聞くと、高瀬さんは一度だけ律を見た。 律は、私を見ていた。 「朝霧さんが望むなら」 「望む、というほどじゃありません」 正直に言った。 「あの人に助けてほしいわけじゃないです。でも、また知らなかったと言われるのは嫌です」 高瀬さんが頷く。 「では、桐生家窓口へ、会場内での接触トラブル防止に関する注意喚起を送ります。特定の人物を犯人扱いする内容にはしません」 「その文面で出してください」 司に直接電話をすれば、たぶん声だけで疲れる。だから、窓口へ送るだけにした。 高瀬さんは、その場で会場側へ提出する注意喚起文の文案を作り始めた。階段付近での接触防止、来賓導線の明示、体調不良者が出た場合の救護手順。どれも地味で、見出しにはならない項目ばかりだった。 高瀬さんの画面に、救護手順、接触防止、映像保全の三項目が並んだ。私はその順番を黙って見た。 「階段のカメラ、保存期間は何日ですか」 「通常は三十日です。ただ、今回は会場側で当日分を別保全します」 「当日のうちに?」 「終了後すぐです」 私は平面図の端に、小さく三十日、と書いた。 その日の午後、青嶺療養院から面会申入れへの回答が届いた。 結果は、拒否。 理由は、対象者の心身状態への配慮と、家族代理人からの申し出。 対象者の氏名は、文書に書かれていなかった。旧管理番号だけが、こちらの照会文と一致している。 「家族代理人」 私はその言葉を見た。 「康生さんですね」 「断定はできません。ただ、KMS経由で同じ時間帯に施設側へ連絡が入っています」 情報管理部
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