映像が残っていた安堵と、残っていなければまた疑われたかもしれない悔しさが、同時に押し寄せた。 敷物の上では、車椅子の音さえほとんど吸われていた。 「朝霧さん」 律の声がした。 私は画面から目を離さずに答えた。 「見ています」 「目は逸らしていません」 「ちゃんと、見ています」 自分に言っているのかもしれなかった。 映像確認が終わると、会場側の法務担当がモニターから目を離して言った。 「現時点の映像上、朝霧様による接触は確認できません。正式な事故報告書では、第三者による強制的接触なし、と記載する方向で整理します」 第三者による強制的接触なし。 「医務室の記録は」 高瀬さんが確認した。 「救護記録として保存します。診断行為じゃありませんが、本人申告の痛みの部位、処置内容、搬送の希望有無は残ります」 会場側の法務担当が答える。 「未央様は外部医療機関への搬送を希望されませんでした。ただし、後日症状を訴えられた場合に備え、救護室での初期対応記録は封緘します」 「ありがとうございます」 私が頭を下げると、法務担当は視線を落とした。 この人も、面倒な場に巻き込まれているだけだ。 でも、巻き込まれた人が手順を守ってくれたことで、私は三年前と同じ底へ落ちずに済んだ。 「朝霧様」 高瀬さんが、今度は私へ向き直った。 「この件について、こちらからSNS等へ発信することは避けます。会場側の公式報告、必要に応じた法的照会、関係者への通知に留めます」 「その形でお願いします」 「未央様側から虚偽の発信があった場合は、反論可能な形で準備します」 私は頷いて手帳を開いた。会場側の法務担当も、手元の書類へ目を落とした。 会場側の担当者が控えの番号を示し、高瀬さんが静かに頷いた。 私は手帳へ番号を書いた。最後の数字でペン先が引っかかり、紙に小さな穴が開いた。 「すみません」 「急がなくて大丈夫ですよ」 法務担当が一瞬だけ笑い、すぐ仕事の顔へ戻った。 その時、部屋の外が少し騒がしくなった。 相良さんが扉を開け、低い声で何かを確認する。 廊下に立っていたのは、九条家の秘書を名乗る男性だった。 「如月未央様について、九条康生よりお預かりします」 預かる。 その言葉に、背筋が冷えた。 「転
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