『05_stair_event』のフォルダの中には、当日の動線図、客間から階段までの距離、隆一が書斎から出てくるまでの想定時間、さらには未央の額につける傷の位置までが細かく記されていた。 ――『傷は浅く。出血量は少量で可。視覚的効果を優先』。 その一文を読んだ途端、未央が椅子をガタリと引いて立ち上がり、自分の額に手を当てた。三年前、彼女が血を流して泣きながら私を見上げて「押された」と言った場所だ。 「……っ、何なのこれ。私、こんなのまでは知らなかった……!」 「でも、やったでしょう」 私の声は氷のように冷たかった。 「図面を知らなくても、あなたは階段の上で私を呼び止めて、私が手を伸ばした瞬間に自分から転んで『お姉ちゃんに押された』と言った。その一言で私の三年間の人生がどうなったか、知らなかったとは言わせないわ」 未央は額を押さえたまま、何も言い返せずに椅子へと崩れ落ちた。 高瀬さんが検証端末のプロパティ画面を確認し、低い声で告げる。 「ファイルの作成者アカウントは『KS_strategy』。最終更新日は、三年前に朝霧さんが如月家を追放される二日前です。後から急造したものではなく、当時の原本データとして他の記録と完全に整合します。……ただし、未央さん」 高瀬さんは厳しい目で未央を見た。 「このUSBはあなたが赤坂の事務所から無断で持ち出したものです。出し方を誤れば、康生氏側はあなたの窃盗と捏造だと逆告訴してきます」 「じゃあ、持ってきた意味ないじゃない……! やっぱり私だけ捕まって終わるのね!」 「意味はあります」 私は画面を見据えたまま、はっきりと告げた。 「あなたが今日、自分の口で『康生さんの秘書から封筒を受け取って階段で嘘をついた』と認めた供述とこのデータを合わせれば、三年前の事件が康生さんの計画だった決定的な証拠になります。……でも、これを出したからといって、あなた自身の罪が消えて自分だけ無傷で助かるとは思わないでください」 未央はハンカチで目元を押さえ、見知らぬ人を見るように私を見上げた。かつては私が言葉を飲み込めば、その場が収まった。けれど今日は違う。彼女が自分の言葉で嘘を認めた以上、私が代わりに罪を引き受ける理由はなかった。 それでも、康生にすべての責任を押しつけられ、未央だけが口封じの標的になるのを黙
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