「少しだけ」 セレフィアは正直に答える。 「本格的なことはわかりません。ただ、王都でも喉を温めるものや、眠りの浅い時のものを、たまに自分で……」 そこまで言ってから、自分の言葉が妙に私的すぎた気がして少し俯く。だがネリサはそこを追及しなかった。「では、どのようなものをお考えですか」 問われると、頭の中で自然に幾つかの配合が立ち上がる。「巡回のあとなら、喉と冷えの両方へ効くものが必要だと思います」 棚を見ながら言う。 「強すぎると次の持ち場に響くでしょうから、眠気が出るものは避けて……でも、肩の張りを少し落とせるものがあれば」「ございますね」 ネリサが別の瓶を手に取る。 「これは熱を足しますが、少し刺激が強い」「では、こちらを少なめに混ぜて……」 セレフィアはもうひとつの乾いた葉を指す。 「喉への当たりをやわらげるものを足せば、飲みやすくなるかもしれません」 気づけば、自然にそういう会話になっていた。瓶を手に取り、匂いを見て、作用を考える。誰かのために。しかも、その誰かは姉でも自分でもない。疲れた兵士や使用人たちだ。 不思議だった。倉庫の帳簿を見た時とはまた違う種類の集中が、自分の中へ静かに降りてくる。数字ではなく、湯気の先にある人の顔や体のこわばりが先に浮かぶ。そのために何を混ぜ、何を引くかを考える。 ネリサはその横で、必要な時だけ口を挟む。作用の強さ、体質による向き不向き、煎じる時間。教えるというより、セレフィアの考えの隙間を埋めるような手つきだった。 やがて三種類の小さな配合が整った。 ひとつは、巡回から戻った兵士向け。冷えを散らし、喉を守り、だが頭は鈍らせすぎないもの。 ひとつは、屋内で立ち働く使用人向け。長く立ち続けて足が冷え、けれど仕事はまだ終わらない者のために、内側を少しだけ温めて呼吸を楽にするもの。 そしてもうひとつは、夜の見回りや帳場の作業で眠りの時間がずれた者向け。強く眠気を誘うのではなく、張りつめすぎた頭をほどいて、寝床へ入ったあとに少しだけ眠りへ落ちやすくするもの。「ずいぶん具体的でいらっしゃるのですね」 ネリサが言う。 セレフィアは、少し迷ってから答えた。「たぶん……必要な人の顔を見てしまったからだと思います」 井戸のそばで喉へ手をやっていた兵士。階段の途中で一度だけ壁へ肩を預け
Last Updated : 2026-07-29 Read more