Todos los capítulos de 恋わずらいの小児科医、ハレンチな駄犬に執着されています: Capítulo 81 - Capítulo 90

108 Capítulos

この恋すいーつ2

*** きれーなおにーさんに付き添われ、救急車で大学病院まで連れて行かれた俺。 病院に着くと早速、頭の中の写真を何枚も撮られ、疲れきったトコに母親と妹が心配そうな顔で到着した。病室に入ってきた母親と妹の姿を見て、ベッドに横たわる俺の傍にいたキレイなおにーさんが素早く立ち上がって、きっちりと頭を下げる。「このたびは息子さんにケガをさせてしまい、大変申しわけありませんでした」 「頭をあげて下さい、周防先生。息子がいつもお世話になっているというのに。逆に、お礼を言いたかったんですよ」 キレイなおにーさんは、すおー先生というのか。 頭をあげて切なげな瞳をした横顔を、じっと見てしまった。(――未だに信じられねぇ。こんな人が俺の恋人なんて……)「周防先生のところに通うようになってから、真面目に大学に通うようになったんです。夜遊びも減りましたし、以前に比べると成績がすごく良くなっているんですよ。きっと先生が、うちの息子の面倒を見てくれているんですよね?」 「いえ……。それは彼が命に関わる病がきっかけで、いろいろ考えることがあったからだと思いますよ。私はただちょっとだけ手を添えて、お手伝いをしているまでです。しかし今回ケガをさせてしまったのは、こちら側のミスですので」 あまりにも自分が悪いと連呼し、ミスを引っかぶる姿に胸が痛くなってしまった。「アンタが悪いワケじゃねぇだろ。俺があんな恰好して、高いトコに上がったのが原因なんだから、そんなふうに何度も謝んなって!」 意識が戻って気がついたときに、自分が着ていた犬の着ぐるみ。どうしてそんな格好をしているか、全然ワケがわからなかったけど、傍に倒れていた脚立がすべてを物語っていた。「こらっ、歩。周防先生に、なんて口の聞き方をしてるの」 「いいんですよ、普段はきちんとしていますから。今は私に関する記憶がないせいで、こんな喋り方になっているだけです」 「お兄ちゃんっ、本当にすおー先生の記憶、なくなっちゃったの?」 妹の茜がベッドに近づいて、顔を覗き込むように訊ねた。その視線をやり過ごすべく、プイッと横を向いてやる。「歩くんが検査中、画像を見せてもらったのですが、異常は見られませんでした。後頭部にできたタンコブも、脳内で血腫になっていなかったですし大丈夫です。頭を強打したために見られる、一時的な健忘症でしょうね
last updateÚltima actualización : 2026-09-10
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この恋すいーつ3

「それでも知りたいんだけど。えっと、俺がアンタをナンパしたんだっけ?」 「そうそう。そのあと病気で倒れたから、仕方なく面倒を見てやった。一緒に生活している内に、恋人になりました。めでたしめでたし」 説明しながら、手をパチパチと鳴らしてくれるオマケつき。大事なトコが知りたいっていうのに、なんなんだ。「説明省きすぎだろ、ちゃんとしてくれよ」 「事実を知ったら間違いなく、今以上に混乱するけど、それでもいいのか?」 「それを知ったら、うまいこと記憶が戻るかもよ!」 俺がにっこりほほ笑むと、すおー先生はすっげぇイヤそうな表情を浮かべ、眉間に深いシワを寄せる。「アンタの記憶、戻ってほしくないのかよ?」 「実際のところ、戻ってほしい。でも今はあまり、無理してほしくないんだ」 長い睫を伏せ俯く姿に、ますます知りたくなってしまった。この人にこんな顔をさせるなんて、俺ってば罪な男かもしれない。「俺はどうしても思い出したい。アンタを見てると知りたくて堪らないんだって」 右目尻のホクロに手を伸ばし優しく触ると、すおー先生は体をビクつかせた。一瞬だけ俺を見てから、あらぬ方向を見たまま諦めたように話し出す。触れている頬が熱を持ったのが、指先から伝わってきた。「病院前で倒れたおまえは、自分の正体を知られたくなかったから、名前を教えてくれなかったんだ。それで俺が太郎って名づけた」 「へえぇ、なるほど」 「他にも突然、犬になってな。散歩に連れて行けとワンワン吠えたり、困らせることばかりして、かなり手を焼いたんだぞ」(――い、犬!?)「ほらな、混乱してるだろ。頭が痛くなる内容に、余計ワケがわからなくなるって」 心配そうな顔をして頬に伸ばしていた俺の手を、ぎゅっと握りしめてくれる。「とにかくもう、これ以上は考えるのは止めろ。バカ犬のおまえが、もっとバカになったら困るからな。そろそろ横になれって」 椅子から立ち上がり、俺の体を押し倒したすおー先生。その腕を掴んで簡単に逆転してやり、ベッドへと強引に押しつけた。『…っ、やめっ……病室なんてリスキーな場所でそんなこと、できるワケないだろ』 次の瞬間頭の中に、艶っぽい声が流れる。まるで今の行為が、以前にもあったみたいだ。 白衣姿のすおー先生が、なにも言わずにじっと俺を見上げた。「……どうした? 勢いよく押し倒したク
last updateÚltima actualización : 2026-09-11
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この恋すいーつ4

*** 飛び出すように、歩のいた病室から出て扉を閉め、足元をフラフラさせながら、傍にある談話室の椅子に座り込んでしまう。「ショック療法で記憶が戻るかと思ったけど、やっぱりうまくいかないものだな……」 テーブルに顔を突っ伏させる。もう心底、疲れてしまった。普段言わないようなことを、ぽんぽん口にしてみたら、歩が驚いた顔をしてる姿を見て、すっごくドキドキした。俺に翻弄されて慌てふためくその様子が、またしてもかわいらしくて。「……余計、好きになっちゃったじゃないか、どうしてくれるんだ。バカ犬がっ!」 きっと大学にいるときはあんな様子で、ちゃらちゃらしていたんだろうなって容易に想像ついた。 俺の前ではまんま子供だけど、生意気な口の訊き方をしつつ、『おまえが好きなんだ』なぁんて囁かれたコたちは、簡単に騙されてしまうだろう。 そんなふうに背伸びをして大人ぶってる姿に、年上の誰かさんもコロッといっちゃうかもしれない。ゆえにオールマイティ。「つくづく、厄介な男を好きになってしまった。まったくもって面倒くさい……」 歩じゃなく、自分自身が面倒くさい。いつもと違う歩を見たくらいで、ドキドキして気持ちを持て余してる。 胸の奥が疼いて、堪らなくなる――。「今度は俺が落としてやる。なぁんて豪語したのはいいけど、夢中にさせるほどの魅力が、自分にあるとは思えないよ」 ないものねだりでイライラしても、しょうがないのだけれど。「問題は自分から迫ったことがない、ということだろうな。これは難題だぞ、困った」 いつも受身でいた自分。迫ることに対しての難しさを、病室でイヤいうほど痛感してしまった。だけど――。「歩にケガさせて、守りきれなかった自分への罰だ。甘んじて受けなければなるまい」 頭を掻きむしってから立ち上がり、ため息をついた。ゆっくりと足を進ませ、大好きな歩のいる病室の扉の前に佇む。「記憶がなくても大丈夫。俺はずっと、おまえを好きでいるからな」 見ず知らずのかわいげのない男に迫られて迷惑だろうが、俺は諦めるつもりは毛頭ない!「おまえが迫ったときのことを思い出しながら、じわじわ迫ってやる。覚悟しておけよ」 多少の不安はあるけど、粘り強さには自信がある。頑張ってやるさ、おまえの笑顔をまた見たいから。バカ犬って呼んでいたあの頃の、すっごく嬉しそうにしていた、くちゃく
last updateÚltima actualización : 2026-09-12
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この恋すいーつ5

*** 一晩だけ様子見で入院し、次の日の午前中に受けた検査で異常が出なかったので、午後に退院できた。「元気なお蔭で、明日から普通に大学に行けるのか。正直、あと一日くらい休めたらいいのに……」 すおー先生の記憶じゃなく、その他の全部の記憶がなくなっていたら、大学に行かなくて済んだのにさ。「そしたら理由をつけて、あの人の傍にいることができたかもしんねぇのに」 ぶつくさ言いながら、自分の部屋に入る。「キュピッ! ピピッ」 窓辺に置いてある鳥かごの中で、オカメインコのオカメちゃんが俺の顔を見て、喜ぶようにバサバサと羽ばたいた。「ただいまオカメちゃん、いいコにしてたか?」 「バカイヌ…ダマリナサイッ……キュキュッ」 オカメちゃんから発せられた言葉に、顔を引きつらせて固まるしかない。「オカメちゃん、おまえどうしたんだよ。その言葉っていったい……」 「バカイヌ、ベンキョウ、バカイヌ、ベンキョウ!」 ――バカ犬って、もしかして……。「すおー先生が、俺に向かって言ってたよな。オカメちゃんをあの人に、預けたことがあるのか?」 「……キュッ、タロウハ、バカイヌ! キュピッ」 恋人に対して容赦なく、こんなふうに言うんだ。それってなんだかなぁ。 オカメちゃんを見ながら、呆れ返っていたとき。「…アイム、スキダヨ……アイムスキ!」 目をぱちくりさせながら、首を傾げて言い放つ。「アイムスキ……歩、好き――?」 頭の中で不意に映像が流れる。どこか、ぼんやりしたものだけど。 目を細めながら柔らかい笑みを浮かべて、俺を見上げるすおー先生がなにかを言った。『歩、俺はおまえが好きだよ。最期の恋じゃなくて、俺との最後の恋にしてくれないか?』 頬を真っ赤に染めながら、俺を見つめる視線が切なげに見えた。一生懸命にキモチを伝えている、すおー先生の姿がすっげぇかわいい。「あの人はあまり、自分のキモチを言わない人だった、気がする……」 それを口にした瞬間、浮かんできた映像が瞬く間に消えてなくなった。一瞬だけど思い出せた。だから違和感があったんだ。 病室ですおー先生に迫られたあのとき、その行為に思いっきり躊躇した。たぶん普段はそんなことをしない人だから、妙な感じがしたのかもな。 俺を見下しながら余裕の笑みを浮かべ、誘うような仕草の数々に散々翻弄されてしまった。「
last updateÚltima actualización : 2026-09-13
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この恋すいーつ6

*** 次の日いつも通り大学に行き、仲のいい同期と戯れる。コイツらの記憶はハッキリと残っているので、まったく支障がなかった。 ただ――。「じゃあな王領寺。明日課題のレポートを見せてくれよ?」 「え……?」 いつもなら一緒に帰り、ゲーセンやらファストフード店でだらだらと過ごしていたはずなんだ。しかも完成済みのレポートの予約までって、いったいどういうことだ?「あれ、今日は行かないのか? 塾らしきトコ」 「塾、らしきトコ?」 ぽかんとした俺に、同期が不審げな顔をする。「大丈夫か? おまえいつも自慢してたろ、自分に合う勉強法を教えてくれる人を見つけたって。別名、塾らしきトコってさ」 ――たぶん、すおー先生のトコだろう。「なんかさ勉強のしすぎで、頭がおかしくなったのかも。あはは……」 俺は飼い犬らしいので(しかしバカ犬って愛称も太郎って呼び名も、どうかと思われる)すおー先生にかわいがられているらしいところを、そうやって表現しただけだろうと思われた。「確かに。以前のおまえなら、勉強のべの字もなかったもんな。入院中に、頭の中を改造してもらったとか?」 「そうかもしれない。マジメモードに変えてもらったんだ、きっと」 すおー先生と出逢って、俺の中のなにかが変わったのは事実だと思う。恋愛マジメモードという感じかもな。「そのマジメモードで、塾らしきトコに行ってくれよ。今日の課題は難しすぎて、全然ヤル気が出ない」 「わかった、行ってくる。今日の課題をそこで教えてもらうから」 「ラッキー。頼んだぞ王領寺っ!」 肩をバシバシ叩いて、去って行った同期を見ながら、こっそりとため息をつく。(記憶のない俺がすおー先生のところに行って、本当にいいものだろうか――)*** 結局周防小児科医院まで、迷うことなく歩いて来てしまった。ここまでの道のりを、頭がしっかりと覚えてる。というか……。「ここに来るのが、当たり前って感じに思えたな。習慣ってすげぇ」 そんな自分に驚きつつ、ドキドキしながら病院の扉を開いた。靴からスリッパに履き替え、恐るおそる中へ入ると。「あっ、太郎のお兄ちゃん! 今日は会えたね」 待合室にいた子どもがひとり、俺に向かって走ってやって来た。残念ながら、誰かわからない。どうしよう――。「お、おぅ。こんにちは! 元気そうだな」 内心おっかな
last updateÚltima actualización : 2026-09-14
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この恋すいーつ7

ガックリと肩を落して、その場を立ち去ろうとしたら、いきなり後頭部を容赦なく叩かれる。 ばこんっ!「あだっ!?」 「なんで人の部屋を、勝手に覗き込んでるんだ。金目のものはないぞ」 腰に手を当てて俺を見上げる、すおー先生が後ろに立っているではないか!「ごめっ、つい……そのなんか、思い出せそうな気がして」 「おまえの頭じゃ無理な話だな。せいぜい卑猥なことでもアレコレ考えてたろ」 ギクッ!「……その顔は図星だね。困ったヤツ」 言葉は文句なのに、口元が嬉しそうに見えるのは、気のせいなんかじゃない。 身を翻して出て行こうとする、すおー先生の腕を掴んだ。「あ、あのさっ」 「なんだよ? 俺の休憩時間は15分だけなんだ。おまえに割く時間はない」 「抱きたいんだっ」 いきなり口走ってから、慌てて掴んでた手を離す。顔面蒼白じゃなく、猛烈に真っ赤だと思う。「やっ、えっとあの。深い意味じゃなくって、あー……もぅ。ワケわかんねぇ」 「……わかったよ、好きにすればいい。来い」 すおー先生は俺が言ったことをそのまま飲み込んだのか、目の前をさっさと通り過ぎ、ベッドに横になってくいくいっと誘ってくる。「ただし、さっきも言ったように俺の休憩時間は15分。延長はなしだから」 「はっ……はぃ」 休憩時間だからいつも着ている白衣がない姿を、ちょっとだけ残念に思いつつ、遠慮なく跨って恐るおそる抱きしめてみた。 すっげぇ興奮してるのに、すおー先生のニオイを嗅ぐと、何だか落ち着いてくる。「はぁはぁ……あの、触ってもいい?」 落ち着いてくるとはいえ、やっぱこの状況は興奮する。ただ抱きしめてるだけじゃ、物足りないのである。 俺の吐息が肌にかかるたび、右側の跳ねた襟足の髪がピクピク揺れて、感じてるのを伝えるアンテナみたいになっていた。 ――ああ、すっげぇかわいい。「……触るって、どこをだよ?」 ちょっと困ったような声の響き。そりゃそうだよな。「大丈夫っ、変なトコ触らないし。上半身だけ!」 「変なトコって、おまえ……バカっ」 その途端に触れ合ってる部分が一気に熱をもったのが、じわじわっと伝わってきた。 横目ですおー先生の顔を見たら、長い睫を伏せてそっぽを向き、頬を真っ赤に染めているではないか! どうしてくれよう……こんな顔をされたら、変なトコも一緒に触りたく
last updateÚltima actualización : 2026-09-15
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この恋すいーつ8

*** 悶々としながら課題をこなしていると、いつの間にか下の病院から聞こえていた喧騒が消えていることに気がつく。リビングにある時計を見たら、午後6時過ぎになっていた。「病院が閉まったから、静かになったのか」 友人に頼まれているというのに難しいところで見事に躓き、にっちもさっちもいかないので、思いきってすおー先生に聞いてみようと立ち上がった。階段をさくさく下りて病院内に足を踏み入れ、診察室と書いてあるプレートが下がった部屋に、恐るおそる顔を出す。「あっ、あのさ、悪ぃんだけど、ちょっと教えてほしくて」 机に向かって書き物をしていたすおー先生は、俺の声に反応して振り向く。「バカ犬のおまえのことだ、どうせなにを書いたらいいかわからなくなったんだろ。どこだ?」 まだなにも言っていないというのに、あっさりと言い当てられて、ビックリしてしまった。「……恋人の苦手分野くらい把握して当然のことだろ。おもしろい顔して、わざわざ笑いをとろうとしてくれるなって」 苦笑いして俺が持っていた課題のノートと資料を引っ手繰ると、パラパラめくっていく。(細長くてキレイな指、しているな――) ぼんやり見惚れていたら、その指が俺が教えてほしいページに辿り着いた。「この赤丸が、ついているところか?」 「う、うん。文章が難しすぎて、なにを指摘してるのか全然わかんなくて」 「これはね――」 持っていたペンでさらさら書き込みながら、丁寧に教えてくれる。説明している口元を、思わず見入ってしまった。(そういえばすっげぇ柔らかくて、しっとりした唇だったな。ずっとキスしていたかった)「……おい太郎、聞いてるか?」 「…………」 「太郎ってば!」 ハッとして、すおー先生の唇から視線を逸らした。そういや太郎って、俺のことだったか。「ごめっ! 俺ってばすおー先生の声に、うっとりしちゃって」 「……俺のほうこそ悪い。いつも太郎って呼んでたから。しかし記憶に関係なく、誤魔化し方は同じなのな」 呆れた顔して、ほらよとノートを手渡された。「うっとりしながら聞いていたのなら簡単だろうよ。今すぐやってみろ」 やべぇと内心焦ったけど、ペンで書いていた説明文のお陰で、難なく解いてしまった。もしかしていい加減な俺を見越して、この説明文を書いていたのだろうか? ――恋人だからわかってるであろ
last updateÚltima actualización : 2026-09-16
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この恋すいーつ9

*** すおー先生に左手を繋がれて、引っ張られるように歩いていた。少しだけ後方の位置からだと、かわいい泣きボクロと一緒に跳ねた襟足の髪が見える。 ちょっとだけ照れたような、それでいて困ったような表情を色っぽく見せる泣きボクロと、歩く振動でひょこひょこと揺れる跳ねた襟足の髪の毛。ずっと見ていても、飽きてこないのが不思議――。 やがて高台の駐車場まで辿り着き、ふと足を止めた。目の前に広がる風景は月明かりにほんのり照らされ、ぼんやりと浮かび上がるような感じだった。「おい、どうした?」 すおー先生は立ち止まった俺に声をかけたのだが、なんて答えていいのかわからない。ここからのアングルが、ちょうど診察室に飾ってあった絵と同じなのを、わざわざ確認しているみたいだ。(――俺はどうして、これを描いたんだろう?)『なんか、キレイだな』 振り返って遠くを見る横顔。背景にある紅葉よりも光り輝いて見える、すおー先生の顔が、なぜか鮮明に頭の中に浮かんできた。 瞳を細めながら嬉しさを滲ませる表情に、じわりと胸が熱くなる。それを悟られないように、俺は素っ気なく答える。『なにがキレイだって?』って。そんな景色よりもアンタのほうが、もっとキレイなのになって思いながら、その横顔に目を奪われて――。「おい、歩。どうしたおまえ?」 繋いでいた手を強く引っ張られたせいで、前のめりになる。「わっ!?」 一気に現実の世界に戻されたせいで、すぐ傍にあるすおー先生の顔にドキドキした衝撃をそのままに、パッと手を離した。 暗がりなのに間近で見たキレイな顔を、ハッキリとこの目で捉えてしまい、ほとほと困ってしまう。いろんな意味で、すっげぇ心臓に悪い。(今の俺、間違いなく赤面してる。頬が異常に熱い。これじゃあ恋にウブな、中坊みたいな反応じゃね?) どうしていいかわからず、わたわたと落ち着きなく、あちこちに視線を彷徨わせるしかなかった。「おまえ、なにか思い出したんだろ。主にエロいことを中心に」 あたふたと困ってる俺に、追い討ちをかけるように詰め寄るすおー先生。いつもの俺なら、そんな態度をとる相手の口封じをすべくキスしちゃうのだが、残念ながらこの人にはそれができない。 なぜだかわからないけどそれをしたら、なにかが飛んでくる気がする。「ちょっとだけ、ここでのやり取りを思い出した。だけどエロ
last updateÚltima actualización : 2026-09-17
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この恋すいーつ10

「ちょっ、苦し……」 「好きだ、すおー先生」 きつく眉根を寄せる顔に向かって、自分の顔を近づける。次の瞬間、横から振りかぶった手が、左頬を思いっきり叩いた。 パシーン! 両目から勢いよく、火花がばちばちと飛び散る。そういやこんなこと、前にもあった気がする。なんだっけ……?『いきなり見知らぬ人物に触れられそうになったら、誰だって拒否るだろ。殴られなかっただけ、ありがたいと思え』 頭の中で、聞き覚えのある声が響いた。そうあれは――。「こんな場所で、なにをしようとしたんだ。このバカッ」 怒鳴った顔がダブる。あのとき、烈火のごとく怒った人は……。「タケシ、先生……」 殴られた頬を擦りながらぽつりと呟くと、ビックリした顔で俺を見上げた。「おまえ……思い出した、のか?」 どうしよう、なんて答えたらいいんだ。「悪い……。全部じゃなくて、出逢ったときのことが出てきた。そんでもって、そこから少しずつ思い出してる最中」 「あ……」 「相変わらず、いい感じに平手打ちしてくれたよな。まさかコレで思い出すとは、全然思わなかったし」 呆れながら言うと、叩いた手を胸の前でぎゅっと抱きしめ、肩を震わせて俯いてしまうタケシ先生。「なぁ、どうしたんだよ? 俯いちゃってさ。嬉しくないのか?」 「……叩いた手が痛いんだって。放っておいてくれ」 なにかを堪えるような、か細い声。それがなにを意味するのか、俺はすぐに理解できる。ずっと一緒にいたから尚更。「放っておけねぇよ。大事な人なんだタケシ先生」 今度は優しく、そっと抱きしめる。苦しくないように――。「こんな目立つ場所で、なにをやって」 「大丈夫だって。みんな、自分たちの世界に浸ってるし。俺らなんて目に入らないよ」 笑いながら言うと、胸の中のタケシ先生が俺に抱きついた。「あれ、珍しい。人目をはばからず、そんなふうに密着するなんて。タケシ先生らしくないじゃん」 泣きボクロに優しくキスしてあげる。どことなくしょっぱいのは、気のせいにしてあげよう。「人酔いしてるだけだ、気にするな……っ」 なんだかな、わかりやすいウソつきやがって。そこもかわいいんだけど。「人酔いよりも、俺に酔ってほしいんだけど。ね、ダメ?」 「充分に酔わされたよ。おまえの記憶が合ってもなくても、翻弄されっぱなしだった」 俯いていた顔を
last updateÚltima actualización : 2026-09-18
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告白のとき

(毎度毎度、飽きずに同じネタを振ってくれて。呆れ返って逆らっているのが、分かっているだろうに) 島の診療所で医者をしている親父から、月に数回ある連絡という名のメール。そこに書かれている内容に、顔を歪ませるしかない。『もういい年なんだから見てくれのいい内に、相手を騙くらかしてもいいから、とっとと結婚しろ! 早く孫の顔を見せてくれ!』 それを「忙しいから」という理由をつけたり、「出逢いがないから」という、いいわけをつけて、うまいこと誤魔化していたのだけれど――「そろそろはっきりさせなきゃ間違いなく、もっと煩くなるのが目に見えるんだよね。親子だからこそ分かる事実……」 面倒くさいことが書かれているスマホの画面から、ベッドに視線を移した。嬉しそうな表情を浮かべ、幸せそうにぐーすか眠っている歩の姿に、思わず笑みが零れてしまう。「男とデキてるなんて知ったら、病院に行って検査しろとか、いろいろ言われちゃうだろうな。気難しい親父だから」 だけど、このままでいるワケにもいかない。俺はコイツと、一緒に生きていくって決めたから尚更。 小さなため息をつきながら返信すべく、当たり障りのない内容を考え、ぽつぽつと文字を打った。『今度の夏休み、若い看護師見習いを連れて島に遊びに行くよ。楽しみにしてて』 ソウシン(・ ̄ヘ ̄)θ★[\/]☆)ノ`□´)ノ あえて、性別を書かずに送ってやった。きっとこの文章を読んで、勝手に小躍りするであろう。そしてフェリーから降り立つ俺たちの姿を見て、愕然とすればいいんだ。 火に油な状態だけど、なるようにしかならないのが分かっている。それよりも――「一緒に両親のところに行くって言ったら、コイツがどんな顔をするのか。そっちの方が興味深い」 くすくす笑いながらベッドに入り込み、くっつくように横たわった。起きたらまずは、告げなきゃいけない大事なことを、いろいろと考えながら―― つづく
last updateÚltima actualización : 2026-09-19
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