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この恋すいーつ3

Author: 相沢蒼依
last update publish date: 2026-09-11 08:58:56

「それでも知りたいんだけど。えっと、俺がアンタをナンパしたんだっけ?」

「そうそう。そのあと病気で倒れたから、仕方なく面倒を見てやった。一緒に生活している内に、恋人になりました。めでたしめでたし」

説明しながら、手をパチパチと鳴らしてくれるオマケつき。大事なトコが知りたいっていうのに、なんなんだ。

「説明省きすぎだろ、ちゃんとしてくれよ」

「事実を知ったら間違いなく、今以上に混乱するけど、それでもいいのか?」

「それを知ったら、うまいこと記憶が戻るかもよ!」

俺がにっこりほほ笑むと、すおー先生はすっげぇイヤそうな表情を浮かべ、眉間に深いシワを寄せる。

「アンタの記憶、戻ってほしくないのかよ?」

「実際のところ、戻ってほしい。でも今はあまり、無理してほしくないんだ」

長い睫を伏せ俯く姿に、ますます知りたくなってしまった。この人にこんな顔をさせるなんて、俺ってば罪な男かもしれない。

「俺はどうしても思い出したい。アンタを見てると知りたくて堪らないんだって」

右目尻のホクロに手を伸ばし優しく触ると、すおー先生は体をビクつかせた。一瞬だけ俺を見てから、あらぬ方向を見たまま諦め
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  • 恋わずらいの小児科医、ハレンチな駄犬に執着されています   この恋すいーつ6

    *** 次の日いつも通り大学に行き、仲のいい同期と戯れる。コイツらの記憶はハッキリと残っているので、まったく支障がなかった。 ただ――。「じゃあな王領寺。明日課題のレポートを見せてくれよ?」 「え……?」 いつもなら一緒に帰り、ゲーセンやらファストフード店でだらだらと過ごしていたはずなんだ。しかも完成済みのレポートの予約までって、いったいどういうことだ?「あれ、今日は行かないのか? 塾らしきトコ」 「塾、らしきトコ?」 ぽかんとした俺に、同期が不審げな顔をする。「大丈夫か? おまえいつも自慢してたろ、自分に合う勉強法を教えてくれる人を見つけたって。別名、塾らしきトコってさ」 ――たぶん、すおー先生のトコだろう。「なんかさ勉強のしすぎで、頭がおかしくなったのかも。あはは……」 俺は飼い犬らしいので(しかしバカ犬って愛称も太郎って呼び名も、どうかと思われる)すおー先生にかわいがられているらしいところを、そうやって表現しただけだろうと思われた。「確かに。以前のおまえなら、勉強のべの字もなかったもんな。入院中に、頭の中を改造してもらったとか?」 「そうかもしれない。マジメモードに変えてもらったんだ、きっと」 すおー先生と出逢って、俺の中のなにかが変わったのは事実だと思う。恋愛マジメモードという感じかもな。「そのマジメモードで、塾らしきトコに行ってくれよ。今日の課題は難しすぎて、全然ヤル気が出ない」 「わかった、行ってくる。今日の課題をそこで教えてもらうから」 「ラッキー。頼んだぞ王領寺っ!」 肩をバシバシ叩いて、去って行った同期を見ながら、こっそりとため息をつく。(記憶のない俺がすおー先生のところに行って、本当にいいものだろうか――)*** 結局周防小児科医院まで、迷うことなく歩いて来てしまった。ここまでの道のりを、頭がしっかりと覚えてる。というか……。「ここに来るのが、当たり前って感じに思えたな。習慣ってすげぇ」 そんな自分に驚きつつ、ドキドキしながら病院の扉を開いた。靴からスリッパに履き替え、恐るおそる中へ入ると。「あっ、太郎のお兄ちゃん! 今日は会えたね」 待合室にいた子どもがひとり、俺に向かって走ってやって来た。残念ながら、誰かわからない。どうしよう――。「お、おぅ。こんにちは! 元気そうだな」 内心おっかな

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    *** 一晩だけ様子見で入院し、次の日の午前中に受けた検査で異常が出なかったので、午後に退院できた。「元気なお蔭で、明日から普通に大学に行けるのか。正直、あと一日くらい休めたらいいのに……」 すおー先生の記憶じゃなく、その他の全部の記憶がなくなっていたら、大学に行かなくて済んだのにさ。「そしたら理由をつけて、あの人の傍にいることができたかもしんねぇのに」 ぶつくさ言いながら、自分の部屋に入る。「キュピッ! ピピッ」 窓辺に置いてある鳥かごの中で、オカメインコのオカメちゃんが俺の顔を見て、喜ぶようにバサバサと羽ばたいた。「ただいまオカメちゃん、いいコにしてたか?」 「バカイヌ…ダマリナサイッ……キュキュッ」 オカメちゃんから発せられた言葉に、顔を引きつらせて固まるしかない。「オカメちゃん、おまえどうしたんだよ。その言葉っていったい……」 「バカイヌ、ベンキョウ、バカイヌ、ベンキョウ!」 ――バカ犬って、もしかして……。「すおー先生が、俺に向かって言ってたよな。オカメちゃんをあの人に、預けたことがあるのか?」 「……キュッ、タロウハ、バカイヌ! キュピッ」 恋人に対して容赦なく、こんなふうに言うんだ。それってなんだかなぁ。 オカメちゃんを見ながら、呆れ返っていたとき。「…アイム、スキダヨ……アイムスキ!」 目をぱちくりさせながら、首を傾げて言い放つ。「アイムスキ……歩、好き――?」 頭の中で不意に映像が流れる。どこか、ぼんやりしたものだけど。 目を細めながら柔らかい笑みを浮かべて、俺を見上げるすおー先生がなにかを言った。『歩、俺はおまえが好きだよ。最期の恋じゃなくて、俺との最後の恋にしてくれないか?』 頬を真っ赤に染めながら、俺を見つめる視線が切なげに見えた。一生懸命にキモチを伝えている、すおー先生の姿がすっげぇかわいい。「あの人はあまり、自分のキモチを言わない人だった、気がする……」 それを口にした瞬間、浮かんできた映像が瞬く間に消えてなくなった。一瞬だけど思い出せた。だから違和感があったんだ。 病室ですおー先生に迫られたあのとき、その行為に思いっきり躊躇した。たぶん普段はそんなことをしない人だから、妙な感じがしたのかもな。 俺を見下しながら余裕の笑みを浮かべ、誘うような仕草の数々に散々翻弄されてしまった。「

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    「それでも知りたいんだけど。えっと、俺がアンタをナンパしたんだっけ?」 「そうそう。そのあと病気で倒れたから、仕方なく面倒を見てやった。一緒に生活している内に、恋人になりました。めでたしめでたし」 説明しながら、手をパチパチと鳴らしてくれるオマケつき。大事なトコが知りたいっていうのに、なんなんだ。「説明省きすぎだろ、ちゃんとしてくれよ」 「事実を知ったら間違いなく、今以上に混乱するけど、それでもいいのか?」 「それを知ったら、うまいこと記憶が戻るかもよ!」 俺がにっこりほほ笑むと、すおー先生はすっげぇイヤそうな表情を浮かべ、眉間に深いシワを寄せる。「アンタの記憶、戻ってほしくないのかよ?」 「実際のところ、戻ってほしい。でも今はあまり、無理してほしくないんだ」 長い睫を伏せ俯く姿に、ますます知りたくなってしまった。この人にこんな顔をさせるなんて、俺ってば罪な男かもしれない。「俺はどうしても思い出したい。アンタを見てると知りたくて堪らないんだって」 右目尻のホクロに手を伸ばし優しく触ると、すおー先生は体をビクつかせた。一瞬だけ俺を見てから、あらぬ方向を見たまま諦めたように話し出す。触れている頬が熱を持ったのが、指先から伝わってきた。「病院前で倒れたおまえは、自分の正体を知られたくなかったから、名前を教えてくれなかったんだ。それで俺が太郎って名づけた」 「へえぇ、なるほど」 「他にも突然、犬になってな。散歩に連れて行けとワンワン吠えたり、困らせることばかりして、かなり手を焼いたんだぞ」(――い、犬!?)「ほらな、混乱してるだろ。頭が痛くなる内容に、余計ワケがわからなくなるって」 心配そうな顔をして頬に伸ばしていた俺の手を、ぎゅっと握りしめてくれる。「とにかくもう、これ以上は考えるのは止めろ。バカ犬のおまえが、もっとバカになったら困るからな。そろそろ横になれって」 椅子から立ち上がり、俺の体を押し倒したすおー先生。その腕を掴んで簡単に逆転してやり、ベッドへと強引に押しつけた。『…っ、やめっ……病室なんてリスキーな場所でそんなこと、できるワケないだろ』 次の瞬間頭の中に、艶っぽい声が流れる。まるで今の行為が、以前にもあったみたいだ。 白衣姿のすおー先生が、なにも言わずにじっと俺を見上げた。「……どうした? 勢いよく押し倒したク

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