凜華は突如現れた夫・直哉の存在に驚きながらも、日葵を守ることだけを考えていた。 直哉は自分の子どもであることを素直に認めるのか、それすらわからない。(もしも直哉が自分の子どもだと認めたら、日葵を私から取り上げるに違いない)(そんなこと、絶対にさせない)「違うわ。この子は、刑務所にいた時にお世話になった友人の子よ。訳あって今、預かっているだけなの」 直哉は日葵を見つめている。「あなたとの子どもができるわけないじゃない」 フッと冷たく笑い、そんなことあるわけがないと凜華は伝えた。 実際に夫婦関係は破綻していた。子どもができる行為など、ここ数年間では、あの一夜のみ。奇しくも逮捕前日に直哉が強引に凜華に求めた一夜だけだった。「……。ああ。そうだったな」 一瞬自分に似ていると思った直哉だったが、振り返ってみれば、凜華と身体を重ねたのは数えるほどしかない。可能性として考えると、ほぼゼロに等しい。(暗くてあまり顔が見えないのが原因だ。よく見ると俺に似てもいない。どうしてそんな勘違いをしてしまったんだ) 凜華に抱きかかえられている日葵は、直哉に興味があるようで、無邪気に一生懸命手を伸ばし、まるで自分のことを抱いてほしいと言っているみたいだ。(もしも凜華が獄中に妊娠して子どもが生まれるようなことがあったら、俺にも連絡が来るはず。そのように手配していた) 直哉は自分に言い聞かせる。目の前にいる子どもは自分の子どもなんかではないと。 凜華は直哉の気を引こうと、直哉に強い口調で詰め寄る。「あなた、どうしてここにいるの? 何をしに来たの?」 日葵を抱え直し、直哉からは顔が見えないようにした。(病院へ会いに行った時は、話すことさえ許されなかったのに。直哉が自ら私に会いに来るなんて。なぜ、こうも無情なのかしら) 凜華の毅然とした態度、言葉が直哉は気に入らない。凜華から頭を下げ、謝罪をしてくると思っていたのだ。 あなたが許してくれないと思って――。 私みたいな女、あなたには相応しくないわ。だから離れたの――。 会いに来てくれて嬉しい――。 しかし凜華から放たれた言葉は「何をしに来たの?」という拒否的な態度。「……。お前、久しぶりに再会したと思ったら、なんだその態度は? 俺を誰だと思っている?」 直哉の氷のような目線が凜華に突き刺さる。(夫婦で
Last Updated : 2026-07-10 Read more