「その二人は……」 使用人は一呼吸置いた。「宗像涼真氏と仁王琥珀という人物です」「宗像涼真だと……?」 あの冷静で沈着、物事を客観的に捉えることができる直哉でさえ、その名前を聞いて言葉を失う。「宗像涼真は、あの女を告発した張本人じゃないか?」(なぜだ? どうしてあの男が) 凜華を獄中へ追いやった男がなぜ凜華に再び関わり、援助しているのか直哉の頭脳でも理解できなかった。「あの男がいなければ、凜華の罪は立証されなかったはず」 直哉は一度イスへ座り直し、息を吐きながら、思考を重ねる。 使用人は直哉の様子を伺っており、ビクビクと肩を震わせ、直哉の次の発言に身構えている。「宗像はうちのライバル企業だ。そんな奴がどうしてあの女を……」 まだ凜華は直哉の妻だ。敵対している企業のトップである直哉の妻を援助するなど、通常では考えられない。 それに――。「まさか、あの女。うちの病院の情報を流すかわりに、宗像へ経済的援助を求めているのか?」 直哉にとって最悪な可能性。 桜庭病院の情報を宗像へ流し、桜庭病院もろとも陥れようとしている。 口座凍結できるのは、直哉しかいない。 それは凜華もわかっていることだ。 その腹いせに、宗像と手を組もうとしているのではないかと一瞬考えた。(いや、情報を流すなんて今の凜華にはできない。一年間獄中にいたんだ。セキュリティシステムは変わっている。情報を入手できるような場所への立ち入りさえ、困難だ)(機密情報を流すことをして、また刑務所へ入りたいのか? 宗像も同罪になるぞ) 直哉の思考時間は、数分ほどだ。 しかし近くに立っている使用人にしてみれば、その時間は何時間にも感じられるほど、張り詰めた空気。そしてあの桜庭直哉が頭を抱えている光景が、異様だった。「ご主人様……」 直哉の姿を見かねて、使用人が声をかける。「なんだ?」 鋭い眼光で使用人を直哉は睨みつけた。使用人が何か罪を犯したわけではないことは、理解しているはずなのに、予想外のできごとを当たる相手がいない。「宗像涼真は、奥様と幼馴染だったと聞いております。捕まる前は、親友のように、兄のように奥様も宗像氏のことを慕っていたようです」「はっ、そんなことは最初の調査でわかっている。あの女、そんな男に告発されたのだから、哀れなことだ」「はい。当初の情報では、宗
Last Updated : 2026-07-30 Read more