「琥珀くんに会いに来たの」 退院した時より、かなり顔色が悪い凜華は、目の前に現れた男に力なく告げた。「仁王は、今出張で他県に行っている」(そっか。だから最近顔を見ないのね) 公衆電話から琥珀にかけた電話は繋がらず、琥珀なら何かを察して来てくれると心の隅で期待してしまっていた凜華は、彼が訪ねてこない理由を知った。「宗像涼真、あなたに頼みごとをする日が来るなんて思わなかった」(本当は、信頼している琥珀くんに頼みたい。でも四の五の言っている場合じゃないわ) 凜華が訪れた病院は、琥珀が勤める病院でもあり、宗像涼真が経営をしている。 事務員に仁王琥珀と面会をしたいと頼んだ凜華だったが、凜華の様子から不審に思った事務員が涼真に対応を仰いだ結果、様子を見に来た涼真と対面することになった。「歩けるか? 医院長室へ行くぞ」 涼真はフラフラと立ち上がる凜華を支え、凜華の背中にいる日葵も気にしながら、プライベート空間である医院長室へと連れて行く。「私、具合が悪くて。日葵を見てもらうことはできないかしら。私はどうなっても構わないから。お願い、日葵だけ……」 医院長室のソファへ倒れ込むようにして座った凜華は、悔し涙を浮かべる。(俺に頼ることを避けていた凜華が、一番大切な子どもを俺に託すなんて……。何が起きた?)「わかった。子どもは責任を持つから。安心しろ」 凜華はコクっと頷くと、目を閉じ、意識を失った。「おい、凜華!」 涼真は凜華を触診し、すぐに救急外来へ運ぶよう部下へ指示を出す。(くそっ。最近、俺指名のVIP患者が多くて、凜華のところへ訪問できずにいた。もう少し早く様子を見に行けていれば……) 涼真自身も残業が続いていた。立て続けに政治家や芸能関係者が涼真の元を訪れ、病院の経営のために悪評がたたらないよう治療だけではなく、丁重にもてなすことに緊張した状態だった。 バタバタと医師と看護師が集まり、凜華を担架に乗せる。 その様子を見ていた日葵は、泣き始めた。「うわぁぁん」 母の状態なんて、日葵ほどの乳幼児にはわからないだろう。 しかし何かを察したのか、母へ手を伸ばす仕草を見せたのだ。「大丈夫だ。ママは、元気になるから」 涼真はらしくないと思いながらも、日葵を抱き上げ、落ち着かせるために優しく揺すった。(この子は、俺が責任を持って面倒を見る
Terakhir Diperbarui : 2026-09-04 Baca selengkapnya