Semua Bab 私を刑務所へ送り込んだ夫が、今さら執着するなんて: Bab 61 - Bab 70

70 Bab

第六十一話 日葵を守るためにーー。凜華が訪れた病院は……

「琥珀くんに会いに来たの」 退院した時より、かなり顔色が悪い凜華は、目の前に現れた男に力なく告げた。「仁王は、今出張で他県に行っている」(そっか。だから最近顔を見ないのね) 公衆電話から琥珀にかけた電話は繋がらず、琥珀なら何かを察して来てくれると心の隅で期待してしまっていた凜華は、彼が訪ねてこない理由を知った。「宗像涼真、あなたに頼みごとをする日が来るなんて思わなかった」(本当は、信頼している琥珀くんに頼みたい。でも四の五の言っている場合じゃないわ) 凜華が訪れた病院は、琥珀が勤める病院でもあり、宗像涼真が経営をしている。 事務員に仁王琥珀と面会をしたいと頼んだ凜華だったが、凜華の様子から不審に思った事務員が涼真に対応を仰いだ結果、様子を見に来た涼真と対面することになった。「歩けるか? 医院長室へ行くぞ」 涼真はフラフラと立ち上がる凜華を支え、凜華の背中にいる日葵も気にしながら、プライベート空間である医院長室へと連れて行く。「私、具合が悪くて。日葵を見てもらうことはできないかしら。私はどうなっても構わないから。お願い、日葵だけ……」 医院長室のソファへ倒れ込むようにして座った凜華は、悔し涙を浮かべる。(俺に頼ることを避けていた凜華が、一番大切な子どもを俺に託すなんて……。何が起きた?)「わかった。子どもは責任を持つから。安心しろ」 凜華はコクっと頷くと、目を閉じ、意識を失った。「おい、凜華!」 涼真は凜華を触診し、すぐに救急外来へ運ぶよう部下へ指示を出す。(くそっ。最近、俺指名のVIP患者が多くて、凜華のところへ訪問できずにいた。もう少し早く様子を見に行けていれば……) 涼真自身も残業が続いていた。立て続けに政治家や芸能関係者が涼真の元を訪れ、病院の経営のために悪評がたたらないよう治療だけではなく、丁重にもてなすことに緊張した状態だった。 バタバタと医師と看護師が集まり、凜華を担架に乗せる。 その様子を見ていた日葵は、泣き始めた。「うわぁぁん」 母の状態なんて、日葵ほどの乳幼児にはわからないだろう。 しかし何かを察したのか、母へ手を伸ばす仕草を見せたのだ。「大丈夫だ。ママは、元気になるから」 涼真はらしくないと思いながらも、日葵を抱き上げ、落ち着かせるために優しく揺すった。(この子は、俺が責任を持って面倒を見る
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-04
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第六十二話 指示をしている犯人は――。もしかしたら……

「あいつも多忙な奴だからな。あいつが下請けに指示をしたなんてことはないのか?」「簡単な調査ですが、桜庭が指示しているような感じではありません。凜華さんへ嫌がらせをしていた犯人をこちらでも調べてみます」 使用人との電話を終わらせ、嫌がらせをした黒幕、実行犯、桜庭直哉の存在、涼真はソファに座り、一瞬考え込んだが、考える間もなく、すぐに医事課からの連絡が涼真の元へ届いた。「なんだ? 今、取り込み中で急用じゃなければあとにしてほしい」<申し訳ございません。ただ、また宗像先生指名の患者様がいらっしゃってまして。この間、当選された政治家の先生なんですが>(また俺指名か? さすがに多すぎる)「わかった。対応するから、来客室へ通してくれ」 涼真は息を吐き、足取り重くVIP患者が待っている来客室へと向かう。 ノックをして入室すると、中高年の男性が一人、秘書らしき人物が一人、ソファへ座っていた。「はじめまして。宗像です」「ああ。キミが宗像先生か。予想より随分と若いな。本当に腕の良い医者なんだろうな?」(自分は客だと思っているんだろう。偉そうな態度だな)「それで、紹介状か何かをお持ちですか? 病状など、詳しくお聞かせください」 会話を広げることが面倒だと感じた涼真は、医師らしい態度をすることだけに勤めた。「ああ。最近、膝の調子が悪いんだ。立ち上がる時に、痛みがあって」 患者である政治家は、自分の左膝を擦る。(俺は整形外科医ではない。どうしてこんな奴らばかりの対応をしなきゃいけないんだ)「基本的なことは僕でも診ますが。当院にも専門医がおりますので、まずは整形を受診していただいた方が良いかと」「そうか。なんだ。キミは整形には詳しくないんだな。せっかく良い医者がいるからと紹介されてきたのに」 嫌味に聞こえた涼真は、腹を立てそうになったが、感情を抑える。「どなたからの紹介ですか?」(紹介状を持っていないようだし、まだ未受診だ。誰からの紹介だと言うんだ)「あの、灰原家の令嬢だよ。あの子、たしか桜庭家との関わりの方が強いはずなのに。わざわざキミの名前をあげたんだ」「最近、キミ指名の患者が多くなかったか? あれも灰原家の令嬢のおかげだよ。あの子がいたるところでキミの良い評判を広めているんだ」「灰原家の令嬢ですか……」(唯衣か。凜華の義妹。なぜ俺のこと
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-06
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第六十三話 犯人の目星はついてる……。涼真からの話

「凜華さん」 凜華が目を覚ますと、病室だった。点滴とモニターに繋がれている。「琥珀くん?」 自分の名前を呼んだ人物は、琥珀だった。「すみません。俺が守るって言ったのに。凜華さんが大変な時に近くにいることができなくて」 琥珀は目線を下げ、肩を落としている。「出張から帰ってきて、すぐに凜華さんの家へ行ったんですが。居なくて。宗像先生なら事情を知っているかと思い、聞いたらうちの病院に入院していると聞きました」(琥珀くん。病院よりも先に私の家へ行ってくれたんだ)「公衆電話からの電話履歴は確認していて。もしかしたら凜華さんが何かヘルプを出しているかもしれないと思い、予定よりも早く帰ってきたんですが。こんなに大変なことになっているなんて」「悔しいです。近くにいることができなかった自分が」 琥珀は両手をギリギリと握りしめている。「ううん。琥珀くんのせいじゃない。私がいけないの。私がこんなにも弱いから」(自分一人で生きていくと決めたのに。結局守られてばかりの自分が悔しい)「何があったんですか? 宗像先生に聞いたら、何か知っていそうな雰囲気でしたけれど、何も教えてはくれませんでした」「涼真が知っていそうだった?」(私は何があったのかは、涼真に詳しくは話していない。なぜ涼真が知ってるの? まさか犯人は……) 凜華が深く考えそうになった時、ガラッと病室のドアが開く。「仁王。誤解するようなことを言うな。凜華が俺が犯人だと思ったらどうするんだ?」「日葵!!」 不機嫌そうに入ってきた涼真だったが、大切に愛おしそうに抱えている存在がいる。 凜華の子ども、日葵の姿だった。 日葵も涼真を嫌がることはなく、落ち着き抱かれている。 涼真は凜華のベッドへ近づき、そっと彼女のとなりへ日葵を降ろした。「日葵。ごめんね……。ごめんね」 凜華は点滴に繋がれていない方の腕を日葵へ伸ばし、頭を撫でる。「うーー」 母親に撫でられた日葵は上機嫌のようだ。「そろそろ目覚めると思って、日葵を連れてきた。凜華は感染症の類ではないから心配するな」「ありがとう。日葵が元気そうで、本当に良かった」 今ではただ一つの宝ものである日葵。 凜華にとって、日葵以上の存在はない。「言っとくが、俺はお前に嫌がらせなんてしていない。俺が独自に調べたんだ。疑うなよ」「嫌がらせって、ど
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第六十四話 唯衣と直哉の関係――。俺はもう……

「唯衣が犯人って……」(どうして? 唯衣は何を考えているの? きっと、直哉と籍が入っている私の存在自体が彼女にとって邪魔なんだわ) 凜華は、唯衣が直哉のことを慕っているのは、知っていた。直哉も唯衣のことを大切にしている姿を何度も目撃している。(もう私のことなんかほっといてよ……。私は日葵と二人で暮らしたいだけ。それだけを望んでいるのに) 凜華は唯衣の本来の姿を理解し、すでに分かり合うことはできないと諦めている。「もちろん、実行犯はあいつではない。金で雇われている奴らが何人かいるようだ」「それはそうでしょうね。直接自分の手を汚すことはしないでしょう。証拠はあるんですか?」「はっきりした証拠はまだ掴めていない。だが、おそらく影で動いているのは唯衣だ。俺が凜華と接近しないように、俺指名のVIP客の入院患者を斡旋させていることが確認できた」「使用人からの報告で実行犯に問い詰めたところ、灰原家という言葉を濁している」(灰原家、父と母がこんなことをするわけがない。あの二人は私のことは死んだと思っているくらいだし、興味もないだろう)(こんな陰湿な虐めを楽しむ、最近の唯衣ならやりそうなことね。私が自我を保てないほど追い詰めようとしたんだろう) 凜華は涼真の発言を聞き、思い、感じる部分があった。 今の義妹ならば、考えそうなこと。「唯衣に、私の住んでいるところが知られているってことよね?」「ああ。そうだ」(直哉が唯衣に話したの? あの二人は繋がっていると思うから、きっとそうよね) 凜華は直哉が関わっていることを疑っている。(住処を唯衣に話したのは直哉で、唯衣がこんなバカなことを提案して、きっと二人で私のことを嘲笑っているんだわ)(どこまで人のことを追い詰めたら気が済むの? 離婚なんていつでもしてあげるのに) 凜華はぎりっと奥歯を噛みしめた。「俺の部下が実行犯の一人を捕えたことは、向こうにも伝わっているだろう。だから、しばらくは何もできないはずだ。向こうも今頃、こちらの様子を伺っていると思う」「さすがの灰原家でも、こっちには宗像先生や俺もいるんです。バレたとわかれば、簡単に手を出してきたりはしないでしょうね」 琥珀は冷静に三者の関係性を考察していた。だが、一つ気になっていることがある。「宗像先生は、灰原唯衣とも関係が深かったはず。凜華さんの事
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-10
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第六十五話 医師には戻れない/招かれることのない来客者

「凜華。こんな生活を続けていないで、医者に戻ったらどうだ?」 涼真は凜華の身体のことを考え、伝えた言葉。 だが、その言葉を聞き、凜華は渋い顔をする。「戻れない。私は逮捕されたの。医師免許が停止になっているのよ」(出所した時、そうなっていることは覚悟していたけれど。直哉に連絡がすべていっているから、はっきりしたことはわからなかった)「涼真から医師として働かないかと提案を受けた時、調べたの。そしたら、三年の免許停止処分になっていたわ」(この間、涼真からビジネスの話をされた。もう一度医師として働ける場があるならと希望を持ったけれど、現実は甘くはなかった。はく奪になっていないだけマシって考えたけれど) 涼真は言葉を失っている。凜華を冤罪へ追いやったのは自分。それを理解しているからだ。「しばらく医師には戻れない……」 ぽつり彼女の発した言葉はとても重かった。医師として働くことができたらどんなに良かったことだろう。今の彼女には許されない。」「凜華、俺が……」「だからと言って、今のところで命を削りながら働くことはありません。俺がどうにかします」 涼真が何かを言いかけたところで、琥珀が涼真の発言を遮るかのように言い切る。「今の住居や職場環境は劣悪です。日葵ちゃんのためにも良くありません」「わかっているわ。だけど、前科がついている私を雇ってくれるところなんか。住むところも一人じゃ契約できないのに」「俺がなんとかします。だから信じてください」 凜華の知っている、あの穏やかで優しい琥珀ではなかった。頼りになる、そんな存在へと変わっている。凜華が指示を出していた後輩の姿は、もうそこにはなかった。「ありがとう」 ただ、彼女は感謝を伝えることしかできない。 涼真は悔しそうにその光景を見ているしかなかった。自分が凜華へ行ったことの後悔の念、自分が直哉から凜華を奪い、幸せにすることを決めていたのに。 目の前にいる部下の方が圧倒的に凜華に信頼されている。(こんなはずではなかった。あの男から凜華を引き離せば、すべてはうまくいくと思っていたのに) 涼真はなんとも言えない感情を抱く。嫉妬、後悔、怒り。涼真が凜華へ行った行為は許されることではない。 自分が提案した「医師へ戻れ。俺の病院で働けば良い」そんなことが叶うわけがなかった。 その時<トントントン>
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-12
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第六十六話 どうしてここに!?直哉の訪問の理由

「えっ……」「はっ……?」「まさか……」 事務職員の言葉に三人が同時に息を飲んだ。「どうしてあいつが凜華の入院先を知っているんだ。独自で調べたな」 涼真はチッと舌打ちをする。「直哉がここに来ているの……?」 凜華は驚きを隠せない。直哉が面会を求めてきた理由がわからなかった。(ついに、離婚してくれる気になったのかしら。それならいいんだけど)「凜華さん、どうしますか? もし面会するのであれば、俺も付き添います」「いや、俺たちの間違いだろう。誰の病院に入院させたと思っているんだ。もちろん、俺も同席する」 男たちは譲れない。あの桜庭直哉が相手でも彼らは怯まなかった。「直哉と会うわ。目的を聞きたいから」 あの非情な声、冷たい目つき、信じてほしいと懇願した時、強引に突き放された瞬間のことを凜華はもう一度思い出す。(直哉のことを怖くなくなったと言えば、嘘になる。だけど私のとなりには大切な日葵がいる)(それに、今は信頼できる琥珀くんも近くにいるし、涼真のことは信用してはいないけど、ライバルである涼真がいることで、直哉だって変なことはできないはず)「桜庭直哉をVIP対応時の面会室へ呼べ。俺たちも向かう」「承知いたしました」 涼真が指示を出すと、事務職員は、ささっと医事課へ足早に向かった。「凜華さん、無理しないように。歩けそうですか? 車イスとか用意しますか?」 琥珀がベッドから立ち上がろうとする凜華を気にして、手を差し出す。「大丈夫そう。ありがとう。琥珀くん、日葵だけ抱っこお願いしても良い?」「はい。大丈夫です」 凜華は自分の足でしっかりと立ち上がった。 背筋は伸び、まるで何かと戦いに行くような緊張感が彼女の周りに広がっている。 涼真はそんな彼女の姿を一瞬見つめ、すぐに目線を落とした。(医師免許が停止されたのは俺のせいだ。仁王にはそんなにも心を開いているんだな。昔、俺に懐いてくれていたように) 涼真のことを兄のように慕っていた凜華の姿は今はもうない。(俺はどうしたら凜華に近づけるのだろう) 珍しく、涼真の心は弱気になっている。(桜庭直哉には、凜華は渡さないがな) 涼真や琥珀にとっても、桜庭直哉との面会は、一種の戦闘に行くようなものだった。 三人はそれぞれの気持ちを抱えながら、面会室へ歩き出す。 凜華のペースに合
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-15
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第六十七話 自分の妻に面会へ来ただけ――。私はまだあなたの妻なの?

「お世話になっております。宗像先生、お久しぶりです。妻が起こしてしまった事件の際は、いろいろとお世話になりました」 直哉は立ち上がり、まず涼真へ声をかけた。(今、直哉ははっきりと妻と言ったわ。まだ私のことを妻だと本当に思っているの?) 凜華は自分のことを妻だと言われたことに戸惑いを感じている。(私のことを恨んでいるはずなのに) そんな凜華をよそに、直哉と涼真はしっかりと向き合って視線を合わせていた。(この男、感情が入っていない話し方をするな。妻という部分を強調した気がするが。聞き間違いか?) 涼真も直哉の様子を探っている。 直哉が話した内容は至って普通の挨拶だが、声はとても低く、愛想のカケラもない。「お久しぶりです。どうぞ、おかけください」 涼真は返答し、直哉にソファへ座るように促した。 凜華は二人のやり取りを近くで見ながら、緊張からか、身体が硬くなっていった。 空気がとても重く感じる。(二人とも普通に話しているように見えるけれど、敵意がむき出しだわ) ライバルである二人、お互いに隙を見せない。(直哉は私のことを視界に一度入れたけれど、見ようともしない。何がしたいの? 私に面会へ来たんじゃなかったの?) 涼真と凜華は直哉と迎え合わせに座り、そのうしろのイスに琥珀は日葵を抱きかかえながら座った。 その場にいる全員が座り、何秒経っただろう。 凜華にはとても長い時間のように感じた。(私から話をしなきゃ。みんなを巻き込んでいるのは、私なんだから) 凜華はすっと息を吸い「何の用事? 私に面会なんて。どうしてここに入院しているってわかったの?」 直哉へ声をかけた。「何の用事とは……?お前は、どれほど俺に恥をかかせるつもりなんだ」 直哉の言い放った言葉と目つきは、凜華のことを蔑んでいるように見える。「自分の妻が入院しているのに、面会に来ない夫なんているわけがないだろう?」「はっ……?」 彼女は直哉の真意が理解できずにいる。(自分の妻……? 夫……? 何を言っているの? あなたは私を捨てたんじゃなかったの?) 混乱しているのは凜華だけではない。(この男、何を言っているんだ。凜華を信じもせず、擁護もしなかった。それに出所後も凜華と向き合おうともしなかったじゃないか。唯衣と結婚を考えているんじゃないのか?)(凜華さんを大切
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-17
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第六十八話 夫の役目でしょう? 直哉からは……

「まだ自分のことを夫だと思っているの? よくそんなことが言えるわね」 凜華の手は怒りと動揺から震えている。「離婚はしていないだろう。お前こそ、何を言っているんだ」 直哉は首を傾げた。「お前は、俺の妻だろう。俺の指示に従わないから、こうやって体調を崩したんじゃないのか?」(あなたは私をモノだと思っている。それは変わっていないのね)「あなたはそうやっていつも自分の力ばかりを押し付けてきた。それでも、収監される前は尊敬できるところがあったから、一緒にいたのに。私のことを妻だと思っているのなら、どうして信じてくれなかったの?」「あなたは私を一切庇おうともせず、罪を立証するような発言ばかりだった。覚えているわ」 凜華の言葉は止まらない。「夫だったら、妻を信じてくれるのが普通でしょう? なのにあなたはっ!」「落ち着け」 大きな声を出した凜華を涼真は静止する。「体調がまだ万全じゃないんだ。急に身体へ負荷をかけるな」 そんな声をかける涼真も、自分が凜華を冤罪へと追い込んだ人物であり、どのようなかたちで二人の間に入ればいいのか、距離が図れていない。 涼真の様子を見て、直哉はフッと笑う。(涼真を見て、あの直哉が笑った?)「宗像先生。あなたそうやって彼女のことを擁護できる立場なんですか? あなたの発言があって、彼女は捕まったんですよ」「それは……」(くそ。ここで凜華の冤罪をこいつに話してしまうと厄介なことになるな。どうするか)「桜庭さん。それで今日はどうして面会に? 凜華さんに何の用事ですか? 凜華さんは、あなたと離婚をしたがっている。離婚届を提示されていますよね?」 口を割って入ったのは、後ろに座っていた琥珀だった。 琥珀は凜華から直哉へ向けての離婚届を預かり、直哉へ渡している。 凜華から唯一、事情を相談された人物だ。「……。仁王さんですね? その節はお騒がせしました」 口を出した琥珀にぎろっと鋭い眼光を直哉は向けた。(桜庭直哉。俺のことも調査済みってことか。あの時、初めて会った時は、明らかに俺のことを軽視していた。だが、今は仁王財閥であることを理解しているような態度だな)「俺は自分の妻を迎えに来ただけです。今の彼女では、入院費用なんて支払えませんよね。保護する役割にあるのは、夫の務めでしょう?」「直哉……。あなた、本当に正気? 
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-19
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第六十九話 あなたは出所後、凜華さんと会っている――。告げられた真実

 直哉の言葉を聞き、皆、絶句している。「離婚したい夫に頼れるわけないじゃない。唯衣と……。妹と結婚したいんじゃないの?」(どういう風の吹き回し?この人は狂っている) 凜華は夫である直哉に隙を見せたくはない。 あくまで自分はもう直哉とやり直すつもりはないのだ。穏便に離婚できるとは考えてはいないが、これ以上、関わりたくない。 自分を離してくれるのであれば、妹である唯衣とくっついてほしいと心から思っている。「誰がそんなことを言った? 俺が一言でも唯衣と結婚したいとお前に伝えたことがあるか?」 ふぅと鼻で息をし、呆れてものが言えない、そんな態度を直哉は見せた。「それは……」 言い返そうとした凜華だったが、直哉からは言われてはいなかった。 しかし唯衣にしか見せない顔、腕を組んでいた姿、出所後、ショッピングモールで遭遇した時の二人の様子、仲睦まじい姿を何度も近くで見ている。「私はこの目で見ている。あなたと唯衣が楽しそうに歩く姿を……」(負けない。負けたくはない。私と日葵の生活をこれ以上邪魔してほしくない)「そんな話、誰が信じると思っているんだ?」 直哉は鼻で笑った。自分の方が優勢だと思っているんだろう。「俺は信じています」 話に割って入ったのは、琥珀だった。「いや、俺も見ている。凜華さんの妹である唯衣さんと仲が良いのは知っています。あの様子じゃ、交際しているんじゃないかと他人が勘違いしてもおかしくはないです」 涼真も琥珀に続く。「そもそも……」 ふぅと息を琥珀は吐いた。「あなたは凜華さんと出所後、会っているんです。自分の妻なのに気がつかないって、有り得ないと思うんですが」「凜華さんは、出所後、顔に傷があります。それにかなり痩せてしまいました。だからって、あんな距離で話をしているのに、気づかないってことは、それほどあなたは凜華さんのことを理解していないんですよ」(琥珀くんは、ショッピングモールで私が唯衣と直哉と会った時のことを言っているのね) 直哉の鋭い矢のような視線が、凜華ではなく琥珀に向けられる。「何を言っているのかわからないのですが。俺と凜華が出所後すぐに会っている? 冗談でしょう?」 出所後、直哉は凜華を刑務所まで迎えに行っていた。しかしそのあと彼女の行方をしばらく掴めなかった。遭遇しているなんて、考えられない。「あな
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-21
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第七十話 凜華は自分しかいないと思っていたのに――。

「それは凜華から聞いた話ですよね。かなり一方的だ。まさか自分の妻とすれ違っておいて、僕が気づかないはずがありま……」「気づかなかったんですよ。あなたは」 涼真が直哉の言葉を遮った。 自分の発言を途中で止められ、直哉のプライドが許さなかったのか「宗像さん。あなたがそのような礼儀のない方だとは思いませんでした」 涼真に目線を向け、誰が見ても怒っている、そんな表情を隠すことなく全面的に押し出している。「あなたたちは凜華の何でしょう? どうして凜華の肩を持つんですか?」 そして琥珀へとチラッと目線を移したかと思えば「俺にケンカを売るってことは、どうなるかわかっているんだろうな?」 先ほどまでとは違い、巣の直哉を出した。 言葉遣い、態度、話を聞く姿勢が、ありのままの桜庭直哉になり、一瞬その場がピリッと凍りついた。 だが――。「俺は凜華に昔から好意を寄せている。凜華を刑務所へ送ってしまったのは自分のせいだ。だからこれからは俺が贖罪の意味を含め、凜華への罪を償っていこうと思っている」 怯むことなく言い返したのは、宗像涼真だ。 涼真の発言に直哉は、口を少し開けてしまうほど驚嘆しているようだ。 冤罪に追い込んだとは伝えてはいない。 直哉が真相を理解したのかは不明だが――。「俺は研修医時代から凜華さんに憧れていました。凜華さんには返しきれないほどの恩があります。今は俺が支える番だと思っています。異性として凜華さんを想っていることは確かです」 涼真に続かんとばかりに、琥珀は強い胸の内を吐いた。「はっ……?」 二人からの告白は、直哉が予想していた以上の熱さだった。 ふざけているのではない、真剣である様子がひしひしと直哉へと伝わる。「二人とも……」 驚いているのは直哉だけではない。凜華もだった。 二人からの告白をどう捉えたら良いか、受け止められずにいる。(涼真は、直哉が相手でも同じことを言うのね。私を冤罪に送り込んだあなたは、一生許すことができないけれど。力を貸してくれたことは感謝しているわ)(琥珀くんにも感謝はしている。だけど、琥珀くんにはもっと相応しい相手がいるもの。前科がある私なんかと付き合わない方が良い) 凜華の胸中もまた複雑だ。「凜華は俺の妻だ。お前たちは何を言っているのかわかっているのか?」 やっと直哉は口を開くことができ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-09-23
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