ぼんやりとしか見えない視界を閉じないよう、凜華は目を開けていた。 涼真に何をされるのかわからない。 涼真を信じてはいけないという防衛本能が必死に働く。 しかし身体が脳からの指示を適切に受け取ることができないほど、身体は動かない。 涼真に運ばれるがまま、たどり着いたのは、病院だった。(ここは、涼真が働いている病院……?)(個室ではなく、かなり広い病室だわ) 首をわずかにしか動かせない凜華は、ベッドの上で横にされている。 白衣を着て現れた涼真は、医師そのものだった。「血液検査をするぞ」 涼真はか細い腕へと注射器を指す。(どうしよう。保険に入ってないから、すべて実費で支払わなくてはいけない) 口座を凍結された凜華は、保険料すら仕方がなく滞納していた。(そうだ。日葵は、どこにいるの?) 試験管三本ほど血液を採取した涼真は、となりにいた看護師に渡し、検査に出すよう指示をしている。「……。日葵は……。どこ?」 病室の中、涼真と二人きりになった凜華は不安そうに問いかける。「別室にいる。熱がある凜華と一緒にしておくのは、危険だろう?」 涼真の言うその通りだ。まだ抵抗力のない乳幼児を凜華と一緒の部屋で過ごさせるのは危険。 涼真の返事に凜華は小さく頷いた。「検査の結果は出ていないが。あんに不衛生な住環境と過酷な労働、それに栄養がない食事を摂っていれば、身体も限界を迎えるだろう」「一流の医師であったお前なら、こうなることくらい予想できたはずだ」 涼真はベッドサイドに置いてあるイスに座り、ため息をつきながら凜華へと語りかけた。 凜華は涼真の言葉を黙って聞いている。「私のすべてを奪っておいて……。よくそんなことを言えるわね」 力の入らない拳を握りしめ、瞳からは涙が流れていた。「あなたが私のことを売ったんでしょ。そのせいで私は罪人に仕立て上げられた」「刑務所に入っていなかったら、こんな生活にはなっていないわ」 もっともっと涼真に対する恨みつらみを大声で吐露したい。 今の凜華にはそのような元気もなく、声も絶え絶えで枯れている。「凜華……。俺のところへ来い。そうしたらこんな生活をしなくてすむ。娘も一緒に」 凜華が出所してから、はじめてゆっくりと二人だけで話す時間だった。(恨まれているのは知っている。何年かけようが、俺のものにしてみ
Last Updated : 2026-07-20 Read more