海亜の目の前にあるものは、先程取り出したばかりの荷物とメッセージカード。この二つを見る度に、胃のむかつきがぶり返し気分が一気に憂鬱になってしまう。「…………」 荷物の中身に関して、昴に相談するべきなのだろうか。手元に置かれた携帯端末は、いつでも連絡が取れるようにと、メッセージアプリを起動させた状態にしてある。「…………はぁ」 ただ、アプリのテキストスペースに文字を打ち込む気にはどうしてもなれず、特に何も出来ないまま、ただ、ただ、時間だけが過ぎている。そんな感じである。「どうしよう」 そもそも、昴に対して、何をどう聞いたら良いのかが分からない。メッセージを送れない一番の問題はその部分だろう。 幾度となく疑い、そうではないと否定してきた可能性。それがまさか、こんな形で現実を帯びるだなんて考えてもみなかった。「どうして、ここに来るように指定してあったのかしら」 少し前からほぼ毎日、昴は決まった匂いを身に纏って帰ってくる。プロジェクトが佳境のため、付き合いの場が多くなるのは理解しているのだが、毎日同じ匂いが衣服に残されているのは、やはり気になって仕方が無い。その香りの主が誰なのかなんて想像しなくとも直ぐに分かる。その相手は多分、四埜杜繭、その人なのだろう。 神経質になりすぎている? その答えは【イエス】だ。 何故なら、今の状態では真実を突き止めることは到底不可能なこと。四六時中昴のことを見ている訳にもいかないため、我慢することを続けているのが裏目に出てしまっているのかも知れない。ただ、そうすることで関係が崩れることは無いと信じてはいる。だからこそ、事実を確認するという勇気を持てなかったのが今までの話だった。「いつまでも、この人について何も言わないのは、後ろめたい事があるから?」 比較的、昴という男は素直な方だと思っていた。隠し事があまり得意ではなく、海亜に対しては常に誠実で嘘を吐くことが少ない。もし、嘘を吐いたとしても、それは彼女を喜ばせるための優しいものが殆どで、このような形で裏切られる事は想定していなかった。だから、彼の方から教えて欲しかった。曖昧に誤魔化すのではなく、ハッキリと否定して欲しかったと今でもそう思っている。「この香水、間違って届いた物って、そう考えても良いのかしら?」 返事の来ない自問自答は、常に都合の良い答えを自信へと
最終更新日 : 2026-09-02 続きを読む