少しずつ開く距離は、互いに思いを伝えないまま。 擦れ違い、歩み寄れないまま時間だけが経過していく。 以前までは、頻繁に行っていたメッセージのやりとりも、今は仕事が忙しくて帰宅が遅れるという文言が殆どで。 交わせない言葉が増えるほど、不安の種は増えるばかりだ。 意識しないようにしていても嫌でも目に止まる彼女は、自分とは本当に正反対のタイプなんだと思ってしまう。「…………はぁ」 数週間前まで、マユというモデルは雑誌やポスターでしか見る機会が無かった。それなのに、ここ数日で益々彼女の露出は増えるばかり。元々アクティブな性格らしく、メディアへの働きかけは事務所だけではなく彼女自身でも動いているようで。いつの間にかそこに居るのが当たり前と感じられる程、彼女の存在はそこかしこで主張するようになってしまっていた。「これって……」 そしてまた新しい雑誌が一冊。その紙面にもモデルの彼女が格好良くポーズを決めて写っている。「本当なのかしら」 一条の持つ会社の事業展開は、実に多彩なものだ。海亜自身、詳しくは聞いたことが無いが、気になるブランドの出資者が一条だという話は決して珍しくは無い。そうでなくとも、昴自身、会社をいくつか掛け持ちで経営をしている。 大体は亨から引き継いだ本社に籍を置くことが殆どだが、学生の頃に立ち上げたブランドや、新しいく展開した事業で基盤の固まっていないモデルなどは、信頼の置ける経営者に引き継ぐまでは自らが立ち会うことが多い。 今、海亜の手元にある雑誌。そこに書かれている新規事業もその一つ。そして最悪なことに、この事業とのタイアップとして起用が決定したのが、海亜が気になって仕方の無いマユというモデルだった。 雑誌のインタビューを見ると、どうやらこの話は、先日見た化粧品メーカーのイメージモデルを務めることが決定したときに出たものらしく、是非彼女へと会社側からオファーをかけたとなっている。 確かに、彼女のスタイルや雰囲気を考えると、新しく展開すると書かれているブランドのイメージはにぴったりなのだろう。この記事にある通り、ビジネスとしての彼女との付き合いが出来るのは確定事項と捉えても良さそうで。本来ならば新しい可能性が広がったことに応援をしてあげるべきだということは理解している。それでも、ずっと拭えない不安がつきまとったまま、焦りだけを強く
Last Updated : 2026-08-12 Read more