その言葉を聞いた瞬間、背筋が凍り付く。もし本当に鍵を持っているのだとしたら、幾ら鍵を掛けようと簡単に侵入されてしまうのは考えなくとも分かる。防犯が意味を成さない状況において、どれだけ自身の力で身を守ることが出来るのだろうか。 少なくとも、彼女にこちらの言葉が届くとは全く思えない。そんな風に思うほど、常識の通じない事が目の前で起こったばかりなのだ。「……はぁ……はぁ……」 無意識に強く握りしめるドアノブ。施錠したはずの鍵が外される音が怖くて仕方が無い。「開けなさいよっっ!! このクソ女っ!!」 解錠すれば簡単に中に入れると思っていたのだろうか。開きそうで開かないドアに苛立った彼女が、力任せに何度もドアを開こうとしてくる。「うぅっ……」 しかし、ここで押し巻けてしまったら、あの恐怖を再び味わわなくてはならなくなってしまう。「邪魔すんなって言ってんのっっ!! 巫山戯んなよ!? 泥棒女がっっ!!」 必死にドアを引っ張り続けること十数分。『バンッッ!!』 大きな音を立てて扉越しに伝わる衝撃。「覚えてなさい! 絶対に許さないんだから!!」 まるで悪役のような捨て台詞が聞こえてきたかと思うと、苛立たしげな音を響かせて遠ざかる気配。完全に音が聞こえなくなってからも、暫くは怖くてドアノブから手が離せず震えてしまう。「なん……なのよ……」 ほんの短い間にこれだけの予想外な事が起こるなんて思いもしなかった。 一本、一本。丁寧にドアノブから指を引き剥がすと、力なくその場にへたり込み恐怖で震える肩を強く抱き締める。「鍵……」 勝手に開けられた事は勿論問題なのだが、何故彼女がこの家の鍵を持っていたのかと言う事も見過ごせない問題の一つだ。 上手く力の入らない足を無理矢理立たせると、海亜はしっかりと扉を施錠してからダイニングへと戻る。「昴さん」 ダイニングでは、昴が青い顔をして呆然と立ち尽くしていた。「聞きたいことがあります」 そう言われて昴は正気に戻ったように海亜の方へと視線を向ける。「…………海亜?」「あの人に鍵を渡したのは、本当に昴さん。あなたなんですか?」 これまでいくつかの裏切りにあってきたが、一番納得がいかないのがこの一件である。どんな目的があって鍵を渡したのかは不明だし、海亜自身は彼女を招いて良いと言ったことは一度も無い。同居人に
Last Updated : 2026-09-13 Read more